Jプロフェッショナルセミナー愛知 2011 -建築家実務講座-
「構造」 シーズン1 第6回

「総合的なデザインにとっての鉄骨鉄筋コンクリート構造計画と設計」

講師:山崎 暢氏(清水建設㈱)

(高嶋繁男/黒川建築事務所)
会場の様子 講演する山崎暢氏
 12月22日(木)に総合資格学院名古屋校にて開催した。参加者は27名(JIA11名、士会8名、事務所所員7名、JSCA1名)であった。
 テキストは、○今回のセミナー独自のテキスト:46頁、○JSCA構造設計実務者研修「基礎編」第Ⅵ編鉄骨鉄筋コンクリート造の設計:37頁、○独自のテキストで免震・制振構造について:21頁、耐震診断と耐震補強について:33頁を用意していただいた。
 SRC造の設計は、機会が少なく、意匠設計者にとって馴染みにくい構造種別である。講師の山崎氏もSRC構造の説明だけに絞ることは難しいとして、免震・制振構造、耐震診断と耐震補強を含めて説明をいただいた。
 初めに、SRC構造の特徴は、RC構造の芯部に鉄骨を内蔵していることである。この構造は世界的にはスタンダードではなく、日本独自の構造形式であり、外国ではS造に耐火被覆としてコンクリートを巻いた程度で、SRC造として一般化されていないとのこと(少し驚きました)。
 関東大震災でSRC造の建物の被害が極めて少なかったことから、高さ31m以下の制限があった昭和39年までは、7 ~9階建ての構造物は、ほとんどSRC造であった。現存する日本最古のSRC造は大阪城(昭和6年竣工)ということである。
 SRC造は、RC造・S造との比較で優れている一方、躯体コストが高く、施工も複雑で工期も長くなる。また、設計手法も複雑にならざるを得ない。
 SRC造採用のポイントは、大スパン構造物で、RC造では難しく、S造では剛性が小さく振動を押さえられない場合などとなる。また、柱だけがSRC造で、梁はS造の場合もある。
 最近では、鋼管内にコンクリートを充填したCFT構造の採用も多く、SRC造と区別して第4の構造形式と呼ばれることもある。SRC造は、RC造とS造の特性を加算することができるが、CFT構造は、両者の特性を相乗効果として評価できるので、超高層建物や軸力が大きい建物に採用されることが多い。
 そもそも日本独自で発展してきたSRC構造は、2000年頃までは、行政指導により、建物高さ31mを超える場合は、RC造でなく、S造またはSRC造を採用すること、20mを超え45m以下の場合でも一部採用することが求められた。
 一方、確認申請審査機関の民間開放にあたり、行政指導の拘束力がなくなるとともに、コンクリート強度、鉄の強度が格段に向上したため、SRC造の採用は少なくなった。山崎氏の話では、30代の構造設計者にはSRC造の設計ができない人が多いとのことである。
 SRC造で注意すべき点は、その構造計画は基本計画の時点で決まることであり、構造設計も基本計画の段階で進めることになる。したがって、柱芯関係図により梁の平面的な位置が確定し、RC造のように自由に
変えられない点や、S造に比べて梁貫通サイズ・位置に制約が大きいことを踏まえて階高を計画する必要がある。
 その後、免震・制振構造、耐震診断と耐震補強について説明をいただいた。山崎氏は、構造設計者がいない設計事務所の意匠設計者は、構造形式や種別に精通していると共に、耐震性能を語れるようになっていなければならない、と指摘された。
 耐震構造、制振構造、免震構造の採用は地震の大きさと耐震グレードにより検討する。共振と固有周期についての説明では、例えば、第2種地盤の固有周期:0.2 ~0.75秒、建物の固有周期、戸建て:0.2秒、10階建てビル:1秒、免震建物:3.5秒、地震の固有周期を考慮して設計に反映させること、と話された。
 免震構造は、地震波に共振しないように固有周期を伸ばす工夫をしている。(一般の方々には誤解されているが、揺れないのでなく、ゆっくりと大きく揺れるのが免震建物)制振構造は、揺れをコントロールする構造で、揺れを抑える免震構造と同様な減衰機構を組み込んだものである。
 耐震構造については、耐震診断と耐震補強方法などについて意匠設計者でも承知しておくべきことを簡潔に説明いただいた。
 日本独自の構造形式SRC造とCFT構造の特徴、相違点、意匠設計者に求められる構造の特徴を分かりやすく説明いただいた。興味深いセミナーになり、大変、感謝しております。