保存情報 第151回 | |||
登録有形文化財 | 徳川美術館内「山の茶屋」 | 三井富雄|モモアーキテクツ | |
江戸浅草瓦町 松平伊賀守敷地(寛永古地図) ※出典「 江戸切絵図 尾張屋嘉永六年版」 |
外観 東西棟 左玄関、正面上段の間 ※畔柳武司氏平成24年撮影 |
配置平面図(1963年山下武彦・筆者実測調査図) | |
■紹介者のコメント 平成26(2014)年春、徳川園内5件、徳川美術館内3件が国の登録有形文化財(建造物)指定に答申された。「山の茶屋」答申への道は約1年前、1本の問合せの電話から始まった。それは旧知の畔柳武司先生が登録のための調査をされていて、山下武彦君と共に50年前まとめた大学の卒業論文・「山の茶屋・実測調査報告」(徳川美術館へ寄贈)についてのご質問だった。電話の後、何回かの応答や今までの研究者の論文、魚津源二氏らの調査が行われ棟札も見つかり、次第に「山の茶屋」の成立・経緯が明らかになった。 山の茶屋は明治16(1883)年に江戸浅草瓦町屋敷(元松平伊賀守屋敷5,252坪)に創建され、明治27(1894)年に尾張徳川家大曽根御邸内の現在地(美術館北東の木立の中)に移築された。 建物は、東西に上段の間、中段の間が並び、南北に下段の間・茶室をL字型に配置した独特の平面構成である。内部は掛込天井や砂壁、下地窓など数寄屋の趣向が見られる。 建物の特徴は上段の間を中心として構成されていること。床の高さだけでなく、出庇の高さや部屋の広さ、材料の扱いにも差がある。下段の間は水屋付でお茶や料理を準備する茶点所、さらに下手茶室は家来の控えの間ではなかったかと思われる。これらは武家の身分制度が明治16(1883)年にはまだ色濃く残っていたことを物語っており、いわば大名家の「数寄屋風書院座敷」といえよう。 浅草瓦町屋敷では庭園越しに隅田川を行き来する船や対岸の景色を愛でながら、開放的で眺望の良い上段の間で貴人をもてなし、主人自らも楽しんだのであろうと思いを馳せるのである。 |
所在地:名古屋市東区徳川町1017番地 交 通:JR 中央線大曽根駅南出口から徒歩10分、名鉄瀬戸線大曽根駅から徒歩約15分 建築年:浅草瓦町創建明治16(1883)年 大曽根邸 再建明治27(1894)年 大工棟梁は共に宇津木徳兵衛 登録番号:番号は6月末確定(2014年3月18日答申) 構造規模:木造平屋建、81.2m ² 寄せ棟桟瓦葺き ※催事の時以外は原則非公開 |
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データ発掘(お気に入りの歴史的環境調査) | 浅井裕雄|裕建築計画 | ||
図書館・研究棟 | パッヘ・スクエアとレリーフ | ||
■発掘者のコメント 昨年、ヘリテージマネージャー講習会の卒業課題として、「南山大学」をテーマに発表させていいただいた。その折に、施設課の方に学内を案内していただきました。ほぼ当時のままの校舎群は50年の歳月と共に周囲の緑と相まって美しいキャンパスをつくり出していました。 この南山大学の設計はアントニン・レーモンドです。レーモンドは1919年に帝国ホテルの設計でフランク・ロイド・ライトについて、日本にやって来ました。戦前戦後を合わせて44年日本に滞在。南山大学は晩年の作品とも言えます。 この頃のレーモンドには5つの設計哲学がありました。 「自然」・「単純」・「正直」・「直截」・「経済」 この哲学は南山大学でも見て取れます。配置計画ですが、自然の地形を生かし尾根を軸に左右に8棟の建物は地形の起伏に寄り添うように配置されおり、立体的に交差しています。この不均整で動的な配置は、記念碑的でないヒューマンスケールな建築群を表しています。 大きな特徴の1つであるプレキャストコンクリートのルーバーは、それぞれの校舎ごと、さらに方位ごとに異なるデザインを施しています。方位や風向き太陽の日射などのコントロールに、日本的なパッシブデザインを戦略的に採用しています。加えて、建物の外観はコンクリートの打ち放しとオレンジ(茶褐色)のライン。素直でシンプルな表現は経済的で長持ちする考え方です。ちなみにオレンジ色はこの土地の土の色を施したそうです。それ以外に設備トレンチの採用など先見性にあふれた建築郡です。 モダニズム建築の中でも、シンプルでありながら地から立ち上がるような重厚なデザインは機能と自然の調和を生み出し、ここでしか表現できない建築の回答です。50年の節目、今まで以上に自然と調和し素晴らしキャンパスであり続けてください。 |
所在地:名古屋市昭和区山里町18 所有者:学校法人 南山学園 建設年代:1964年 設 計:レーモンド建築設計事務所 アントニン・レーモンド ノエミ・レーモンド 施 工:清水建設 規 模:敷地面積|139,867m² 建築面積|8,829m² 延べ面積|23,581m² 受賞歴:日本建築学会賞(1964年)、DOCOMOMO100選 建築業協会賞(1965年)、BELCA 賞(2002年) |