保存情報 第101回
登録有形文化財 旧中山道鵜沼宿の町家 澤村喜久夫/伊藤建築設計事務所
旧旅籠「茗荷屋」梅田吉道家住宅 坂井家住宅 安田家住宅(手前)、梅田昭二家住宅
■紹介者コメント
 中山道六十九次の江戸より52番目の鵜沼宿は、慶安4年(1651)に現在の地に設置された。宿場は東西7町半余(約820m)の長さで、ほぼ中央に大安寺川が横切る。中山道分間延絵図によればこの川を境に東町と西町に分かれ、西町に本陣・問屋場・脇本陣の記載がある。両町の街道内には水路が描かれ、小さな橋が架けられている様子も分かる。
 西町では現在も旅籠遺構をはじめ、旧宿場の景観を伝える町家が軒を連ね、ほかにも菊川酒蔵の本蔵・豆蔵や二ノ宮神社拝殿など歴史的景観を形成する建物があり、いずれも登録有形文化財に登録されている。
 旧旅籠「茗荷屋」の梅田吉道家住宅は旧宿場では唯一江戸時代の建築物で、2階建・切妻造平入り、正面1階には下屋庇と出格子、2階には長押と格子窓が付けられている。東隣の坂井家は明治27年建築の2階建・寄棟造住宅で、街道に面した門と塀で囲われている。西隣の梅田昭二家住宅は明治元年建築で、切妻造平入り、正面には下屋庇を設け、2階は長押と格子窓としている。
 さらにその西側に旧旅籠「若竹屋」の安田家がある。現住宅は昭和5年に建てられ、切妻造平入り、下屋庇、出格子、長押、格子窓、鼠漆喰壁が当地域の町家の特徴をよく伝えている。
 各務原市では2006年より宿場再生事業に取組み、現在、脇本陣復元工事(2010年公開予定)が行われているほか、今後は旧街道の水路の復元も計画されるなど、歴史的環境を生かしたまちづくりが進められている。

所在地 : 岐阜県各務原市鵜沼西町
登録番号: 梅田吉道家住宅(第21-0082) 坂井住宅(第21-0086、0088) 梅田昭二家住宅(第21-0106)
       安田家住宅(第21-0110)
参考資料:各務原市ホームページ
データ発掘(お気に入りの歴史的環境調査) 名鉄 布袋駅 谷 進/タクト建築工房
布袋駅 車寄せ 布袋駅 北東外観
■発掘者のコメント
 愛知県の西北部に位置する丹羽郡は、明治の時代、現在の犬山市、江南市、岩倉市および一宮市の東部をも含み、布袋はその中心の町であった。布袋駅の北西部一帯は今でも古い街並みが残っている。明治27年(1894)設立の名古屋電気鉄道は、名古屋市内に路面電車を開通させた後郊外へ路線を拡大し、大正元年(1912)8月6日に犬山線・一宮線を竣工開通させた。布袋駅はこのときに竣工した。大正11年(1921)には現在の名古屋鉄道が営業を引き継ぎ、布袋駅はこれまで大きな改変もなく利用され続けたが、都市再生整備計画により平成22年(2010)2月6日をもってその役割を終えた。
 駅平面は南北に長く、東西3間、南北7間半。そのうちの北側3間半は待合室、南側4間は駅業務室に仕切られており、集札のための駅業務室が東西1間半、南北半間だけ待合室側に出っ張っている。待合室にはベンチが造り付けられている。天井中央の合板で覆われている部分にはシャンデリアが付いていたというが、今は外され保管されていると聞く。出入口は西側にあり、間口1間半奥行き1間の車寄せが付く。車寄せの柱にはアーチ状の下がり壁が付き、下がり壁の両脇に名古屋電気鉄道時代の社章の透かし模様が嵌め込まれている。車寄せの屋根面高さで奥行き4尺の庇が建物全周に取り付き、方杖で支えられている。コンクリート基礎に敷土台が置かれ、それに柱を立てている。屋根は入母屋瓦葺きとなっている。地元での保存活動の動きも活発であったが解決がつかず、部分保存が模索されている。

所在地:江南市布袋町西布212 建設年代:1912年(大正元年)
構造:木造平屋建て入母屋造り瓦葺き