2005年度本部通常総会レポート                     森口 雅文/愛知地域会監査
 2005年度の通常総会は去る5月27日、定刻より6分遅れて13時36分に開始された。司会は今年の4月1日に着任した原田譲治事務局長が担当された。会場は例年通り建築家会館1階ホールだったが、違っていたのは通常総会の吊看板もなく、いかにも緊縮財政中を思わせる殺風景な総会風景だった。
 司会者から3月31日現在の正会員総数4,316名と、出席者63名、委任状による者1,643名、出席者総数1,706名が発表され、総会成立の定足数(864名)が確認された。尚、東海支部からの出席者は例年より若干多く16名を数えた。
 議事次第により、最初に小倉善明会長から「財政危機を招いた責任を感ずる。2005年度は緊縮財政とし、主要な活動は続けながら昨年度の赤字を解消する。建築家資格制度や入札に代わる設計者選定方法などは、他団体とも歩調を揃えて政治的な発言をしたい。また基本政策委員会を中心にJIAのあり方を考えたい。その上で若い人や市民へのアピールを具体化した」との挨拶があった。
 次に、司会者一任で橋本修英副会長を議長に、圓山彬雄、田島正陽の両理事を副議長とする議長団を選び、議長が與謝野久、木村年男の両会員を議事録署名人に指名して議事に移った。
第1号議案 2004年度事業報告および収支決算に関する件
 第1号議案は、柳澤璋忠専務理事の議案説明から始まった。活動報告のうち特別説明のあったのは、建築家資格制度については、特別認定のあり方として試行期間中は一級建築士の資格を持たない会員の資格認定を見送った。また実務訓練による登録建築家第1号が誕生した。委員会活動では、二つの案件について職責委員会から懲戒委員会への審査付託が理事会決定され、このうち新台東病院基本設計業務入札の件は理事会へ中園正樹会員の除名処分を答申した。表彰事業委員会では、JIA3賞(新人賞、環境建築賞、25年賞)に新たに建築選集と建築大賞を創設した。設計者選定委員会では、設計者選定法の研究を進めるとともに公共工事品質確保法について建築設計の立場から意見を具申した。都市災害部会は、新潟中越大震災の教訓を踏まえてJIAの災害対策に対する体制強化を提案、同部会を解散し災害対策委員会を設置した。
 収支決算報告のうち一般会計は、予算では正会員の入会を1,000名を目標としたが、実際の入会は405名にとどまり、その上退会者数が251名、会費未納者が251名を数え、単年度で1,330万円の赤字、次期繰越金1,000万円の赤字決算が報告された。建築家資格制度特別会計は、単年度で137万円の黒字、次期繰越金630万円を計上、財務的には順調な結果の報告があった。理事会決定どおり別会計で処理されていたが、各支部に交付された運営費の余剰や不足金処理の説明はなかった。
 次に久保清一、坪井善道の両監事を代表して坪井監事からは、通常の財務監査に加えて、とくに業務執行と予算執行についての重大な監査結果が報告された。会員増強の結果がはかばかしくなく、退会増加の理由の一つはJIAが団体としてのあり方を問われる事件を起こしたからと考える。具体的には低価格入札問題の処理が、会員や社会一般から見て、JIAとしての対応が迅速かつ明確にできなかったことが会員のJIA離れを起こした側面は否めない。また赤字決算は公益法人として適切な状態とはいえない。「次年度でその赤字を埋めるとの措置が提案されているが、本当に執行できるのか」との指摘があり、予算や業務執行の明確なビジョンと施策を立て実行されることを前提に監査報告を承認すると結ばれた。本案については質問もなく、挙手により採決の結果、賛成多数で承認された。
第2号議案 2005年度事業計画および収支予算案に関する件
 第2号議案は、小倉会長から、JIAにとっての最重要課題は緊縮財政により前年度の赤字を今年度中に解消し、健全な財務体質をつくることにあるとし、会員の特段の協力が要請された。活動のテーマは昨年掲げた「主役はあなた」「力はひとつに」「次世代のために」を継承し改めてJIAの足元を見つめる年にしたい。その上で主要活動を@次世代に向けたJIA強化活動…JIAを優れた建築家を育てる団体とする、AJIA建築家資格制度…最初の資格更新までに試行を終える、B低価格入札問題への対応…入札によらない設計者選定運動、C2011年UIA大会東京誘致実現、とする事業計画案の説明があった。
 収支予算に関しては柳澤専務理事から@会費収入の大幅減と昨年度の1,000万円の赤字を今年度内に解消する収支予算とする、A会費収入は、これまでは前年度の会費収入から想定してきたが、今年度は会員数を4,300名、入会者数300名、退会者・会費未納者数300名として想定する。会費収入1億5,000万円のうち、9,000万円を本部、6,000万円を支部運営費に当てる、B収支の状況を財務担当副会長に毎月報告し、問題点を是正しながら予算執行する、C9月に収支の状況によっては補正予算を検討する、の以上により単年度で1,300万円の黒字で、次期繰越金300万円を計上した予算案が説明された。
