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『雨』
豊かな四季があり、高温多湿な風土で生活を営んできた日本の人々は、自然との調和のなかで、繊細で豊かな感受性を育んできました。日本人にとって自然とは畏怖心を持って共存する対象であり、生活の営みの基盤であるとともに、心を育む土壌だったのです。
今回は、日本人独特の自然観、情緒、感性を育んだ風土の象徴として「雨」をテーマにしました。「愛雨」「慈雨」「雨花」という言葉から、愛でる気持ち、感謝の心や情緒が読み取れます。また、広重の浮世絵からは旅人や町人の心情が雨の表現に彷彿と感じられます。これらの多様な表現には、自然の微妙な変化や表情に対し自らの心象を重ね合わせた日本人の繊細な感性が読み取れます。
「雨」をキーワードに、日本の風土にふさわしく、日本人の感性を呼び覚ます住まいを提案してください。利便性、合理性を追及するあまり大切なものを見失いつつある日本の会に向けたメッセージであることを期待します。
文:審査委員長 生津康広 |
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