本部報告
二会協議再開に向け、JIA の基本スタンスを検討

本部実務委員会委員 森川 礼
 昨秋の臨時総会後、10月末から本年1月末に委員会は8回行われ、3時間を超えることの多い中で、委員の出席率は高く、真剣な討議が続けられてきました。課題は多岐にわたり、かつ相互に関係することも多く、現時点では以下のように検討されていることの一部を報告することしかできませんが、オープン化に向けて今後一層ピッチをあげた活動予定が組まれています。
■建築家資格制度の環境変化
 昨年11月28日に改正施行された建築士法は、改正の検討過程で一度は浮上した統括建築士という資格が見送られ、構造および設備の専門の一級建築士とその他の一級建築士という不可解な資格制度となりました。今後は統括建築士を位置付けた再改正を求めていくことになりますが、容易なこととは思われません。建築士会連合会は設計専攻建築士を統括設計専攻建築士と名称変更する検討を表明していますが、専攻建築士制度は表示制度として継続するもので資格制度ではないとしています。
 法改正というのは、一般的に従前の法律が正しいものとして社会状況の変化に応じて規定を追加するものです。改正を繰り返してくると法律の整合性に追われ、法律そのものの意味性や立脚点への視点がおろそかになりがちです。半世紀以上前につくられた建築基準法や建築士法もその範疇にあると言えます。
 この閉塞状況を打破し、建築関連法制度を総合的に見直す核となる「建築基本法」の制定が2003年から提起、検討されてきました。建築基本法は、国民が建築の良し悪しを理解できる理念を定めるもので、「建築物のあるべき理念を定め、それにかかわる国、地方公共団体、事業者、専門家、国民それぞれの責任を明らかにして、もって国民の健康で文化的な生活に資する」ことを目的としています。
 この法制定を求める活動は徐々に広がり、昨年9月1日に国交相が社会資本整備審議会に建築基準法を超えた品質確保の検討を諮問する背景となりました。JIAはこの法制定活動に大きくは関与してきませんでしたが、今後の対応について検討が行われています。建築基本法制定の可能性が浮上してきたことにより建築家資格制度法制化に向けた新しいルートが考えられ、これまでの建築士法への対応を中心とした制度確立の戦略が再編される可能性について検討しています。
 こうした中で10月4日に建築士会連合会は専攻建築士制度・CPD制度を2010年度中にオープン化すると発表しました。一国二制度的状況の改善を目指した2002年11月の「二会合意」のもとでの二会協議は2005年4月から中断していましたが、二制度の関係性、社会的位置付けを定める必要性が両者の制度オープン化によって高まり、2月頃に再開される見通しになりました。過去の経緯を確認するとともに士法改正や建築基本法の動向を踏まえて、この協議に臨むJIAの基本スタンスを検討しています。
■「基本方針」の具体化
 環境変化に関する検討に多くの時間が費やされ、3月の新規登録申請・更新申請の促進策の取り組みや広報整備なども進める中で、昨秋の臨時総会承認の「建築家資格制度のオープン化の基本方針」に掲げた4項目の具体化の検討は遅れ気味です。
@オープン化の範囲(申請書受理要件)
実務実績による申請における「専ら設計・監理業務を」の部分の「専ら」を定義する内容が絞られつつあります。委員会でこの記述を採用した時点では、オープン化は徐々に進めるものとし、その第1ステップとしてJIA会員外の専業者を想定していましたが、その後も兼業者も対象とすべきとの意見も届けられていました。そのため、兼業者は認定するが登録はできない(専業となった時点で登録可)という方式、形態的な独立(ゼネコン設計部が別会社となる)で認める方式などの提案もでてきましたが、「専ら」は「設計者の独立性」を意味するものとし、「実務訓練の必須履修科目10項目」の実績を申請受理要件とする方向となっています。
A審査・認定基準
現行の規則・細則を改正して整備していくことが確認されていますが、具体的な検討はこれからです。特に「芸術性」の扱いが課題となっています。また棚上げとなっていた再登録の制度整備などについても検討しています。
B運営機関
施行段階で3000名の登録を前提としてきた資格制度の単独収支は実数2000名の現状では危機的で、JIAから完全な独立は当面見通せません。かつて構想された士会との共同による機関運営は、士会が指定中央登録機関という公的なものとなったため、不可能となりました。検討課題としてシステムの簡素化、効率化などが挙げられています。
C実務訓練コースの拡充

各支部に担当委員会を新設することなどが考えられていますが、本格的な検討はこれからです。