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『「うち」と「そと」』
固有な風土に適った住まい方がある。
それは、自然がもたらす環境の下で、育まれた歴史と継承された文化の顕れでもある。
和辻哲郎は著書『風土』において、日本固有の表現としての「うち」・「そと」の用例を挙げる
私達は日常的に「家」を「うち」と捉える。
家人を「うちの者」、妻を「家内」と呼び、外の者とを区別するが家族の区別はしない。
この人間の間柄としての家の構造は、そのまま家屋としての家の構造にも反映するとある。
西欧における室は頑丈な錠前と重厚な壁によって閉じられ個々を距てる。
日本における襖・障子は、信頼において相互を仕切るものの、距てる意志はない。
さらに、日本の玄関・門は外部(「そと」)と家を対抗的・防御的に距てる。
それは西欧での街を囲む城壁の門に相当するという。
日本では、核家族化が進み個人主義が蔓延した。
自然や社会とのバランスは崩れ、以前からの住まい方が変化している。
殺伐とした事件や退廃的な気風が渦巻き、共有していた価値観は断片化し、
道徳的な意識が薄れてきている。
和辻は「距てなさ」が、日本の特殊性であり、「家」としての人間の存在の仕方であると説いた。
だが現在(いま)、家族の存在が変わり、「家」の意味が消失しつつある。
多くの人々が自分の居場所を見つけられずにいる。
建築は、何ができるだろう?
現状を踏まえ、未来を見据えた「うち」と「そと」を「住まい」として提案して欲しい。
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