学生の部 金賞
『動かすソト.感じるウチ』

  共同態としてミニマムである2人の社会を家とした提案である。
−台所や浴室、トイレ、寝室等の生活空間を断片化する。次にキッチンやテーブル、浴槽、便器、ベッドまでもツール化して引出に仕舞う。生活する時はその目的のツールを取り出して使用する。しかし、そのツールは誰かと共有している為、こちらの都合だけで使う事はできない。また、引出は容積を持つ為、相手や自分の領域を大小に変える事ができる。それによりツールを使用する事は、相手の動きを気にする事になり、気持ちよい空間を獲得するにはお互いに気遣いをする必要性が生まれる。さらに気遣いが思いやりとなり、空間を共有する事ができれば同居となる。−日本でも最近よく話題に挙がるハウスシェア。生活ツールを共有するところはよく似ているが、生活空間をどう使うかはプロセスが全く違う。ハウスシェアが社会構造の変化中で住居費の節約や生活の安全を求めた上での形であるならば、従来の親族との同居は何を求めていたのだろうか?そしてこの家に暮らす必要性は何なのか?また、この家は空間の量までも共有することになるが、これは何を意味するのだろうか?家族生活矯正空間装置とでも言おうか?この作品は、アイロニー的でもあり、今風の世相を反映している作品でもあった。



審査委員長  奥野美樹