保存情報第73回
データ発掘(お気に入りの歴史的環境調査) ホーム上屋の古レール・おまけつき 北野哲明/北野建築計画工房

刻印1「JOLIET 1886Z」の刻印(Joliet Iron and Steel(米国)1886年7月製)


刻印2「SHEFFIELD JOLIGHENED STEEL 1886 P’18J」


おまけ 岡崎の市電のなごり
■発掘者コメント
 鉄道ホーム上屋に頻繁に使われている古レールのうち、名鉄新安城駅を紹介する。
 Sheffield Steelは米国にレールメーカーとして存在していた。現在はARMCOに合併し、ステンレスメーカー。Shefield Steelはスペインに食器・ベアリングメーカーとしてあるが、これ以上の追跡は私には不可能。
 刻印1は、ウェブサイト「古レールのページ」の記事による。新安城駅と刻印2は、このWebに未紹介であり、新種かも?
 1886年は、武豊線が中山道鉄道建設資材運搬用に建設された東海地方に鉄道が産声を上げた年。その後1888年に、東海道線浜松大府間が開通した。名鉄の前進、愛知馬車鉄道の開業は1894年、1896年名古屋電気鉄道と改称、笹島-県庁間で営業を始めた。新安城駅は、愛知電気鉄道の今村駅であったが、1935年、当時の名岐鉄道と合併し名古屋鉄道の駅となった。19世紀に生まれ、はるばる日本にやってきて、鉄路を支え、名鉄の手に渡り上屋の支柱に余生をかける鋼にいとおしさを覚える。
 おまけ。5本の鉄が、道の真ん中でタイヤに磨かれ鈍く光っている(写真下)。1923年から1962年まで岡崎に市電が走っていた。その架線柱のなごりである。当時の市電は、この架線柱を境に、道路からはずれ、鉄道敷にはいり、名鉄挙母線につながっていた。LRTが都市再生の救世主と目されている今、市電の復活が望まれる。この鉄たちも再登場を待っている。
参考 古レールのページ(嵐路博氏)    http://homepage1.nifty.com/arashi/
登録有形文化財 旧浜松銀行協会 相坂幸彦/相坂建築事務所

全景

エントランス
■発掘者コメント
 2004年11月当施設は静岡銀行協会から浜松市に譲渡された。これに先立ち同年8月、10月に当施設の価値再認識と今後の活用を考える市民フォーラムが開催され、闊達な議論が展開された。当施設は、地域銀行の手形交換および研修等の用途に作られたもので、以降70余年使用されてきたものであり、今後は公共施設として新たな有効活用が期待される。
 建物は外壁面にロンバルジアバンドを付けた白い壁と濃緑のスパニシュ瓦に、アーチ型の窓を取り付けた明るい外装である。さらに玄関の色彩モザイクタイル床、鏝風仕上げの漆喰壁、ステインドグラス、丸窓、階段彫刻手摺、調度家具などと車寄せ廻りの「そてつ」や「しゅろ」の植込みがスペイン風の面影を見せ、古典的な銀行を多数手掛けている作者にしては、異質な作品といえる。おそらく直前の13カ月にも及ぶ欧米旅行の成果であろう。 

エントランス扉



所在地:浜松市栄町3−1
構造・規模 RC造2階建 612u
設計 中村輿資平(1880〜1963)
施工 大林組  竣工 1930年  
問合せ先 浜松市教育委員会生涯学習推進室
アクセス JR浜松駅より西へ約1km