保存情報第89回
登録有形文化財 木曽川資料館(旧木曽川町会議事堂) 谷 進/タクト建築工房
木曽川資料館( 旧木曽川町会議事堂) 木曽川資料館収蔵室( 旧木曽川町役場倉庫)
■紹介者コメント
 木曽川町は明治39年、旧黒田町、玉ノ井村、里小牧村が合併し黒田町となり、4年後の明治43年、木曽川町と町名が変わり、平成17年、一宮市と合併し一宮市木曽川町となった。木曽川資料館は旧木曽川町の町会議事堂として、大正13年、役場庁舎、倉庫などとともに建てられた。昭和51年、木曽川町庁舎が新築移転となった後は、木曽川町商工会が使用することとなった。平成15年、隣接地の役場庁舎が取り壊され、跡地に商工会館が建ち、木曽川町商工会が移転し、平成16年より木曽川資料館として利用されてきた。
 町村会の議場が役場庁舎内に併設されず、単独で建てられているのは珍しいようだ。建物の南に位置する玄関には車寄せが設けられ、その屋根バルコニーの正面壁面には、今でも「町会議事堂」の文字が残されている。内部の玄関ホールを抜けて議場に入ると、柱のない2階吹き抜けの大空間が広がる。正面には演壇があり、議長席が設けられていたという。玄関ホールから2階に上がると傍聴席が据えられており、広い議場が見下ろせる。議場の北側は廊下を介して控え室、その2階は和室となっている。地方都市の木造西洋館の典型的な外観がよく残されている建物である。
 木曽川資料館の北側に建つ収蔵室は、役場倉庫として庁舎と同時に建てられた。外観は伝統的な土蔵造りだが、新しい建築構造である鉄筋コンクリート造と西洋建築の技術である小屋組トラス(木造)が使われていることに、当時の活気を感ずる。 ( 出典:一宮市木曽川資料館パンフレット)
所在地:一宮市木曽川町黒田
      字宝光寺東18-1
建設年代:1924年(大正13年)

■木曽川資料館( 旧木曽川町会議事堂)
  木造2階建て寄棟造り瓦葺き 
  登録番号23-0220
■木曽川資料館収蔵室( 旧木曽川町役場倉庫)
  鉄筋コンクリート造2階建て瓦葺き
  登録番号23-0221
データ発掘(お気に入りの歴史的環境調査) 中島邸(旧可知家住宅主屋) 谷口元/名古屋大学



所在地:中津川市飯沼字梨坪472
住宅につき非公開
中島邸全景 開け放たれた縁側
■発掘者コメント
 名古屋大学付属図書館に勤務する中島孝司氏から、「中津川市飯沼の古民家を購入し週末住宅として使って楽しんでいます。耐震が不安なので瓦を下ろして金属に葺き替えて屋根を軽くしました。湿気が多く土台が腐っており床が軋んで心配なので一度見てほしい」と要請されたのが2005年のことでした。
 現地を訪問しますと立派な邸宅で、元の持ち主は江戸時代に代々村役人を務めた家柄で、5年前の購入時に築150年とのことでした。ときどき留学生らを連れて訪問しながら、束の高さ調整、床下や土間の湿気を抜く対策、切られていた土台の復旧などをアドバイスしつつ、五右衛門風呂や広々した縁側で栗きんとん、五平餅や焼き茄子をいただいて過ごすことを、小生も楽しんでいます。
 先般同行願って見ていただいた林廣伸先輩の所見を以下に引用して記載します。感謝。
 「恵那山に連なる丘陵地に建ち、かつての名主の家にふさわしい、六間取りの大型な住宅である。主屋背後には腰を海鼠壁とする土蔵が建ち、東脇には納屋が残る。
 主屋屋根は現状では鉄板葺きであるが緩勾配で、旧形はこの地域によく見られる板葺石置屋根であろう。 内部では、土間回りに一部改造が見られるものの、全体によくその祖形を保持している。背面側筋は痕跡により、引き分けの板戸と障子戸の古式であったことが知られ、大黒柱や太い地棟(目測二尺径)は名主の家の風格を感じさせる。とりわけ、下屋の軒回りは軽快な印象を与え、周囲の環境と相俟って縁先の開放感は秀逸である」。