JIA三重発 第9回森羅万象匠塾

「地質及び地盤改良の話」


2002.11.22 :(有)伊勢地摂 取締役 金森光男氏

 JIA三重では年二回、森羅万象匠塾と称した会員対象の勉強会を行っています。あらゆるものが建築と関わっているという観点から、幅広い範囲で匠の業を学習しようという趣旨で、この地域で活躍している職人さんや建材の生産者にお願いして、アトリエにお伺いしたり会場でレクチャーを受けたりして、現場のナマの話を聞いています。
 11月22日に行われた第9回森羅万象匠塾は、永年地盤改良や地盤調査にたずさわっておられる(有)伊勢地摂 取締役 金森光男氏に来て頂き、いろいろなお話しを聞かせてもらうことが出来ました。

 一時間ほどのレクチャーは半分を金森氏の講演に割き、残りの半分は本当に活発でざっくばらんな質問の時間と、まるで会場はいきなり金森氏との懇親会のような様子で、地盤という森羅万象に謙虚にかかわって仕事をされている金森氏のごく自然体な人柄が十分にうかがえる会となりました。

 実は僕も金森氏とはもう五年くらいのつきあいになります。構造の事は構造屋に相談するのが普通の設計業界で、地面の職人である金森氏のような立場の方の意見も聞きながら仕事をすすめることができる事は、ややもすると理論ばかりに片寄りがちになってしまうところを現実の世界に引き戻してもらえる重要な機会を得ることになると感じています。昔ならば、建物を建てる際にはまず土地の相をみきわめるところから入ったのだと思いますが、現代の土地事情はそんな悠長なことは許さず、どんな土地にもインスタントに建てることを要求されています。そのことを意識しているうちはまだいいのですが、そのうちこれが常態となり、よほど謙虚にしていないとすぐに忘れてしまいかねません。

以下、講演会の中での金森語録の一部を紹介します。
「伊勢地摂のセツは摂理のセツ。私らは地面にささえられ仕事をしている。地面の摂理に従っていかんとだめ。」
「土の中は変化がはげしい。やわかいところ、かたいところ、ガラの入ったとこや腐葉土のところ。本当にいろいろある。」
「盛り土はバックホウで掘って行くと表面から10年で30センチくらいしか締まっていない。どうしても下がやわらかいの残る。下がやわらかければ全体として沈んでしまう。」
「結局、地面の地耐力以上にはもたないのだから、その地面の力を最大限どう利用するかを考える。」
「上が固すぎてある程度までしかボーリングできない。しかし、その下がやわらかいところあり。盛り土ではそこがやっかい。」
「自然は目に見えないけれど大きな力がかかっている。」
「水さんこちら、逃げてえな。とやっておくといつまでもいい。」
「土は自重で下がり、水を逃がす。水と一緒にまた自分を流してしまう。」
「このごろはいい家を設計しすぎる。昔はくにゃっとなっても何百年ももつものである。」
「下がっても直せるようにしておけばいい。はじめから下がるのが判っている土地もある。」
などなど、金森氏の発する一語一語が生きた言葉として深く印象に残りました。中でも、この日一番印象に残った言葉が、次の言葉でした。
「土の中は本当に森羅万象ですに!」

(萩原義雄/つくる研究所)

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