一般の部 銀賞

『隣のピアノと.私のイーゼル』

 アトリエ・ワンはアニ・ハウスの設計において敷地のなかにおける建築の「建ち方」に着目し、住宅地におけるステロタイプ化した住宅のあり方に一石を投じたが、この作品は敷地境界自体を相対化するため、敷地境界上に小空間へと解体された住宅を散りばめることによって、一敷地一建築物という原則を問いなおすものである。敷地の真ん中が共有の庭=広場として使われる風景はなかなか面白いが、この案が成立するためには、土地の共有や自他の生活をリミックスすることを許容するコミュニティーの存在が前提となるであろう。近年多くなっているシェアハウスやコレクティブハウジングの一形態と捉えればある程度のリアリティもあるだろうが、その際に手がかりとなるのがモノであるというのは、モノに縛られ、モノに圧迫された現代日本の住まい方を引きずっているようでもあり、ちょっとせつない。


清水 裕二


『窪みの輪』

 今回、平面的な膨らみや窪みといった境界の操作により「うち」と「そと」の関係に何らかの提案を行う作品は数多くあったが。この作品はその種の中でも提案イメージのシンプルさと美しさにおいて群を抜いていた。
 直線(四角形)と曲線を単純に重ねるだけでなく、2つの四角形を入れ子構造にすることで、家族の「うち」と個人の「うち」という考えを提示できたことが、空間の説明にも奥行きを与えることとなった。
 またこのような平面的形態操作のデザインでは往々にして屋根の架け方など立体にしたときにつまらなくなったり、形に無理が生じることがあるが、この作者は素直に片流れの丸い屋根を載せることでサラリとデザイン的に処理していて上手い。
 プレゼンテーションのセンスも優れ、技術&知性ともになかなかの腕前とお見受けした。


鈴木 達也