一般の部 特別賞

『たてにわの家』

 縦方向にウェハースのように部屋(うち)、庭(そと)が交互に積まれている。部屋と部屋の間にそっと差し挟まれた庭の層は階高が低く、基本的には人が入ってくつろぐテラス的な庭ではない。中から見る為の庭だ。縦方向に部屋を移動するごとに、部屋で繰り広げられる日常的シーンの間に、庭の緑のシーンが挿入される。庭は中から見る為にのみにしつらえられている。(屋上庭園は別として)つまりここでの庭は内から外へのベクトルの上に成り立っている。コンセプト文では「部屋=うち」、「庭=そと」として説明をしているが、この「うち」「そと」の関係は固有の場所を示すのではなく「自分がここにいる=うち」、「とりまく外側の世界に向かう意識=そと」、というある状態を示すのではないかという事を再認識させてくれた。


ゲスト審査委員  永山 祐子