JIA 東海支部総会 記念講演会 芦原太郎氏を迎えて

「UIA2011東京大会」とJIA の諸問題

生津康広/支部会報・愛知ブリテン委員長
 5月1日東海支部総会終了後、JIA元副会長・JOB(UIA2011東京大会日本組織委員会)財務部長の芦原太郎氏をお招きし、講演会が開催された。この講演会は、2011年秋に開催されるUIA大会を東京で行うにあたり、会員はじめ賛助会員に対し、その内容や意義を理解していただき、支援をお願いすることを目的に開催された。会場はほぼ満席となり、聴衆から発せられる熱気が充満する中、講演が行われた。
 今回、JOB財務部長、芦原太郎氏に講演を依頼したのは2011年のUIA大会に当たり、8億円という予算を賄うため、ラージファームへの費用協力と共に一般会員事務所の相応の協力を理解していただくためである。しかしながら、現段階ではUIA大会開催の意義、プログラムの内容、JOBとJIAの関係などに対する理解が会員に浸透しているとは言えず、東海支部内においても数々の疑問の声が上がっている。それらの疑問にこたえ、JIA全体にUIA大会開催への理解を得るための講演会である。
 講演内容は、前半が@UIA大会の主旨、A準備状況、B大会テーマ、Cプログラム内容、D財務状況、EUIA、JIA、JOBの関係、について。後半は「建築家とは何か」「JIAとは何か」という原点に返り、現在JIAが抱える課題に触れ、UIA大会開催がその糸口を見つけるきっかけになる旨のお話であった。
 UIA大会を東京で開催する意義は、世界的なイベントを行うことで日本の建築家に関する制度、建築家の存在意義とJIAそのものを世界に向けて示すと共に、日本の社会に対しても伝える機会とすることにある。また、大会テーマは「Design2050」。40年後の未来に視点を置き、将来、確実に拡大化する環境や高齢化などの問題を市民と共に現在から考える機会とすることを主たる目的としている。そのメインテーマの下に掲げられるサブテーマは「環境・情報・生命」とし、数々のイベントを予定し、東京中がお祭りのようになるようにしたい、との構想である。
 役員会でも投げかけられた「JOBはJIA以外の団体も参加しているのに関わらず、何故JIAだけが財務負担をしなくてはならないのか」の疑問に対しての説明は以下の通りであった。UIAは建築家の総本山であり、JIAはその日本における唯一の支部である。その立場から大会実施に当たっては財務上の責任を負っている。JOBはJIA以外の士会、事務協、学会、BCSなどの関係団体が協力して日本での大会を盛り上げるために組織されたが、財務負担については上記の立場から、他団体の負担はなしとする契約のもと組織されたとの説明である。また、財務としては総予算8億円を予定しており、登録料以外の不足分は設計事務所のほか、ゼネコン、サブコン、メーカーにお願いする予定であるが、この世界的な不況下にあってはいくら努力しても相当の困難が予想される。今年7月のUIA準備委員会において契約内容の見直しをお願いせざるを得ない厳しい状況であると説明があった。
 一連のUIA大会に関する説明のあと、日本の法整備の問題や、JIAが抱える問題について説明があった。「建築」の定義に関し、海外と日本との違いが大きく、建築が文化的歴史的資産であるという海外のとらえ方に対し、日本はそのような法的な裏づけはない、言ってみれば低レベルとも言え、特に同様な建築家の歴史を持つ韓国のほかに中国も、すでに建築基本法を確立し、日本のみが取り残されているのが現状である。来年にも遅れてわが国も基本法が成立する動きであるが、実質的効力のある関係法規が成立するにはまだ相当の議論と時間を要する。
 法人化問題について、法的に位置づけられている士会や事務協とJIAの違い、国際的な資格相互認証の必要性と建築家資格制度問題など、私見を交えて語られたが、根本的に「JIAは何を目指すのか」、会員同士の活発な議論を踏まえ、全体のコンセンサスを形づくるのが最も大切で、その結果として自ずから方向性が見えてくると説かれた。
 「日本がUIA大会をどう受け止めるかが問われる大会」であると結論付けられたが、その言葉に集約されるのは、この大会を成功裏に終えるためには現在、内外の問題を抱え模索状態のJIAに何らかの方向性が必要で、解決のきっかけとなることを期待する芦原太郎氏の思いであり、それが伝わる講演であった。