保存情報 第131回
登録有形文化財 上山家住宅  山上薫|山上建築設計
主屋玄関 洋館。右手が主屋 倉庫(土蔵)
■紹介者コメント
 多治見市には、有名な虎渓山永保寺に国宝の開山堂と観音堂があるが、建造物としての登録有形文化財は、上山家住宅が唯一である。記念橋北、土岐川右岸沿いのよく手入れされた広大な敷地に建つ、主屋、洋館、北棟、東棟、倉庫、北物置、西物置の7棟が登録されている。美濃でタイルの製造が始まった大正初期に設立された佐藤化粧煉瓦工場(のちの上山製陶株式会社)の創業者佐藤貞治(のち上山と改名)が、大正末期から昭和初期にかけて建てた。佐藤は初代の多治見市長も務めた人物である。敷地北側に隣接する土地に、現在は住宅展示場、スーパーの店舗や駐車場があるが、ここは、当時はタイル工場だったとのことである。
 主屋は南面して建ち、南東端に入母屋破風屋根を持つ玄関を設け、南面に縁側、南西端に月見台を張り出す。主屋の西に接続する2階建ての洋館がひときわ目立つ存在である。西側に玄関があり(なぜかこの部分は和風)、外壁の腰は石張り、1階の壁はスクラッチタイル張り、2階はドイツ壁風の仕上げとなっている。切妻屋根は自然石スレート葺きで、逆腰折れとなっている。現当主のお話では、帝国ホテルの工事にもタイルを納めたとのこと。東棟は主屋の東に渡り廊下で接続する平屋建てで、入母屋屋根の和風建築であるが、西南端にはベイウインドー付洋室を設けてタイル張りとするなど、洋館を意識した意匠となっている。
 洋館の北方にある倉庫は2階建ての土蔵である。基礎は花崗石の三段積みで、階下を海鼠壁、階上を黒漆喰壁とし、妻面に観音扉と瓦葺の庇を付けた重厚な蔵である。
参考資料:『多治見の文化財』ほか
所在地:多治見市上山町1-1
名称、構造、建築面積、年代:
 ・主屋(木造平屋建て、瓦葺き)142㎡、大正末期
 ・洋館(木造2階建て、スレート葺き)70㎡、大正末期
 ・北棟(木造平屋建て、瓦葺き)61㎡、昭和初期
 ・東棟(木造平屋建て、瓦葺き)58㎡、大正末期
 ・倉庫(土蔵造2階建て、瓦葺き)40㎡、大正末期
 ・北物置(木造平屋建て、瓦葺き)29㎡、昭和初期
 ・西物置(木造平屋建て、瓦葺き)17㎡、大正末期
登録番号:21-0018 ~0024(2000.04.28)
データ発掘(お気に入りの歴史的環境調査) 住吉灯台  本田伸太郎|
本田建築設計事務所
 
川辺に立つ住吉灯台 灯台見上げ 整備された水門川
■発掘者のコメント
 住吉灯台は岐阜県大垣市船町にある川湊の灯台です。江戸時代、大垣城下にある船町港は、運河である水門川から揖斐川を経て、桑名宿へいたる水運の重要な港でありました。明治16(1883)年には蒸気船による定期航路も開設され、名古屋~桑名~大垣と船で結ばれていました。この船町港に、元禄年間1700年頃に写真のような、高さ約8メートル、寄棟造りの灯台が港の標識と、夜間の目印として建設されました。上部の四方には油紙障子がはめ込まれ、周りを明るく照らしていました。
 現在は大垣市により周辺の川辺も復元されながら公園として整備され、優美な姿で見る人を魅了しています。現在の灯台は、明治20(1887)年に再建されたものですが、川湊の灯台として現存する、全国的にも珍しい貴重な建造物です。

所在地:大垣市船町1‐28
建設年:元禄年間(1688年~1704年) 再建 明治20(1887)年
規  模:高さ 約8m
アクセス:JR 大垣駅より南へ徒歩20分