2011年 第27回設計競技
 『「屋根」と「床」』

「屋根と床」を題材にして現代におけるヴァナキュラーについて考えてほしい。

シリーズテーマである「風土」という言葉から、すぐさまバーナード・ルドルフスキーの「建築家なしの建築」が連想されるのは私だけではないだろう。全地球的な環境問題に対する意識の高まりを反映して、「風土」に根差した建築/ヴァナキュラーな建築が見直されるのは当然の流れのように思われる。

しかし、同時に「風土」の解釈は単に気候や地理などの自然環境に限定されるものなのであろうかという疑問も頭をもたげてくる。ノスタルジックに伝統的な建築や住居の復権を願っても意味はないのは明らかだ。私たちの生活が、100年前、50年前とは大きく変容してしまった中で、「風土」の意味も大きく変わっているのだから。

私たちの時代の、これからのヴァナキュラー建築を考えようとする時、まず現代における「風土」とは何かを問うてみる必要があるように思われる。「風土」の概念には、自然環境のみならず、生産技術、通信・情報技術、エネルギー、生活様式など多様な要因が包含されているはずだ。提案にあたっては、全く新たな「風土」の解釈が提示されてもよい。あるいは、伝統的な「風土」の概念こそ見直されるべきだという主張があってもよい。どのような立場で思考を展開してもよいのだが、ヴァナキュラーの原義である「その土地特有の」建築の姿を考えるのだから、具体的な「風土」を設定した提案をしてほしい。

様々な解釈が成立するであろう「風土」の中で、「屋根と床」はどのように振舞い始めるのだろうか?

文:伊藤恭行(審査委員長

審査員
長谷川豪 長谷川豪建築設計事務所
伊藤恭行 名古屋市立大学・CAn
 尾崎公俊 設計工房 蒼生舎
 中渡瀬拡司 CO2WORKS
 長尾英樹 Meet's設計工房
 納村信之 名古屋商科大学・テレデザイン
 六鹿 篤 architect6建築事務所
 武藤 隆 大同大学・武藤隆建築研究所
●ゲスト審査委員 ○審査員長
入賞作品 審査総合評価
学生の部 応募数 106点
金賞 審査評価
『動かすソト.感じるウチ』
佐藤大基
慶應義塾大学
銀賞 審査評価
『1300と1600の垣根』
奥田諭史/篠原麻那美
札幌市立大学

『くつのいえ』
中村僚太/中西美友/渡邊旭宏
名古屋市立大学
銅賞 審査評価
『小さなまちの大屋根の下で』 葛西慎平 滋賀県立大学 平林瞳 横浜国立大学
『伸びてゆく、個室』 村上康史 滋賀県立大学
『”遠いようで近いもの”』 大田将平 北九州市立大学
『「うち」と「そと」をまたぐ家』 濱本拓磨 北九州市立大学
『おおきな「うち」.小さな「そと」』 木全瑛二 名古屋工業大学
特別賞 審査評価
『生活のなる.木』 鬼頭朋宏 名古屋工業大学
一般の部 応募数 100点
金賞 審査評価
『ソコヌケの家』
余田尚紀 立命館大学大学院
石橋慶久 京都工芸繊維大学大学院
川崎啓介 首都大学東京大学院
長柄芳紀 立命館大学
銀賞 審査評価
『隣のピアノと.私のイーゼル』
手島史恵 名古屋工業大学大学院
金子裕子 名古屋工業大学大学院
西河辰彦 名古屋大学大学院
『窪みの輪』
北里暢彦
石井卓也
銅賞 審査評価
『eddy house』 佐藤 陽 千葉大学大学院
『CRACK HOUSE』 佐々木慧 九州大学 佐々木 翔 SUEP.
『ひとつの家であること.みんなの家であること』 八島健介 日本大学大学院
『nature bowl』 岡 慶一郎 京都工芸繊維大学大学院
茅原愛弓 京都工芸繊維大学大学院
『Case Study KOMISE』 宇野 彰 日本大学生産工学研究科
伊藤 顕 日本大学生産工学研究科
工藤恭正 大内環境デザイン研究室
遠藤千尋 大内環境デザイン研究室
特別賞 審査評価 
『たてにわの家』 武智靖博 信州大学大学院
1次審査通過』作品と作者
学生の部 1次審査通過作品(受付順)
応募数 97作品 1次選考通過 23作品
/トケイのイエ・渋谷昴平・東北工業大学
/Under bridge houses・平賀卓也・工学院大学
/垣根のない保育所・加藤ゆほ里・三重県立伊勢工業高等学校
/Dance Dance Dance・前田太志
/トシノナカノトシ・高城聡嗣
/部屋が囲む食卓・石川翔一・名古屋工業大学
/領域の家・板頭優佑・名城大学
/2重扉の家・山田善紀
/『「うち」と「そと」』・山田健太郎・北九州市立大学
/アマモリノイエ・穴井健一・北九州市立大学
/空と屋根が溶け合うところ・水野貴之・関西大学
/OPENING SHUTTINGHOUSE・齊藤信吾・早稲田大学
/ノキノキ・伊藤孝仁・他1名・東京理科大学
/そとのうち・足立裕也・法政大学
一般の部 1次審査通過作品(受付順)
応募数 139作品 1次選考通過 39作品
/点窓の家・小田島康明・東北大学大学院
/ふたつのだいち・吉田泰洋・竹中工務店
/にぎわいと住む・北村圭亮・他1名・大阪市立大学大学院
/「そと」にある「うち」・上原正悟・芝浦工業大学大学院
/さら、さら・矢野龍太・芝浦工業大学大学院
/家族のための収集箱・永井ゆき・他2名・早稲田大学大学院
/みえないものがみえる家・中曽万里恵・芝浦工業大学大学院
/外の家(内)で・橋本真一郎・五洋建設
/うちとそとの狭間で・伊藤周平・早稲田大学大学院
/Light fragment・小松慧史・立命館大学大学院
/かんなな家・西河辰彦・名古屋大学大学院
/空き家に咲く花・野口直樹・他1名・芝浦工業大学大学院
/うつろう屋根の家・広田彰紀・他5名・東京理科大学大学院
/イエのそと、そとの家-都心に家族で住まうこと-・西野安香・他1名・早稲田大学大学院
/対と間・伊坂春・他2名・早稲田大学大学院
/「そと」はみんなの「うち」・船越克己・東京工業大学大学院
/オシマド/ヒキマド・寺嶋利治・名古屋市立大学大学院
/イロニワのいえ・小林淳・他1名・服部信康建築設計事務所
/壁のない家・田中和沙・東京電機大学大学院
/ガラス窓のない家・山口貴志・慶應義塾大学大学院
/トビラの諧調・金光宏泰・他2名・早稲田大学大学院
/Share in +900・山本祐太・他1名・神戸大学大学院
/8つの扉と白い壁・藤井遼佑・他1名・慶應義塾大学大学院
/青石と風の家・吉田恭平・他2名・和歌山大学大学院
/Table House・中尾彰宏・他1名・北九州市立大学大学院
/光の射すほうへ・高木秀太・他2名・東京理科大学大学院
/ココカラハジマル・渡邊明宏・他1名・首都大学東京大学院
/平面と断面のあいだ・和田隆介・千葉大学大学院
/風景を相対化する家(うち)・中辻康次郎・関西大学研究生
/拡大する「うち」結果としての「そと」・青木大輔・武蔵野美術大学大学院