一般の部 特別賞

『カンケイがつくるイエ』

敷地全体に木々を植え、全体を自然環境とした上で、いろいろな生活の場所が徐々に見つけられていって、人間の住まう空間が柔らかく作られてくる、という案である。最初に「庭/建物」というように中と外をばしっと分割した上で始まる建築設計ではなく、両者がまるで同じものであるかのように、庭も建物もないというのだろうか、木々で満たされた自然環境の中から、徐々に住空間の姿が現れていくという、非常に柔らかな姿をもった住空間の提案で、個人的にはもっとも共感した案である。人間の住まう場みたいなものが、非常にあいまいにテキトウに、徐々にその姿が現れてくる様が美しく、その輪郭の曖昧さに魅力がある。また、建築創作として、建築物を形にしてゆくそのアプローチのしかたがすばらしい。僕が記憶している限りではこの案は一番優れたもののひとつであったと思う。庭も建物もないという感じのドローイングなので、これはある意味で庭という概念を壊してしまっている案と言える(同時に住宅という概念も壊してしまっている)が、結果的には非常に庭的な、庭というものの可能性が非常に感じられる案となっている。また、根本的にこの案というのは庭ということを超えて、都市の姿、都市像に関する提案にもなっており、その点にも惹かれた。

ゲスト審査委員  西沢 立衛