保存情報第64回 | ||
登録有形文化財 | 静岡市役所本館 | 小沢幸吉 |
全景 |
ドーム頂部 |
ステンドグラス |
■発掘者コメント 国の登録文化財として、静岡市の第一号となった建物。建立して85年を迎えた。平成元年(1989)に、市制百周年記念事業に合わせて耐震補強・改修が行なわれた。この建物の見所は、なんといってもドームにある。
全国的にも、市庁舎として保存再生され、活用されている例は非常に少ない。同時に、その取り組みも先駆的であった。 そうした数少ない例の中で、スパニッシュ様式で、しかも、ステンドグラスの見受けられる市庁舎ということでは、ほかに例を見ないだろう。 このステンドグラスについては、国の重文に指定されている「慶応義塾図書館」などを手掛けた、高名な小川三知が静岡市出身であったからだと推測できる。三知については、その出身地が長い間「謎」であった。その意味では、建築探偵の藤森照信東大教授のご尽力に感謝しなければならない次第。なお、三知の今後については、市の取り組みに期待したい。 建物の設計者は中村與資平。建築家・辰野金吾の愛弟子で、中村の作品は中国、朝鮮にも存在している。が、「静岡市役所本館」が彼の代表作といえるだろう。この市庁舎の前には、「豊橋公会堂」を設計している。 静岡市内中心部には、中村の「静岡県庁本館」と「静岡銀行本店」もあり、まちのランドマークになっている。静岡の街の景観を語るとき、中村與資平を抜きには語れない。 構造・規模 RC造、地上4F塔屋付 延床面積 8.661u 竣工 1934年 設計 中村與資平 施工 勝呂組 |
所在地 静岡市葵区追手町5-1 アクセス 「静岡」駅下車北へ徒歩10分 |
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遺したい故郷の文化遺産 | 静岡浅間神社 | 大石博司 |
大拝殿 東海の日光とも呼ばれている |
静岡浅間神社の総門 |
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■発掘者コメント 「おせんげんさん」の呼び名で市民に親しまれている静岡浅間神社。良質な骨材を産出することで有名な安倍川河口の、そう広くはない扇状地に岬状に突き出した、賎機山の先端東側の山麓に位置し、JR静岡駅からは北西1.6キロメートルの距離にある。 古墳が点在する丘陵と同程度の高さの山に少し登れば、登呂遺跡から弥生時代の繁栄を伺える平野が一望できる。 賎機山の緑を背景にした荘厳な神域は、平安の昔から駿河地域の総社である。江戸期になっても、神社の目の前にある駿府城の守り神として、徳川将軍家の手厚い保護を受け続け栄えた。 静岡浅間神社とは浅間神社、神部神社、大歳御祖神社の三社を主体に、他の幾つかの小社を含む、漆塗り極彩色の絢爛豪華な社殿群の総称である。昭和46年(1971)に、合計24棟が国の重要文化財に指定された。 中でも、建築家として興味を引かれるのは、浅間神社、神部神社が合祀されている、浅間造りの高さ25メートルにも及ぶ楼閣の大拝殿奥の本殿である。一見、単一棟に思われるが、基礎から柱梁壁、屋根下地までの全てが別々の建物で、接合部はエキスパンジョン状の野地板に瓦が葺かれている。地震対策とも思えず意図を探りたい。日光東照宮に見紛う門がそれぞれに設けられ、東海の日光とも呼ばれている。 神社の主祭神「木之花咲耶姫尊」は、夫の天孫の一子を炎の中で産み落としたなど、神話を繙くのも参詣の一興である。 |
所在地 静岡市葵区宮ヶ崎町地内 アクセス 静岡駅より静鉄バス10分 竣工 創立時は千古の昔の伝承で詳細は不明。1804年以降の60年間に、徳川幕府により大造営されたのが現在の社殿群。1990年代に順次、解体修理される。 構造・規模 境内の広さ45,000u。極彩色に漆で塗り上げられた木造24棟。 |