
『和の遺伝子を探る』
審査結果発表
| 学生の部 | 応募数 68点 | ||
| 金賞 | ・該当なし | ||
| 銀賞 | ・N/S -対- | 北口 智浩 | 金沢美術工芸大学 |
| ・Wkabe 和壁 | 金村 慎太郎 | 関西大学 | |
| ・ana 凹 house | ●藤田 修司 新保 優樹 |
工学院大学 | |
| 銅賞 | ・縁 | 服部 恵利子 | 愛知工業大学 |
| ・「風・光」が創り出す一期一会な空間との出会い | 小栗 将裕 | 愛知工業大学 | |
| ・LINEAR COMMUNITY SPACE 〜ある寺町に対するケーススタディ〜 | 西川 正純 | 名古屋市立大学 | |
| ・give&take 境界空間から始まる異文化交流 | 山田 真太郎 | 三重県立四日市工業高等学校 | |
| ・彩 〜息づく精神〜 | ●渥美 智英 菊池 秀和 三沢 浩二 |
日本大学 | |
| 佳作 | ・LAN COMMUNITY | 野村 拓司 | 福井大学 |
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| 一般の部 | 応募数 64点 | ||
| 金賞 | ・〜ヤサシイカゼ〜 | ●市原 慎太郎 山野 睦代 |
京都工芸繊維大学 大学院 |
| 銀賞 | ・柔らかな建築/空隙をつくる建築 | 佐野 哲史 | 早稲田大学 |
| ・Invisible Border | 鈴木 俊彦 | フリー | |
| 銅賞 | ・gaggle of geese | ●齋藤 崇志 土屋 尚人 梶田 直樹 |
名古屋工業大学 大学院 |
| ・次世代型 | ●各務 篤史 小林 靖 山本 浩司 |
名古屋工業大学 大学院 | |
| ・TOKO・DOMA | ●浅野 剛弘 中村 敏 山本 益義 |
名古屋大学 大学院 | |
| ・二つ目の呼吸 〜不可視の境界〜 | 水上 篤 | 潟Vーラカンスアンドアソシエイツ | |
| ・ゲタ・ハウス | 中林 原野 | 東京理科大学 大学院 | |
| 特別賞 | ・HOUSE OF LANTERN | ●横田 健司 | 横田と和泉 |
| 横田 綾子 | 横田と和泉 | ||
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| 【注】左から題名、作者(●印はグループ内の代表者)、年齢、学校名又は勤務先名の順です | |||
| 第21回建築設計競技入選作品 | |||
| ■審査総評 | 審査委員長 尾崎公俊 | ||
| 東海支部の設計競技も21回目を迎え、今年から新たなシリーズを掲げてのスタートとなりました。「和」と言う概念がキーワードとなっています。この20年間、節目でシリーズテーマを変えながら、街や住まいの有り方を追求してきました。現在、住まいを取り巻く環境は大きく変わりつつあります。高齢化社会、情報化社会を迎え、環境問題などをも踏まえた、新たな処方箋が求められています。そのための手掛りを、我々日本人が培ってきた文化の中に探し出そうというものです。 「和の遺伝子を探る」シリーズの第1回テーマとして「境界空間」を取り上げました。ある領域と別の領域の間に生じる「界」のことです。我々日本人は固定的に仕切ることを嫌い、領域の性格に応じて様々な工夫、演出を見せて来ました。そこには、我々の文化特有の約束事が存在していたことも見逃せません。応募者が、どのような領域を取り上げ、いかなる約束事を措定して、どんな建築的な仕掛け(演出)を見せるかが審査のポイントとなりました。 審査は、JIAメンバーに加え、「和」の空間を実践しつつ、大学で教鞭を執られる竹原義二氏をゲスト審査員にお招きして行われました。 和の捉え方は、思っていた以上に多様でした。我々審査員と若い応募者の間に、世代の違いによる認識の乖離があるのでは、などと思い巡らせながらの審査でした。個々の差異はありましたが、各々が的確に「和」と向かい合おうとしていることが感じられました。 様々な「界」が提出されましたが、緩衝帯としての境界空間を扱ったものが目に付きました。境界面として捉え、その透け具合を調整するもの、可変性に注目したものなどが見受けられました。緩衝帯が平面的な広がりを見せ、新たな領域を形成する案もありました。 領域の性格の面から見ると、通りや路地とプライベートな空間のハザマを扱った案が数多く見られました。都市をマクロに眺めて、その縁をデザインするものや、IT社会を反映して、電磁波防御のバリアーを提案するものもあったことを報告しておきます。 時代の変遷により、領域の性格が変わり、プライバシーの概念やその取り扱い(社会の約束事)が変わり行く中で、セキュリティーという難解な問題も発生しています。境界領域のデザインの難しさを思い知らされると同時に、豊かさに繋げる重要な要素であることを再認識させられる思いでした。 |
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| ■ 審査を終えて | ゲスト審査員 竹原義二 | ||
