保存情報 第133回 | |||
登録有形文化財 | 知多岡田簡易郵便局(旧岡田郵便局) | 森口雅文|伊藤建築設計事務所 | |
岡田の街並み | 知多岡田簡易郵便局 | 鬼瓦 | |
■紹介者コメント こんな身近に明治の街が生かされていた。今年登録有形文化財に登録された「知多岡田簡易郵便局」を訪ねた第一印象である。愛知県知多市岡田は、江戸時代から昭和30年代頃まで知多木綿の産地として栄えた町で、緩やかな曲線を描いた坂道の両側に断続的ではあるが土蔵や板塀が建ち並び、昔のままで私たちを迎えてくれる。その中心となるのが明治時代の洋館風の知多岡田簡易郵便局である。隣接して木綿蔵ちた、なまこ壁の蔵や、その他土蔵など約90棟が散在する。 岡田郵便局は、1899(明治32)年に横須賀郵便会所の集配区の郵便受取所として民家で始まり、1901(明治34)年岡田郵便局と改称、現在の局舎は1902(明治35)年に現在地に新築され、築110年となる。現役の局舎では愛知県内で最古と言われている。1955(昭和30)年に知多郵便局と改称、1966(昭和41)年に他所(向田)へ移転され、一度はその役目を終えて閉鎖されたが、1993(平成5)年に知多岡田簡易郵便局として復活した。現在1階は、半分が簡易郵便局で、残りを観光案内所として岡田街並保存会の事務局を兼ねている。 下見板張りの木造2階建てで、一本引きの板戸の雨戸つきの窓が特徴的。旧来の円筒の赤いポストと、鬼瓦の〒のマークがその存在感を深めている。 木綿産業が盛んだった当時は、遠くから働きに来た機織の女工さんたちが故郷の家族に手紙を送ったり送金したりして賑わったその歴史を彷彿させると、この郵便局舎の所有者で岡田街並保存会理事の伊井基治氏の説明にも熱が入る。 |
所在地: 愛知県知多市岡田字中谷8 問合せ先: 岡田街並保存会 理事 伊井基治(TEL0562-55-3362) アクセス: 名古屋鉄道常滑線朝倉駅より知多バス東岡田行にて「大門前」下車 休 日: 土・日・国民の祝日・ 8月14 ~16日・12月31 ~1月3日 |
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データ発掘(お気に入りの歴史的環境調査) | 鈴木利明|日本設計 | ||
■発掘者のコメント 豊橋市の東部郊外にある鞍掛神社は、山裾の葦毛(いもう)湿原に近い、こんもりした鎮守の森に抱かれた「村社」として、私の幼少時の昔懐かしい情景を留めてくれている。 一帯は鎌倉幕府樹立直前の源頼朝上洛伝説に因む名跡が多く、「鎌倉街道」を辿る頼朝公が「駒を止め」「鞍を掛けた」のが当地区という。「駒止之櫻」は神社脇の小川沿いに今も何代目かが残り、小ぶりの石碑が立っている。 鞍掛神社の現地案内板・社伝によれば、現在地南の米山に鎮座された米山大明神(または鞍馬大明神)が、文治4年(1188年)今の地に遷された。源頼朝が上洛途上にこの地を通り、乗って来た馬の鞍を奉納して武運長久を祈願したことから「鞍掛神社」と改めたという。 幾つかの鳥居の正面の本殿は堂々の神明造りで、左に古びた倉舎、右に新しめの社務所を従える。今春、久々に境内深く訪れて驚喜したのは、こんなに身近なその倉舎に、どこか素朴な伝統工法「板倉造り」を再発見したことであった。 正倉院であまりにも有名な「校倉造り」の影に隠れて見過ごしていた伝統木造工法が近年、旧知の安藤邦廣教授の研究・実践などに先導された「板倉構法」として脚光を浴び、日本の森林保全・木造技術復権・災害復興~恒久住宅のエースの1つとなっている。この倉舎にしばし正対して、「村」の匠と民が協働でつくり上げ営々と使い継がれてきた姿に想いを馳せる…鎮守の森にいい時間が流れる。 |
所在地:豊橋市岩崎町森下77 |