2008年 第25回設計競技
 『奥』
「奥」の字源は篆文(てんぶん)での『奥』で、白川静氏は「・・奥とは肉を供えて祭る場所、室の西南隅がその場所とされた。ゆえに奥に奥所,深奥のところの意がある。・・」と字統で解説しています。
又、日本語の中に「奥」から派生した,奥許し,奥深い,奥床し,奥ゆかしいなどの言葉があるように、「奥」には‘場’の概念ばかりでなく、深淵な意味も含まれています。


 桂離宮に代表される和風建築では、‘しきり’によってつくられた‘間’がそれぞれ固有のポテンシャルを帯び、空間的な階層性が構成されています。そして、より高位に位置している‘場’が「奥」で、その階層の高位性によって、場の持つ歴史性や精神的な深淵さを人に喚起させています。
 例えば、和の遺伝qのひとつである‘折れる、違える’といった日本の伝統的な動線は、西洋のパースペクティヴの消点に向う直線的な動線とは異なり、都市や建築において複雑に変化する空間を内外につくり出し、形態に期待感や神秘性を宿させて、‘場’としての「奥」が生じています。又、床框や床柱など‘しきり’によって高位化が図られた床の間などは、場に飾られ、祈られる対象自体を主体化させています。


現代の多くの住まいは、均質で明解な空間構成がなされていますが、‘場’の持つ固有の潜在力とその階層性を喪クしています。

今日のあるべき社会像と都sや建築の姿を今一度見つめ直し、「奥」の概念が活かされた住空間の提案を求めます。
 
                                                                文:審査委員長 奥野美樹
審査員
堀部安嗣 堀部安嗣建築設計事務所/京都造形芸術大学大学院 教授
○竹山明英 竹山明英建築研究所
 奥野美樹 奥野建築事務所
 車戸慎夫 車戸建築事務所
 小松 尚 名古屋大学 准教授
 鈴木祥司 アトリエ祥建築設計
 中井孝幸 愛知工業大学 准教授
 平野恵津泰 ワーク○キューブ
●ゲスト審査委員 ○審査員長
入賞作品 審査総合評価
学生の部 応募数 155点
金賞 審査評価
『クラインの家』
福島巧也
名古屋工業大学
銀賞 審査評価
『ハナレ・バナレ』
丹野宏柄/高田正行/原拓也
北海道工業大学

『砂時計』
下村和也
名古屋工業大学
銅賞 審査評価
『となりの奥』 弓削 純平 北九州市立大学
『気配.あふれだす家』 小林 啓明 東京理科大学
高木 秀太 東京理科大学
寺町 直峰 東京理科大学
『とある旗竿地の住宅』 行木 慎一郎 東京理科大学 上野 宏岳 法政大学
『オクの溶解/人の奥』 矢野 晃一郎 大阪大学
『思い出をまとった、これからの家』 水野 貴之 関西大学 森安 洋幸 関西大学
特別賞 審査評価
『a long way off
       ―開放的な閉塞感―』
香川 稍勲 信州大学
一般の部 応募数 197点
金賞 審査評価
『該当作品なし』
銀賞 審査評価
『奥の住』
隈 翔平 
MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO
『奥を伝える家』
古川 陽平  室蘭工業大学大学院
『地を這う家』
武保 学  フリーランス
銅賞 審査評価
『境界線上の奥』 濱 奈津子 JR東海コンサルタンツ(株)
古川 紀明 JR東海コンサルタンツ(株)
宮嶋 孝周 JR東海コンサルタンツ(株)
『Depth』 池上 寿孝 T-PLAN
『under the shade』 箕浦 浩樹 神戸大学大学院
『オリガミハウス』 柳橋 啓一 日本大学大学院 岩井 友佑 日本大学大学院
『200mm越しの奥』 渡辺 拓哉 室蘭工業大学大学院
角川 雄太 室蘭工業大学
特別賞 審査評価 
『奥行.素材.経験』 吉田 泰洋 (株)竹中工務店