| 今回のシリーズのテーマである「和の遺伝子を探る」というタイトルは、かつての日本の住まいが持っていた生活を工夫して住まうという知恵が時代を経ていく中で後世につながらず断ち切られようとしているのではないか、そして今一度「和」という感性を見直してみる時代にきているのではないかという危惧の中から設定された。 今回のコンペ案にどのような提案が見られるのかが楽しみであった。 全体の作品を通してみると、外部と内部をつなぐ中間領域を土間という形の境界空間として提案している作品が多いように見受けられた。 外部と内部を意識する方法としては、下足で歩く場と素足で歩く場とに区別されていた。その場が占める土間の比率も町家と民家では当然違っていた。使い勝手の中からうまれた土間空間が現代の住宅の中でどのように提案されているかに興味があった。また洋風化が日本文化の中に根をおろしたが、内部空間を形成するプランの中にはかつての和風住宅が持っていた土間空間は見当たらなくなった。しかし、逆に「和」を意識した住宅の中に外部と内部の関係が見られるようになってきたのではないか。そこには「和」とか「洋」とかの区別に当てはまらない住宅が現れてきた。 このあいまいにつながる外と内の関係に境界を感じとった案もいくつかあった。 また日本の住宅は軒を深く取り、濡れ縁を設けて、内と外を柔らかく区切っていた。このようなあいまいな空間の使われ方が住まいの中には必要である。とくに庭との間に生じた内でも外でもなく感じられる「境界空間」は人と人とのコミュニケーションの場であったり、くつろぎの場としても機能していた。これらの軒先空間が生み出すあいまいな場を持つ空間と直接的に場を切り取り、内と外が連続的につながっている空間の提案もあったが、今ひとつ踏み込んだ提案にはなりえなかった。 132点の応募案から見えてくる境界空間の提案はひとつのアイデアだけで表現されているものが多く、審査する側が深く読みとらないと見えてこない作品が多く見受けられた。これらは最近のコンペ審査で強く思うことである。一枚の紙での作品の表現力が弱まったようにも見受けられる。しかし反面、直接的に表現されていない作品の奥にひそんでいるアイデアや空間のあり方を憶測することが審査の楽しみでもあった。 帰りの新幹線の中のテロップから新潟中越地区で地震があったことを知った。でもテロップからは現地の様子があまり伝わってこず、被害が少ないといいのにと思いながら新幹線で帰阪した。 台風23号での被害は思ったより大きく、川が決壊し、道路が川となり、住宅が水面の中に浮いている写真が報道された時、境界線が見えないことの恐さと「住まい」が持つ重要性を改めて知らされた。 |
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| 金賞 「〜ヤサシイカゼ〜」 |
市原慎太郎(京都工芸繊維大学大学院) 山野 睦代(京都工芸繊維大学大学院) |
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| 「自然要素を浸透させるスポンジのようなもの…」自然を表面ではねのけるのではなく、自然をいったん柔らかく受け止め、その後に浸透的に受け入れていく。それをブラックボックスとしての住戸とする。「ヤサシイカゼ」というわかりやすいタイトルに引き換え、コンセプトの説明はどこまでも抽象的で、難解さを装う。住戸というナマの生活の拠点を「ブラックボックス」として扱うことは、建築家の居住空間内部への関与を牽制しているのか。あくまでも実態がないからなのか。確かに、どこにも平面図に相当する表現が見当たらない。人の姿はすべてシルエット。スケールの情報も隠されたまま。外観を示すCGパースは、特定の場所を想定させない。広がる大空を背景に、鏡面の大地から立ち上がるゆらぎのファサードは、さながら巨大なオブジェのようである。 紙面のヘッド右肩にさりげなくはめ込まれた1枚の写真、「風になびくススキの穂」は、この作品のコンセプトをシンボライズする重要な写真である。なぜなら、ススキは、優しい空気の流れを詩的に視覚化してくれるからである。風になびくススキを画像として固定化する。優しい風は、揺らぐ植物へと転化され、幾何学パターンとして切り取られ、構造体へと映しとられる。ゆらぎを表現した構造体の外側を、ガラスの縦ルーバーが覆う。ガラスルーバーは、揺らぐ構造体をある時は映し込み、ある時は透過させる。太陽の動き次第で、ブラックボックスとしての住戸は視覚的に様々な表情を見せるのである。 このところヒートアイランド現象が加速してか、とりわけ都市の夏は異様な湿度とイレギュラーな暑さを記録する。人間にとって過酷な気象現象が、都市の快適な人工環境に依存する人間活動の結果に他ならないことは誰もが認識するが、自らは被害者であり加害者であることを認めない。被害者であるからこそ建築を気密化する。気密化は「外部」と「内部」の峻別である。それでも暑い夏が終わり、秋風が吹き始めると、自然現象の優しさに気がつかされる。「目にはさやかに見えぬ」秋の気配を、ほほをなでる風が教えてくれるのだ。 過度にカラフルなプレゼンテーションが多い中でモノトーンの紙面は寡黙であり、最小限の情報量ゆえに、ヤサシイカゼごとく何かしら意味ありげに審査員の間を吹き抜けたかのようである。「外部」と「内部」を区別するな、境界空間に和の遺伝子を取り戻せと。(鈴木賢一) |
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