2011/7/15 2011年度応募要項発表
過去入賞作品
第26回〜第30回 シリーズテーマ 「風土を見る」     (全文)

経済のグローバル化が著しい。

今や情報は世界を駆けめぐり、見えない世界経済が共時的に築かれている。

生活のグローバル化が著しい。
 先進国のみならず近代化の進む国々の郊外では、居住地が平坦に開発され、似通った生活が営まれている。

建築のグローバル化が著しい。
 ガラスを使った高層建築は中東や中国、各国の都市に見られ、今やありふれた都市の風景となった。

資源やエネルギーの奪い合いが世界規模で惹き起こっている。
 化石燃料や木材だけでなく食物や水さえも、資本主義の原理に基づいた市場経済が浸透しつつある。

爆発的な人口増加に悩むアフリカ諸国は貧困にあえぎ、
 少子高齢化を憂う先進国は消費生活に埋没している。CO2排出権の売買という不可解な施策は、
 こうした不均衡を正すものでも、地球温暖化を防止するものでもない。

 確かなことは、資源やエネルギーが限られていること。
 今後、建築にはエネルギー消費を減らすデザインと、
 無駄な資源消費を抑える工法や材料使用がより求められるだろう。

この資源・エネルギー問題は、各地の地域性が薄れていることにも深く係わりがある。
 世界には様々な風土をもつ土地があり、それに適した仕組みがある。
 例えば、ヴァナキュラーな建築は、その地特有の風土からつくり上げられた、
 いわば地域の原型ともいえる建築であり、無駄のない資源・エネルギーの利用方法を示唆している。
 一方、風土を顧みないどこでも見られる建築は、自然との折り合いに消極的な建築とも位置づけられる。

 本コンペシリーズは、地域に固有な風土を見つめることで、
 グローバルな視座をもつ住まいのあり方の提案を求めるものである。
 建築において風土を見ることは、その土地の文化や環境を深く考察し、
 歴史的なコンテクストを読み取り、材料や建築方法を選択することであろう。
 それは、現代の考え方や技術を否定することではなく、
 思考のよるべき柱として重要な役割を担うものだと考えている。

文:奥野美樹
第28回 課題 「光と風」

住まいを考える時、光と風がもたらす現象は空間にとって大切な要素である。
光と風をイメージした時、心地良い種類の光と風とそうでない場合がある。
それは多くの自然現象に言えることだが、その地域の持つ特性や気候、風土を無視して快適で安らぎのある住空間は成立しない。

光は闇によって生かされ、光が無ければ空間は認識できない。
自然の光であれ、人工の光であれ、光こそが空間に生命をもたらす。
風は空気の流れによって生まれ、空間に心地良さを与える。
空間は光と風の織り成す調和によって生かされ、生命と安らぎを与える。
 
本来これらをコントロールする事により空間の快適性を求めてきたはずだが、
その原理原則を逸脱した空間表現が多く見られる今、
もう一度、光と風の持つ可能性を新しい価値観で問い直し、生命と安らぎの有る住空間の提案を求める。

文:道家秀男(審査委員長)

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