『きのこのような家』
民家はきのこである。
民家は建築であるよりは自然現象と考えるべきだ。
条件がそろえればどこの地面にもみごとなきのこが群生するように、
豊かな風土にはみごとな民家の集落がある。
篠原一男「民家論」より(『住宅建築』1964 年刊)
篠原の言葉から半世紀、既にかつての「民家」は絶え、
人と自然の営み、互いの働きかけにより醸成された「豊かな風土」も薄れつつある。
しかしながら、風土が消えることはない。
新旧さまざまな風土は、気づかないまま、そこここに在る。
注視すれば、「豊かな風土」となる兆しを見いだすこともできよう。
そこに根付き、発生する「きのこのような家」を具体的に提案してほしい。
文:向口武志(審査委員長)
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