保存情報第74回 | ||
登録有形文化財 | 旧美濃町産業会館(美濃和紙あかりアート館) | 澤村喜久夫/伊藤建築設計事務所 |
外観北西面 |
二階展示室 |
町並み(加治屋町・武藤家) |
■紹介者コメント 江戸初期に、飛騨高山や古川を築造した金森長近によって築かれた美濃の町は、美濃和紙の集散地として、紙問屋や商家など「卯建」のある町家が軒を連ねて栄えていた。戦後の高度成長期以降は和紙生産の激減とともに町の活気も衰退したが、昭和60年代に入ると古い町並みを残そうという動きが起こり、1999年には国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定され、以降、町並み整備が進んだ。 その古い町並みの北に旧美濃町産業会館がある。1941年に美濃町信用購買販売利用組合によって建設された木造2階建の洋館で、組合の解散後は、農業協同組合、商工会議所、公民館、近年では紳士服店が入居していた。2004年に美濃市の所有となり、「美濃和紙あかりアート館」として整備、公開している。 建物は桁行22m、梁間11m、屋根は切妻造り・スレート葺き、外壁は下見板張りで、腰部分にはタイルを張っている。1階はショップ等で、現在も室内に残っている金庫扉が、産業会館であったことを伝えている。2階の常設展示室では、キングポストトラスによる小屋組を現し、展示作品のほのかな明かりに照らされて幻想的な展示空間となっている。 美濃町では空き家となっていた歴史的建造物をギャラリー等に整備し、まちづくり事業として「美濃和紙あかりアート展」を行なうなど、歴史的価値を持つ町並みや家屋を守りながら、町の人々の生活とこれらを融合させ、以前の美濃和紙で活況を呈した頃とはまた違った、魅力のある町に生まれ変わっている。 |
所在地 岐阜県美濃市本住町1901-3 竣 工 1941年(昭和16) 構造・規模 木造2階建、 床面積 509u 登録番号 21-0053(2005年 ) |
|
登録有形文化財 | 服部家住宅 | 才本清継/才本設計アトリエ |
主屋。左側の瓦屋根・下屋の出た部分が玄関 |
表門と土塀 |
座敷。骨太ではあるが格調の高い床の間と書院 |
■紹介者コメント 当家の記録によると、服部家の先祖は南北朝時代の南朝の遺臣で、1435年この地域に移り住んだ。そして中興の祖、服部右衛門正友が1576年(天正4)当地に居を構え、耕地を開拓し、浪人の身分で庄屋役を務めたと伝えられる。この時の住居が修復と改造を経て現在に至ったものであり、現在残る民家としては古い部類に入る。しかも、広い敷地の中に立派な表門や土塀、茶室、離れ屋敷、蔵なども一式残り往時の生活ぶりを窺い知ることができる。 庄屋としての役割は江戸時代中期からで、それ以前は士族としてこの地方の開墾や村の再興を行なったという特異な経歴を反映し、主屋は一風変わった平面型となっている。農家としての作業用土間スペースの広さは全体の比率の中では小さく、逆に畳敷きの座敷面積の比率は大きい。座敷を中心とした接客部分と土間や勝手の間などの生活部分がしっかりとゾーニングされ、さらに座敷のための専用の玄関(式台)があることが、現在残る民家としてはユニークである。また表門・土塀も服部家がこの地域の有力者であったことを物語るに足る立派な構えである。単体でなく構え全体として保存されることでこの住宅の価値を高めている。 以前、ここで小コンサートなどの催しがあるという新聞記事をよく見たが、今回初めて訪問して、今では世代も変わりそういった催しもなく、むしろ維持することに心を砕いているようだ。 *予約見学。電話0567-65-4355(弥富市歴史民俗資料館) |
所在地 愛知県弥富市荷之上町石仏419 竣 工 1576年 |