学生の部 特別賞

『a long way off −開放的な閉塞感−』

 今回“奥”というテーマでほとんどの作品がある数種のパターンに分類されていった。考え方が凡庸でバリエーションが少なかったわけだ。その数種のパターンに分類されるということは簡単に言ってみれば誰もが考えつくことを多くの人がやっていたということだ。そのなかでこの作品は人と違っていた。そしてこれが大事なことだが、ただ人と違っていただけでなく“奥”というテーマの本質と人の心理をしっかりと表現してしようとしていた。ほとんどの人が架空の敷地内で、あるいは建物の内側だけで奥を表現していたと思うが、この作品は“海”というランドスケープと“行きたいけど行けない”そんな人の心理を併せて奥を表現していたことが私の心に残った理由である。もっと上の賞にいけなかったのは“この建物のプランでよかったのか?”“この塀の長さはこんなに短くて中途半端でよかったのだろうか?”など、惜しくて悔やまれるところが多々あったからだ。しかし、しっかりした表現のテクニックも誠実さも備わっているから今後、もっと素晴らしい作品を生み出すことができると思う。


ゲスト審査員 堀部 安嗣