「我々は地域のコミュニティ・アーキテクト」〜財政縮減でもJIA の原点忘れずに〜
                            鳥居 久保 新東海支部長に聞く   
 ? 2012年度東海支部支部長、ご就任おめでとうございます。と言いますか、お疲れさまです。   
鳥居 いきなりのプレッシャーですね(苦笑)。財政再建については、2 〜3年のうちにどうしても改善していかなければならない重要課題です。新設された支部総務委員会には、信頼のおける服部滋委員長もいらっしゃいますし、水野豊秋幹事長とも連携してこの難題を解決していきたいと思います。 
地域会事業、活発に 
 ? 事業計画、特に若手の育成・会員増強についてのお考えをお聞かせください。 
鳥居  「ARCHITECT」の発行、卒業設計コンクール、設計競技の実施は従来通り行います。各事業の財政は賛助会も厳しく、スポンサーを探すのが大変ですが。
 若手の育成については、現在JIAの平均年齢が58歳です(笑)(※ちなみに鳥居さんも聞き手・神谷も58歳)。JIAも25年経ち、33歳に入会した我々が平均年齢になってしまいました。組織の若返りはJIAを長続きさせるのに必要なことです。新しい人にどのように入会していただくか。現在、会員数は4,500名を切ってしまいました。正会員を増やすのは地域会長の立場でもここ何年か努力しましたが、大変難しいことですね。
 本部が決めた新しい会員種別で「準会員」があります。学生さんとか、いまだ一級を取得してない方を対象にしたものです。その方たちは概して若い。JIAに入るステータスを感じていただき、正会員になる価値を見出していただこうと思っています。予備軍を多くし、若返ろうという考えはJIA本部の趣旨と同じです。 
 ? そのような本部の考えが、支部に当てはまると思われますか? 
鳥居 支部は4つの地域会をまとめる立場ですが、これからは支部・地域会においても規定の細部をつくることができるようになります。その中で各地域会が活動すればするほど若手や市民に理解していただけ、そのような事業・活動を通してJIAに共鳴していただける方々を増やすことによって会員増強にも繋がっていくと思います。
 東海支部所属の4つの地域会は活動が盛んですね。それぞれに独自の活動をしています。愛知では住宅研究会、保存研究会の活動や各セミナー、静岡では建築ウォッチングやコンペ、岐阜では建築塾
などを行っています。三重では例会(勉強会)を行っており、今年度は伊賀で支部大会が行われます。
 本部も提案しているように、これからのJIAは、地域会や支部が活動の主体を担っていかなければいけないので、支部としては地域会を大きくバックアップする立場にあります。地域会の事業は大賛成です。 
財政見直しの中での事業運営 
 ? 会費だけでは財政的に不足しています。愛知以外では地域会費を徴収していると思いますが、支部追加運営費に対してご意見はありますでしょうか。 
鳥居  本部の会費が45,000円。そのうちの7割を本部で使っています。残りの3割が交付金等として各支部におりて来て、そこで運営費等に当てられているのが現状です。さらに賛助会員の皆さんの会費支援によって、財政的にはかなりの部分で助けられているのも事実です。しかし、東海支部として足りているという状況ではありません。そのため、1年前、支部追加運営費の徴収は東海支部としても大きな課題でしたが、結果としては、議論の末見送った経緯がありました。
 今年度、東海支部事業の結果として100万ほどは積立金から用立てしなければなりません。本部が「今年度は活動の主体を支部・地域会に移す」といっている以上、本部財政の縮減は必須でしょう。そして圧縮した分をどう支部に回せるかです。そうして、本部−支部−地域会の全体で財政を見直していき、JIA本来の目的を見失わないような、事業運営をしていきたいと思っています。 
 ? その中で地域会の活動はどのようにしていくべきでしょうか。 
鳥居  支部の事業的な関連から言いますと、「ARCHITECT」の発行、卒業設計コンクール、設計競技を運営していくには、質を変えながら中身を濃くしていく努力と、地域との関連性を強く保っていくことをしていかなければなりません。
 この3事業はあくまでも、地域と地域会というベースがあっての事業です。その基本線を守らないと支部と地域会が離れてしまうと思っています。したがって地域というメッセージを強く発する、3事業を新たに考え直し、見直していく、という必要があります。設計競技においては、その時々で案を求める要件をつくり、地域性を大事にしていますが、コンペの内容をもっと地域に大きく振っていくことも1つの手法だと思います。
 基本的に我々は地域のコミュニティ・アーキテクトです。地元のまちづくりや建築生産にかかわりながら、環境を良くしていく、その活動がJIAの原点だと思います。 
建築家制度について 
 ? 遅々として進まない建築家資格制度については、どのようにお考えでしょう。支部として本部に対してのご意見はありますか。またJIA と建築士会の二会合意についてのご意見は。 
鳥居  本来ならば建築家資格制度は、JIAの根幹でないといけません。本部の目指す制度は、建築家の社会的地位を高め、公共発注システムを確立したいというものです。しかし過去から現在に至るまで、公共の設計発注は実績主義でした。そうではなく、若い建築家の新しい才能をプロポーザルなどで発掘し、そういった場面に建築家資格制度が必要となるよう、社会が認めた建築家資格を新たに提示するべく、本部は強力に推進していかなければならない。しかし前進していないことも事実で、実現はまだまだ先の話になりそうです。
 JIAは技術性だけではなく芸術性・職能を重視していますが、建築士会との合意に向けては、その扱いが問題になっているため停滞しているようです。作品のデザイン性、芸術性を抜きにして建築は語れないと思いますが、なかなかまとまりません。まずは資格としてどう位置付けていくのかを協議していますが、JIAとしては、世界的に「アーキテクト」と呼ばれる建築家の特性は守るべきでしょう。 
地域性を大切に 
 ? 地震・津波などの災害について、地域の防災ネットワークを構築する必要は。 
鳥居 本部では、これから先、推進しなければならないと考えています。支部としても建築家の社会貢献や、復興支援活動も合わせて行う必要があります。本部から、復興支援の事業をどのように行っているかというアンケートも来ています。 
 ? 今年度の東海支部大会についてお聞かせください。 
鳥居 コミュニティ・アーキテクト、またはグローバリズムの中での地域性を大切にしたい。UIAや全国大会とは違い、支部大会は東海地域としての視点を確認する大会です。コミュニティ・アーキテクト立場を守りつつ、今、何をすべきかを考え、確認する場だと思います。伊賀の地域性と、どのようにリンクするのか大変楽しみです。 
 ? 最後に抱負をお聞かせください。 
鳥居   事業として吉元学さんから提案があった支部建築賞を創設したいと思っています。会員の励みにもなり、地域に根ざした一般市民との交流の機会になると考えています。まだまだ難しい問題も山積していますが、建築家としてのピュアな心が我々の推進力になっていくと思います。