保存情報 第143回
登録有形文化財 オリエンタルビル屋上観覧車  藤田淑子│
元名古屋文化短期大学
 
現存する日本最古の屋上観覧車 懐かしのカンガルーも見守る サンシャイン榮観覧車ははるか後輩
■紹介者コメント
 三越名古屋榮店の8階にある国内最古の屋上観覧車に乗った記憶をお持ちの方も多いであろう。三角錐のアーチをした鉄骨の脚間は6.2m。4人乗りケージ9機が取り付けられたホイールの直径は10m。一番高いところでも手を振る子どもの顔がはっきりと確認できる大きさで、家族の心温まる光景が繰り広げられていた。子どもたちにとって、屋上遊園地を訪れるのは大きな楽しみであった。
 昭和29(1954)年にオリエンタル中村百貨店が開店した当時から宣伝部におられた森寿さんに、当時の屋上遊園やテレビ塔など発展途上の榮の様子をお聞きした。それによると、初代観覧車(旧型)が4階屋上のオリエンタルビルが経営する遊園地にあり、ビルが3階建てから7階建てまでに増設された昭和31(1956)年の12月に、屋上8階に新しく遊園地がオープンし、現存の観覧車が営業を開始したとのことである。
 昭和49(1973)年に売り場拡張のための増築工事が終わり、8階に「舶来家具サロン」が登場。インテリア部門に専門のコンサルタントとして私の席が設けられたのもこの頃で、屋上に出ると、色とりどりのケージがゆっくり回る観覧車に癒されたことを懐かしく思い出す。
 時代とともに少子化が進み、車社会となって家族の過ごし方は急速に変化し、屋上遊園への客足も遠のいていく。平成17(2005)年7月に観覧車の役目は終わったが、幸いにも保存されることになり、現存する屋上観覧車で最も古く、「造形の規範となっているもの」として、平成19(2007)年7月に国の登録有形文化財に登録された。
 毎週日曜日と祭日の12時と3時の15分前になると、デパート店内に屋上観覧車の運転を告げるアナウンスが流れる。安全面から人は乗せられないが、オリエンタルビル株式会社屋上遊園担当の後藤勝彦さんのスイッチオンで、2周(1周3 分半)機械保全のために動かされている。
所在地:名古屋市中区榮3-5-1
鉄骨造、高さ12m、脚間6.2m
製 造:昭和鉄工(東京都北区)
昭和31(1956)年建造
登録番号:23-0233
登録有形文化財 カトリック主税町(ちからまち)教会  森口雅文|
伊藤建築設計事務所


所在地:名古屋市東区主税町3-33
問合せ:布池文化センター 
     TEL 052-935-6113
交通機関:名古屋市営地下鉄桜通線「高岳」駅下車、徒歩10分・名城線「市役所」駅下車、徒歩15分 名古屋市営バス「清水口」下車、徒歩5分
開  館:毎週日曜日(午前中)
登録番号:23-0334 ~0336
     (2011年7月25日)
信者会館 司祭館  煉瓦塀とケヤキ 
■紹介者コメント
 この教会は、名古屋市町並み保存地区の白壁・主税・橦木地区にあり、今の場所に「カトリック主税町教会」が置かれたのは、明治6(1873)年に禁教令が解かれた後の、明治20(1887)年で、名古屋・岐阜地方でカトリックの伝道を始めるためにパリ外国宣教会のフランス人宣教師・テュルパン神父が来名し、現在地を医師・井上秀斎の名義で購入してその士族屋敷を仮教会に転用したのが始まりとされている。
 戦災で焼失を免れたこともあり、平成4(1992)年に聖堂・司祭館が名古屋市都市景観重要建築物に指定、敷地内のケヤキは平成8(1996)年に名古屋市都市景観重要建築物等(都市景観保存樹)に指定、平成23(2011)年に信者会館、司祭館と煉瓦塀が国の登録有形文化財に登録された。
 信者会館(旧司祭館)は明治23(1890)年ごろ、教会施設の建設整備期に宿泊施設として建設された。木造2階建て、寄棟造り桟瓦葺き、外壁は下見板張り。昭和55(1980)年国道41号(空港線)拡幅工事のとき西側の1梁間(2間)が除去され、寄棟造りの一部が切妻になっている。理由は不詳であるが、部分的にでも残された決断は評価したい。
 煉瓦塀は信者会館建設時に建設されたようであるが、延長約30mが現存している。
 司祭館は昭和5(1930)年に信者会館に隣接して外人専用の住居として建設された。設計はマックス・ヒンデル、施工は大工岩永伊勢松。木造地下1階、地上2階の寄棟造り桟瓦葺きで外壁は下見板張り、ベイウインドウが特徴。両棟とも昭和60(1985)年に瓦を葺き替えている。窓が木製から金属製に取り替えられている以外、内外の保存状態は良好である。41号沿いの信者館の外壁に残されたダミーの窓の木製両開きの鎧戸が、往時の窓周りの雰囲気を残している。