Jプロフェッショナルセミナー愛知 2011 -建築家実務講座-
「構造」 シーズン1 第5回

「総合的なデザインにとっての鉄骨構造計画と設計」

講師:土田崇仁氏( ㈱伊藤建築設計事務所)

(高嶋繁男/黒川建築事務所)
 11月17日(木)に総合資格学院名古屋校にて開催した。参加者は34名(JIA15名、士会10名、事務所所員8名、JSCA1名)であった。テキストは、○今回のセミナー独自のテキスト61頁、○ JSCA構造設計実務者研修「基礎編」 第V編鉄骨造の設計:87頁、○天井の地震による被害事例と耐震対策について:16頁を用意していただいた。
 JSCAの鉄骨造のテキストは、数式により充実した説明ではあるが、今回は、あらかじめアンケートで要望があった鉄骨製品検査のポイント、鉄骨工場での監理、計画段階におけるサイズの目安など、意匠設計者にとって関心の高いテーマを重点的に説明していただいた。
 鉄骨造は錆びなければ耐久性は永久であり、中性化により寿命が決まるRC造とは違うなど、鉄骨造の特徴、鋼材の種別、具体的な冷間成形方法の特徴など、意匠設計者が熟知すべき点をコンパクトに説明された。
 また、鉄骨の工場検査では、製品になってからでは見ることができない内ダイヤ部の状況を確認し、溶接不良が生じた後での修補でなく、溶接欠陥の発生を事前になくすための確認が不可欠である。したがって、鉄骨製品検査だけでなく、事前の組み立て検査の重要であることについて分かりやすく説明を受けた。
 超音波探傷試験においても、装置の調整から立会い、適正な感度であるか、試験片での確認も行う必要を促された。
 通しダイヤの段差に制約があるのは、溶接部の検査ができるかが決め手であり、施工性でなく品質管理に重要性がある。意匠設計者も鉄骨の特徴を理解し、正しい架構のイメージを持つように努めなければならない。
 具体例として、梁の外寄せとダイヤプレート、スリーブと継ぎ手位置、副資材取付で現場溶接を構造材にしない工夫、外装材などの取り付けでルーズホールで偏った位置調整(変移に追随できない)など、実務上の大事なポイントを構造的な視点から説明を受けた。
 また、天井は非構造部材ではあるが、落下などによる危険な事例が多いことから、その下地材のありようについて具体的に説明を受けた。天井ふところが1.5m以上あれば補強が必要という誤解、建築工事監理指針(H22)内説明図の斜め補強材の向きの間違いなど、まだまだ認識を改める必要があることを感じた。
 構造独自の難しい説明ではなく、数式を使わず、意匠設計者にとって大事な点を分かりやすく説明いただき、土田様には、事前の準備も含めて大変感謝いたします。
講演する土田崇仁氏 講演する土田崇仁氏
〈参加者の声〉
●今回の鉄骨構造の講座では、鉄骨構造といっても考え方によってさまざまなパターンや設計の仕方があることに改めて気付かされました。特に今回の地震で天井が落ちたことについて正しい筋交いの設置の仕方などとても勉強になりました。こういった知識の積み重ねを実務に反映していければと思います。ありがとうございました。(山崎卓史/中建設計)
●鉄骨造の設計に関することを改めて再確認させていただくと共に、設計監理者として品質管理、その向上のためにどのような点に注意すべきかを知る機会になりました。また現場でこんなときどうすればよいかという事例など、実務的な講義でもありました。鉄骨の特性や天井部材の耐震対策など今回講義いただいた内容を実務に生かしていければと思います。(奥山拓人/野口建築事務所)