2004年 第21回設計競技
 『境界空間』

 かつての日本家屋ではその気候風土から、軒を深く取り、濡れ縁を設けたりしながら内と外を柔らかく区切っていました。庭との間に生じた、内でも外でもなく感じられるその境界空間は、単に通風や採光のための開口部にとどまらず、人と人とのコミュニケーションの場であったり、くつろぎの場としても機能していました。
 街道沿いの商家の店構えを構成する格子も境界領域を形成するエレメントと言えます。商いのスペースあるいは私のスペースが、いきなり外部である公道に面する場合の境界の有り方です。ここでは通風を犠牲にすることなく、僅かに採光を採りながら内部を緩やかに遮蔽しています。また、内からはスダレ効果により、明るい外部(往来)の気配を知ることが出来る境界空間を形成しています。
これらは、何れも内と外とを隔てる境界領域のデザインと言えます。
 家の内部にあっても領域の境界を調整する様々な仕掛けがありました。襖や障子などの建具は室の繋がり具合を微妙にコントロールできるもので、フレキシブルな空間の利用を可能にしていました。
 外部では、敷地と道路の境界(私と公の境界)の作り方に様々な工夫がなされ、街並みの有り方や表情を構成する重要な要素となっていました。
 和の空間にあっては、物理的な仕切を作らず、我々が持つ文化固有のサイン(象徴作用)で場あるいは領域を示すという方法も存在しました。
 現在、生活は大きく変わり、多様化しました。現代の生活空間を見つめ直し、そこに有効な「境界空間」を取り込んで下さい。かつての精神
(和の遺伝子)を生かすことにより成立する豊かな居住空間の提案を求めます。
                                                                文:審査委員長 尾崎公俊
審査員
●竹原 義二 無有建築工房・大阪市立大学生活科学部教授
○尾崎 公俊 設計工房蒼生舎
 谷口  元 名古屋大学教授
 増田千次郎 増田千次郎建築事務所
 竹山 明英 竹山明英建築研究所
 久保田英之 久保田英之建築研究所
 鈴木 賢一 名古屋市立大学教授
●ゲスト審査委員 ○審査員長
入賞作品 審査総合評価
学生の部
金賞 該当なし
銀賞 審査評価
『N/S -対- 』
北口 智浩 金沢美術工芸大学

『ana 凹 house 』
藤田 修司 工学院大学
新保 優樹 工学院大学

『Wkabe 和壁』
金村 慎太郎 関西大学
銅賞 審査評価
『縁』 服部 恵利子 愛知工業大学
『「風・光」が創り出す
一期一会な空間との出会い』
小栗 将裕 愛知工業大学
『LINEAR COMMUNITY SPACE
〜ある寺町に対するケーススタディ〜』
西川 正純 名古屋市立大学
『give&take 
境界空間から始まる異文化交流』
山田 真太郎 三重県立四日市工業高等学校
『彩 〜息づく精神〜』 渥美 智英 日本大学 菊池 秀和 日本大学
三沢 浩二 日本大学
佳作
『LAN COMMUNITY』 野村 拓司 福井大学
一般の部
金賞 審査評価
『〜ヤサシイカゼ〜』
市原 慎太郎 京都工芸繊維大学 大学院
山野 睦代   京都工芸繊維大学 大学院
銀賞 審査評価
『柔らかな建築/空隙をつくる建築』
佐野 哲史 早稲田大学

『Invisible Border』
鈴木 俊彦 フリー
銅賞 審査評価
『gaggle 
of geese 』
齋藤 崇志
梶田 直樹
名古屋工業大学 大学院
名古屋工業大学 大学院
土屋 尚人 名古屋工業大学 大学院
『次世代型』 各務 篤史 名古屋工業大学 大学院 小林 靖 名古屋工業大学 大学院
山本 浩司 名古屋工業大学 大学院
『TOKO・DOMA』 浅野 剛弘 名古屋大学 大学院 中村 敏 名古屋大学 大学院
山本 益義 名古屋大学 大学院
『二つ目の呼吸
〜不可視の境界〜』
水上 篤 潟Vーラカンスアンドアソシエイツ
『ゲタ・ハウス』 中林 原野 東京理科大学 大学院
特別賞
『HOUSE 
OF LANTERN』
横田 健司 横田と和泉 横田 綾子 横田と和泉