保存情報 第147回
登録有形文化財 浄照寺  鈴木祥司|アトリエ祥 建築設計


所在地:愛知県豊田市若林西町向屋敷62
交通:名鉄三河線 若林駅より徒歩11分
登録番号(2005年12月27日):本堂23-0210 、庫裏23-0211、本書院23-0212
建築年: 本堂・明治31(1897)年、庫裏・万延元(1860)年、本書院・昭和9(1934)年
構造・規模:3棟とも木造平屋建て, 瓦葺き,
TEL:0565-52-0723
本堂:境内南東からの全景 庫裏:境内南西からの全景 本書院:正面写真
■紹介者コメント
 向島山(コウトウザン)浄照寺は永仁4(1296)年開祖・存澄がここに天台宗のお寺を構えたことに始まるが、永正元(1504)年浄土真宗に改宗している。本堂の寺院様式は和様を基本としているが彫り物、飾り物が多いことなどを含め禅宗様などとの折衷様式と言える。また近年本堂は原型の景観を損なうことなく耐震改修が施されているが、庫裏は境内に面した部分にアルミサッシが取り付けられていたり、鐘楼や土塀が鉄筋コンクリート造でつくりかえられているのがやや残念なところである。一方「お寺の大松」と呼ばれている豊田市名木指定第115号の推定樹齢230年以上、幹周4m、樹高30mのクロマツが残っており、山門なども新しく木造で立て直され境内の景観も整備されてきている。
 本書院の奥には真宗大谷派・東本願寺開祖の教如が住んだとされる創建後約420年経つ桃山時代の数奇屋風書院「北ノ御所」が移築されている。この書院は本願寺境内から大谷本廟へ、その後、故・伊東富士丸弁護士邸宅内に移り、伊東氏の死後取り壊し寸前のところで浄照寺へと移築された。入母屋の本堂、切妻の庫裏、切妻プラス唐破風の本書院が瓦葺きの重厚な趣に対して、入母屋銅版葺きの優美で簡素なこの書院は面白い対比景観である。桃山時代の数奇屋風建築は数少なく未指定ながら文化財的価値が高いとされている。団体での申し込みをすれば見学ができそうである。
データ発掘(お気に入りの歴史的環境調査) 東山旧岸邸  山田正博|建築計画工房
   
書斎 食堂  とらや工房
■発掘者のコメント
 東名御殿場ICのすぐ東に位置する東山旧岸邸を訪ねた。60年安保当時の首相であり現安倍首相の祖父である岸信介が、昭和45(1970)年73歳のときから17年間を過ごした自邸である。
 吉田五十八晩年の作品で、伝統的な数寄屋建築の美と、現代的な住まいとしての機能をあわせ持った邸宅。御殿場市に平成15(2003)年寄贈され、一般公開されている。
 明るく接客も可能な玄関ホールの左に、二階の寝室へと上がる階段室。正面には中庭をはさんで、居間・食堂。右には書斎があり、大きな地球儀が置いてあった。当主はこれをながめつつ、世界へ思いを馳せていたのであろうか。書斎の奥へと進むと、南面して和室二間があり、二室間の欄間を吹き抜けにしてよりシンプルに見せている。居間と食堂は建具を引き込み、庭に向かい大きく開放されている。食堂のテーブルで元首相は時に写経をしていたとのこと。厨房・倉庫は二階寝室の下になり、共に鉄筋コンクリート造としている。随所に近代的素材を用いていながら、和風モダンを醸し出している。
 旧岸邸の敷地続きに、和菓子の虎屋が内藤廣の設計により、とらや工房を建設し、駐車場も整備された。とらや工房は、円弧を五分の一に切ったような平面となっている。ガラス越しに製造工程が見られ、緑のなかで和菓子をいただける喫茶室が設けられている。
 インターチェンジとの間に秩父宮記念公園がある。昭和天皇の次弟であられる秩父宮ご夫妻が過ごされた簡素なお住まいが現存し、公開されている。種々の花々に満ちたお庭に立つ秩父宮殿下の像が、夕日に映える富士を見つめていた。
◉東山旧岸邸
所在地:静岡県御殿場市東山1082-1 TEL 0550-83-0747 
開館:4〜9月 10:00 ~18:00 10〜3月 10:00 ~17:00(火曜・年末年始休)
◉秩父宮記念公園
所在地: 静岡県御殿場市東田中1507-7 TEL 0550-82-5110 
開園:6〜8月 9:00 ~17:30 9〜5月 9:00〜16:30( 第3月曜・年末年始休)