保存情報 第166回
登録有形文化財 長島山崇覚寺(ちょうとうさんそうかくじ)   神谷勇雄|
ユウアンドアベトウ
本堂正面 本堂格天井 組み手彫刻
■紹介者コメント
 大須の南側から東別院の間にお寺がたくさんある。その中に割と敷地の小さい崇覚寺がある。山門をくぐると緑が多く、空気が変わったような雰囲気に包まれる。
 長島山崇覚寺(ちょうとうさんそうかくじ)は真宗大谷派の寺院として勢州桑名郡長島の中川村にあったが、寛永年間(1624 ~ 1643)巾下堀詰町に移った。
 正徳年間 (1711 ~ 1715)に再び、東本願寺掛所の西側の現在地(名古屋市中区橘2-6-15)に移転した。現在の崇覚寺本堂は、幕末の慶応2(1866)年に建てられた瓦葺きの木造平屋で、尾張を代表する名工、「伊藤兵左衛門」(八世守富)が棟梁を務めた。崇覚寺は戦災を免れ、現在に至っている。
 本堂には格天井が張られているが、この時代に格天井を使えたのは東別院と崇覚寺だけである。東本願寺のゆかりの文書も所有している。
 寛文5(1665)年に、このあたりが町屋になり、春秋2回の芝居興行が許され、崇覚寺(現在の愛知産業大学工業高等学校)の東に芝居小屋(橘座)が建てられた。享保16(1731)年、7代藩主徳川宗春の代になって、彼の積極策により東西の名優が競って来演し絢欄たる芸の花を咲かせたと語り継がれている。元文4(1739)年、宗春の失脚で中断したが、幕末には再び活気を取り戻した。
 その名残もあり、昔のような賑わいを取り戻そうと、東西別院と地域の商店有志らが「東西別院寺町まちづくり協議会」を結成して活動を始めた。東別院を中心として、2013年より毎月28日に「暮らしの市実行委員会」によって「東別院てづくり朝市」が発足し、崇覚寺の住職も協議会のメンバーとして、来場者にもっとまちを歩いてもらい、人と人の輪を広げようと考えている。東別院では以前より毎月12日に野菜や衣料品の露天が並ぶ御坊縁日「一如さん」が開催されている。
 崇覚寺は、つい最近平成15年7月17日に登録有形文化財に選ばれた。 
所在地:名古屋市中区橘2-6-15
所有者:宗教法人崇覚寺
建設年代:慶応2(1866)年
登録有形文化財 名古屋カテドラル 聖ペトロ・聖パウロ大聖堂(通称:カトリック布池教会)   森口雅文|
伊藤建築設計事務所
   
南側正面 身廊 尖塔と東側側面のバットレスと吐水樋
■紹介者コメント
 カトリック布池教会は、正式には名古屋カテドラル 聖ペトロ・聖パウロ大聖堂といい、2015年3月13日、国の文化審議会が下村博文文部科学大臣に答申した登録有形文化財(建造物)171件の一つである。1960(昭和35)年3月に着工、1961(昭和36)年12月に竣工し、1963(昭和37)年3月21日に献堂式、同年4月16日に、愛知県、岐阜県、石川県、福井県、富山県を管轄区域とする名古屋教区の司教座聖堂(カテドラル)に昇格した。1992(平成4)年10月5日には、名古屋市都市景観重要建築物に指定されている。現在も毎週日曜日には塔の鐘が鳴らされ、厳かにミサが取り行われている。
 建築の様式は、西洋のゴチック建築を模し、内外ともコンクリート打ち放とし、その肌合いと重厚感は中世の石造伽藍を彷彿させる。建築規模は、敷地面積6,236㎡、建築面積1,011.00㎡、延べ床面積2,393.75㎡、鉄骨鉄筋コンクリート造、切妻造り銅板葺。桁行49m×張間18m、地下1階、地上4階、塔屋付。棟高21.5m、鉄筋コンクリート造角塔30.8m、鉄骨造の尖塔高さ50.2m。建築工事費107,820,000円。建設後既に50年以上経過しているが、耐震強度は、耐震診断(2003年竹中工務店実施)の結果、耐震指標Is値の0.6以上が確認されているので、耐震改修促進法上の目標値は確保されている。
 建物の配置は採光を配慮して、通常の東西軸でなく南北軸とし、南正面は半地下式の集会場の上を広い階段と基壇とし、左右の双塔と切妻の本堂によりゴチック様式の立面を構成している。東西側面は柱型を突出させバットレス状とし、その結節点の水切り勾配を造形化し、軒には怪獣こそないが吐水樋を突出させ外壁の汚れを防いでいる。
 教会関係者の文化財にふさわしい日常の維持管理の努力と相まって、地域のランドマークとしても高品質の施設と評価される。
所有者:宗教法人 カトリック名古屋教区
所在地:愛知県名古屋市東区葵1-12-23
設計監理:㈱山下寿郎設計事務所名古屋支社(現:㈱
山下設計 中部支社)
施工:㈱竹中工務店 名古屋支店
問合せ:カトリック布池教会TEL 052-935-6305
交通機関:①名古屋市営地下鉄東山線 新栄町駅から約550m ②名古屋市営地下鉄桜通線 車道駅から約600m ③JR中央本線千種駅から約720m
見学時間:平日と日曜日(7:00〜21:00)但し礼拝中を除く