建築界全体の教育として
理事 加藤 幸治
 新年明けましておめでとうございます。新年を迎えるにあたり、会員の皆さまのご多幸を祈念いたします。また、JIA活動へのご協力に感謝を申し上げます。
 昨年9月にJIA「建築家大会2006年奈良大会」が開催され、歴史の古い都の当地で奈良公園の中の奈良県新公会堂と奈良県文化会館で主な行事が行われ、その近くで正倉院の見学も開催されていました。奈良県新公会堂の能楽ホールで大会式典があり、レセプションパーティは専用庭園にて催され、夜の素晴らしい景観の中を楽しみながら過ごせましたことが印象に残りました。当日は700名以上の参加があったそうです。東海支部より多数の方が参加していただき、皆さまには感謝申し上げます。また、年1回の全国から参加する会員の交流の場としてもよい機会ですのでぜひ、今年のJIA「建築家大会2007東京」に参加していただきたいと思います。
 2005年11月には、姉歯元建築士による耐震計算書偽装事件の発覚により、建築界そして社会にも大きな影響を与えました。法令違反、欠陥建築、談合、倫理観等の低下により建築に携わっている私たちの信頼も失われ、信頼回復にかなりの時間が必要と考えます。  私ごとですが、4月より大学の教員とJIA本部理事を同時に務めることになり、新しい生活環境となりました。そこで少し教育界についてお話をしたいと思います。
 建築教育機関、工業高校、大学、大学院等から毎年4万人を超える卒業生が社会に出ています。建築界全体の教育として、今後展望していくには、設計教育やJABEE(日本技術者教育認定機構)、国際資格化、少子高齢化等の新しい課題を持ち、また、団塊世代のベテランの引退、人材の流動による技術継承の困難にともなう若手、中堅、ベテラン向けの継続教育の重要性が課題となり、積極的に対応していかなくてはならないと思います。JABEEは、1989年に設立され、現在ワシントン協定に10カ国(アメリカ、イギリス、カナダ、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランド、香港、南アフリカ、日本、シンガポール)が加盟、4カ国(ドイツ、マレーシア、韓国、台湾)が暫定加盟しています。日本は2005年6月15日に加盟し、2002年度から大学等の高等教育機関で実施されている学部レベルの技術教育プログラムの認定業務をしています。2003年度からは経済産業省の受託事業として調査されてきており、UIA/UNESUCO準拠の建築家教育が必要であり、建築分野も大学修士課程認定システムが本年度よりこれまでの学部認定実績に基づいたJABEEが目指す大学院外部認定制度が実施されます。UIAバリデーション(国際基準)の5年制を4年制(学部)と2年制(大学院)=UIA基準の建築設計教育の水準確立を大学院JABEEに活かす方針とのことです。そして、JIAも登録建築家の役割と責任を果たしていかなくてはいけません。現在の役割について、専門家が必要でお互いに協力していくべきです。また、本年度は更新の時期となり、CPDの決められた単位を修得の上更新となり、引き続きJIA登録建築家としては、倫理観をもって唯一の建築家であることを一般の方に広めて理解してもらいたいと思います。
 登録建築家倫理規定(案)、登録建築家行動規範(案)の見直しもあり、一人ひとりが心がけてJIA登録建築家として評価されるよう努めていかなくてはならないと思います。また、今回建築士法の一部改正はJIAの思いの改善とはなってはいないが、前向きに考えていかなくてはならないかと考えます。その一つとして、構造設計一級建築士、設備設計一級建築士として、意匠系、構造系、設備系に分類されたことは、専門分野別としては賛成できるが、構造、設備が一級建築士でなければいけないことについては検討が必要かと考えます。また、統括する建築士の問題とか、同じ会員の中でも設計料の最低金額におけるダンピングで設計入札システムの問題等が本年度の課題として残っています。仙田会長のJIA週報27に記載されている中で、建築紛争が増え調停の範囲から訴訟へと多くなり、解決(結審)するまでにかなりの時間を費やしている現状です。私も裁判所に関与していますが、一つひとつ証拠を立証していかなくてはならないので大変な労力と費用がかかります。こうしたことからもJIAの皆さまも慎重に対応していただく必要があると考えます。
 最後になりますが、2011年にUIA東京大会が開催されます。この大会は1948年以来、3年に1度世界各国で開催されてきた建築会議・イベントです。UIA大会準備委員会が発足され、2011年の9月25日から10月1日の大会には一人でも多くの皆さまが参加されることを願っています。
 本年も皆さまとがんばっていきますので、何卒ご協力をよろしくお願い致します。