 会場から「昨年度の監査報告には感銘を受けた。JIAの健全性を認めることができた。会員減を小倉会長は会員の高齢化によるものとの説明があったが、坪井監事の監査意見と違っている。JIAとしての理念が問われるところである」との質問に小倉会長からは「まったくそのように理解している。老齢化だけにしたのは表現不足であった。それを理解の上で今年度の計画を立てた」との回答があった。次に、JIAでは1年生であるがRIBAの会員でもある会員から「JIAの魅力は何か。会員の質を高めなければ認められない。ただ増員しただけでは会員の質が下がるだけではないか。会費の納入にしても、RIBAでは遅れれば利息を支払わされた。会員の権利義務を明確にする必要がある。UIAの誘致がそんなに価値のあることなのか。まずはJIAを強くして健康な組織にするのが先決ではないか」との質問に小倉会長からは「数および質からいっても、まだまだ入会してほしい人は多い。これまでのJIAと、CPDや登録建築家資格制度の実施後のJIAは違う。JIAを立派な建築家を育てる場として可能性のある人の入会を望んでいる。UIAの大会誘致は9年目を迎えるが、理由は変わってきた。日本の建築事情が閉鎖的であることを考え、建築界の環境をよくするための誘致である。財政的には、誘致は国際交流基金で賄い、開催は参加費で賄うのでJIAの財政を圧迫することはない」との回答があった。古谷誠章副会長からは会員の質の向上に関して「従来、会員同士で作品は競わないという考えがあったが、3賞はあっても本賞がないという多くの会員の希望もあり、建築選集と建築大賞を創設した。会員相互の研鑽と作品の質の向上をはかるため広く応募願いたい」との回答があった。また柳澤専務理事からは「会費延滞に利息は検討していないが、納入の自覚を促す方法を考えたい」との回答があった。その後、挙手により採決、賛成多数で承認された。
第3号議案 建築家憲章改定の件
 第3号議案は、昨年度通常総会で付帯意見つきで承認した建築家憲章の改定の再提案で、本文は下記の通りであった(以下__部分が主な改定箇所)。

建築家憲章(改訂案)
建築家は、自らの業務を通じて先人が築いてきた社会的・文化的な資産を継承発展させ、地球環境をまもり安全で安心できる快適な生活と文化の形成に貢献します。
創造行為
建築家は、高度の専門技術と芸術的感性に基づく創造行為としての業務を行います。
公正中立
建築家は、自由と独立の精神を堅持し、公正中立な立場で依頼者と社会に責任を持って業務に当たります。
たゆみない研鑽
建築家はたゆみない研鑽によって自らの能力を高め役割を全うします。
(倫理の堅持)
建築家は、常に品性をもって行動し倫理を堅持します。
JIA会員は上記憲章のもとに集う建築家であり、JIAは会員の質と行動を社会に保証するものです。

基本政策委員会(委員長小倉会長)倫理WG谷村茂委員の提案説明に、会場からは「以前の案は、いったい誰に向かって呼びかけているのか分からなかった。当然、受け手に当方の意思を表示すべきであるのに、抽象的で、傲慢であった。これなら、満点ではないが90点位はつけられる。分かりやすく、また自由と独立の堅持がうたわれている」「前よりよくなった。異論はない。品性のことはガイドラインにあるのか」の問いに同委員からは「ガイドラインを今後検討して具体的に表現する」との回答があった。前文について「何のために、誰のために集まっているのかの説明が不足である」との指摘に、同委員から「委員会としてはこれで云い尽くしたと思っている」との回答があった。「JIAという表現は一般に分かり難いのではないか、日本建築家協会がよいのではないか」との意見には「JIAは発足のときからJIA(日本建築家協会)と言ってきたのでそのように表現してはどうか」との意見が出た。結局、議長からJIAとあるのを「(社)日本建築家協会(JIA)」に表現を変更してご承認願いたいとの提案に、挙手により採決、賛成多数で承認された。
第4号議案 終身正会員の件
 第4号議案は、吉田 周、飯尾健太郎、大塚一三、車戸徳蔵、税田公道、辻隆司の6名の方々を終身正会員とする提案説明の後、拍手により採決、賛成多数で承認した。
第5号議案 名誉会員の件
 第5号議案は、内田祥哉、大宇根弘司、阪田誠造、三上清一、倉森治、三島庄一、Eugene.C.Hopkins(AlA前会長)、Lee Se Hoon(KIRA前会長)、安藤忠雄の以上9名の方々を名誉会員とする提案説明の後、拍手により採決、賛成多数で承認された。
第6号議案 役員選任の件
 第6号議案は、国広ジョージ、竹内壽一、古谷誠章、山口洋一郎、西村征一郎、橋本修英、水野一郎、三好定和、國場幸房、の9名の理事と、八木利喜彌の監事1名の選任を拍手により採決、賛成多数で承認された。以上で総会議事は終了。16時15分議長団は解散した。
 引き続いて柳澤専務理事から「公益法人問題の状況について」と「懲戒規定について」の報告があった。懲戒規程については、理事会で除名処分を承認しても最終的には総会での議決が必要なため、その間に当人から退会届が提出されれば、今の定款では受理せざるを得ない。そのために、これまでも結果として懲戒規程を適用することができなかった。事の重大さを鑑み、「理事会が懲戒委員会への諮問を決定し、その答申に基く処分が確定し実行されるまでは退会届を受理しない」とする定款改定案が4月25日に東海支部から小倉会長に書面で提出されたが、この件に関しては今年度基本政策委員会で検討するとの説明があった。
 最後に、小倉会長から終身会員証を飯尾会員に、退任する役員への感謝状は兼松紘一郎理事と坪井監事にそれぞれ贈呈され、2005年度の通常総会は1鮮35分に終了した。
 今年度の通常総会はまったく平穏無事に終了した。この後で開催された懇親会での小倉会長の挨拶にも安堵感がにじみ出ていた。改めてJIA会員の危機管理意識の高さを思わせる総会であった。