保存情報第86回
登録有形文化財 朝明川砂防堰堤 谷村茂/アール・アンド・エス設計工房
練石積堰堤(8月16日) 練石積堰堤(9月9日)。豪雨によって一部破壊され、流出した岩がころがっている 空石積堰堤(9月9日)。水量が多いため、岩は隠れている
■紹介者コメント
 三重県菰野町を流れる朝明川は鈴鹿山脈に源を発している。この上流に朝明渓谷があり、夏季には子ども達のキャンプでにぎわっているが、上流域は、急峻な清流を受けるために多くの堰堤が作られている。その中でも4つの堰堤がそのユニークな作り方で登録有形文化財の指定を受けている。
 縄弛み形式の堰堤は、両側の山腹から張り出し、山腹の流出を防止してきた。「三重県民の森」西側にある堰堤の練石積コンクリート堰堤T-11-1は高さ約4m、長さ58mもあり、現地の説明文(菰野町教育委員会)によると、県下最大級の石堰堤であり、北伊勢地方の河川で最初の練石積堰堤である。ただ、最近の日本の亜熱帯化した影響によるのか、2008年9月3日の集中豪雨によって一部破壊されてしまった。左の2つの写真は同じ年の8月と9月のものである。
 この堰堤から100mほど上流に豪快な空石積堰堤T-11-2がある。この堰堤は高さ5m、長さ35mあり、自然の川原石を空積で大胆に積み上げている。
 これらの堰堤よりさらに5.6kmたどった最上流の猫谷堰堤を訪ねたかったのだが、集中豪雨で道路が寸断され、工事車両だけしか入ることができなかったのは残念であった。


所在地:三重県菰野町大字千草字一の瀬
建設年:練石済積堰堤 大正11年(1922)
    空石積堰堤 大正元年(1912)
データ発掘(お気に入りの歴史的環境調査) 日進の味噌蔵 神谷勇雄/設計室ユウアンドアベトウ
外景 文久3年作の樽と丹羽氏 樽で作った塀
■発掘者コメント
 国道153号線の浅田西より西に入り10分ほど歩くと黒く煙突のある建物が見えてくる。明治6年に味噌の工場として建てられた、かね久近藤商店である。
 外壁はトタン板にコールタール塗り(2年ほど前に塗り替えをした)で、西側は陽に焼けて、ひび割れがあるが、それがまたいい風合いを漂わせている。
 以前は140坪あった建物であるが、道路拡張のため現在は3分の1ほどになっている。
 この建物の持ち主は、道路拡張のときに市で保存できないかと考え、掛け合ったが話は進まず、考えた末に、現在はギャラリーとして活用し、個人で後の代に残すべく尽力されている。
 また味噌の樽は文久3年に作られたものであり、その他の多くの道具が残され、きれいに保存されている。この方のご努力に感謝し尊敬する次第です。
 また、この建物を紹介していただいたニワ設計工房、丹羽敏朗氏にお礼申し上げます。
外壁のヒビ 所在地:日進市赤池町村東183「蔵のギャラリー」
    地下鉄赤池駅より徒歩6 分