学生の部 銀賞

『1300と1600の垣根』

 都市空間と敷地内部とをへだてる日本的な垣根や塀には、空間を分節、分断する機能だけでなく、へだてながらも一方では向こう側の気配をも感じさせる、風土的な透明性や連続性がある。作者は、そのような垣根の分節、分断、東名い、連続の機能を使って住宅を再構成しようとした。その結果、外部では高さ1600の垣根だったものが、内部では床高の関係で高さ1300の間仕切りとなり、その上部は欄間として連続させ、その開き方や囲み方を変化させることによって部屋ごとの機能の差異を表現して、構成手法とした。内部と外部とのかんけいが分かりやすく、気持ちの良い空間構成が評価されるが、垣根が変化して内部に入り込むということが、一般的な間仕切りとどう違うのか、その辺りをさらに風土に絡めて言及できるとさらに良かった。


鳥居 久保


『くつのいえ』

 靴を脱ぐ。壁と窓をずらす。そんな単純な行為で、端正な空間が表現されています。単純な操作だからこそ、さまざまな可能性を感じさせてくれる案です。それぞれの空間のつくり方も作者のセンスを感じさせるもので好感が持てます。この住まいには、生活にいろいろなシーンやリズムが生まれてきそうですね。ただ、内向きな家族間の関係だけでこの住まいが提案されていることが少し残念です。昔の住まいを感じさせる住まい方が、今の人たちに何をもたらしてくれるのでしょう?この考え方を推し進めて、住まいの外にいる人たちとの関係を探ってほしかったと思います。「男はつらいよ」に登場する虎屋の土間空間にあるような、人間関係の再構築に建築がドウヤッテかかわることができるか?そんなことを期待させてくれました。今度はぜひ発展させた形を見せてほしいと思います。


吉川 代助