プロフェッションとCPDC
全国レベルの専門医制度と 地方レベルの研修制度の二段構えで 時代の、受診者側の要請に応える
愛知県眼科医会
鈴木裕之
愛知県眼科医会副会長 
愛知県眼科医会
 当会は1931(昭和6)年8月、日本眼科医師会愛知支部として創立されたが、戦前の活動実態は不明で、1951(昭和26)年1月21日に愛知眼科医会が改めて創立され、同年6月24日、愛知県眼科医会と改称された組織が現在まで続いている。1952(昭和27)年時点で102名だった会員数も、本年1月現在784名(内開業医351名)となり、勤務医が過半数を占めている。会員は全員眼科を標榜する医師であり、日本眼科医会愛知県支部に自動的に所属する。また、大部分の会員は日本眼科学会会員でもあり、開業医の大部分は日本医師会会員でもある。したがって、生涯継続研修も日本医師会、日本眼科学会、日本眼科医会そして愛知県眼科医会の4者が独立して、また提携して行われている。それに加えて製薬メーカー主催や郡市医師会主催の講演会や勉強会、地域の有志による自主的勉強会などもあり、筆者の場合、この一年間に24回学術的集会に出席した。
 医師免許があれば、誰でも明日から眼科を標榜することは法的に可能であるが、現代の眼科学は高度の発達を遂げ、専門的知識と技能を有する眼科医か否かを受診者に開示することは、時代の要求でもある。
日本眼科学会眼科専門医制度
 そうした観点からつくられたのが日本眼科学会眼科専門医制度で、1982(昭和57)年に制定された規則の第1条には、「本制度は、眼科学の進歩に応じて、眼科医の知識と医療技術を高め、すぐれた眼科医の養成と生涯にわたる研さんを図ることにより、国民医療に貢献することを目的とする」とある。
 この制度では、1984(昭和59)年4月1日現在の眼科医は移行措置として5年間の間に100単位取得し、1989(平成元)年4月1日より移行措置として無試験で専門医として認定された。それ以降に眼科医となった医師は、大学病院など認定施設で研修、規定数以上の手術経験、学会発表2回以上、筆頭著者論文1編以上など、厳しい受験資格が要求される。膨大な筆記試験と口頭試問とで80%前後の合格率で毎年新しい専門医が誕生している。
 専門医資格更新には5年間で100単位取得が要求される。講習会出席1時間1単位、講習会講師5単位、認定専門誌掲載論文筆頭著者4単位、共著者1単位、認定出版専門書単独執筆12単位、共著4単位、学会発表4〜1単位、学会出席1日3単位。生涯教育教材、通信教育教材への解答用紙提出など2〜1単位、日本医師会生涯教育終了証2単位、などが主なものである。
 普通に勉強会、学術講習会などに出席していれば難なく単位取得可能であるが、病気療養、海外留学、妊娠出産、介護など個人的状況で困難なケースもあり、一応、救済手段が設定されているが不十分な面もある。また、今年度追加条項として、週4日32時間以上の就業の条件が加わった。某大学を退職した教授が、5年後、眼科専門医を更新できないという事態もあり得る。
 エピソードとして、九州の某国立大の主任教授に決定した新進眼科医が眼科専門医試験を受けていないことが判明し、それから受験し、「もし不合格なら」と周囲が心配したり、中部地方の某国立大眼科の医局長が受験し、初年度不合格、翌年合格したという話がある。
 日本医師会は、以前は、医師の上に医師をつくるような専門医制度には否定的な雰囲気で、麻酔科や小児科や眼科のこういった専門医制度に不快感や無視といった風潮が見受けられたが、時代の流れ、受診者側からのニーズには逆らえず、最近は容認の方向のようである。医師免許を運転免許のように更新制にすべきとか、医師の再教育の制度化などの一部世論の流れの中、日本医師会も生涯教育に取り組む姿勢を見せている。「医師会主催の講習会に出席すると何単位」というようなシステムでハードルのバーを下げ、日本医師会会員(イコール県医師会会員イコール郡市医師会会員)は全員生涯教育にいそしんでいるという雰囲気を社会に発信したい、と考えているようだ。毎年終了証を発行しているが、個人的な印象として存在感は薄いと感じる。
愛知県眼科医会の研修システム
 さて愛知県眼科医会の研修システムであるが、本会独自の資格とか、認定証といったものはない。ただし、歴史的にも本会活動の基幹であり、多大のエネルギーを注いでいる。1973(昭和48)年、会員研修定期講習会10回開催。1977(昭和52)年、3回開催。途切れることなく2005(平成17)年度には、学術研修会5回開催。A会員(開業医)当日参加費3,000円以下。1981(昭和56)年より日本眼科医会生涯教育講座名古屋再開催。途切れることなく2005(平成17)年度も、年2回吹上ホールにて開催。A会員(開業医)当日参加費20,000円。B会員(勤務医)15,000円。1982(昭和57)年より東海北陸眼科連合会生涯教育講座を毎年開催。A会員(開業医)当日参加費5,000円。
 参加費用に関して、内科や外科の世界では、勉強会は製薬メーカーが無料で開催し、食事および交通費付きも不思議ではないという話だが、眼科では、運良くスポンサーがつけば無料。原則有料が常識である。水一杯すら出ないのが常態である。
 学術研修会5回のうち4回は土曜日の午後開催で、以前は残りの1回を木曜日の午後に開催していたが、木曜日の午後休診の医師は減ってきており、土曜日午後が主流である。日曜日開催の1回は、県医師会と共催で、眼科医療器械展示会も共催のイベントである。毎回約100〜150人位参加する。
 日本眼科医会生涯教育講座名古屋再開催は、東京で開かれる生涯教育講座を名古屋、神戸、福岡で原則的に同じオーガナイザーと演者で土曜日、日曜日の2日間開かれる。眼科関連書籍の展示即売会を併催する。毎回約200〜250人位参加する。
 東海北陸眼科連合会生涯教育講座という名称の講演会も愛知県眼科医会が単独で運営しているが、岐阜・三重・静岡などの眼科医が参加しやすいよう、案内を北陸を含めて出している。毎回約100〜150人位参加する。
 問題点としては、大学の医局員や若い勤務医の参加率が悪い傾向がある。病院での待機当番や宿日直、バイト、日々のハードスケジュールで土日は疲労困ぱいなど、理由はいろいろ考えられる。対策として、愛知県眼科医会会報への研修会講習会の印象記事を各大学の医局の若手に依頼し、原稿料代わりに参加費を無料にする。5回の学術研修会のうち1回を県内4大学の眼科で持ち回りで企画し、大学人の参加意識を高める、などの工夫をしている。
アクティビティーに日々研鑽を積む
 医学全体の中でも現代の眼科学の発展は目覚ましく、学問の進歩が現場の眼科診療に直結し、診断治療は日進月歩であり、開業医も日々勉強せざるを得ない状況で、眼科医は強制されなくても研鑚を積んでいる。医学書の発行も眼科領域の本は良く売れるので出版社も積極的である。したがって、生涯研修にどうやって誘導しようか、などという悩みはあまりない。それより研修会場の確保が大変である。費用の安い愛知県医師会館が当然メインであるが、県医師会の行事が優先で、キャンセル待ちの2番、3番などというとき、講師のスケジュールとの調整に苦慮することもある。最初にも触れたように、眼科ではスポンサーなしの講習会が常識のため、毎回ホテルなどの高い会場というわけにはいかない。補助イスを入れても最大100名の愛知県医師会館地下講義室しか取れないときに、それ以上の参加者があってお断りをし、お帰りを願ったときは本当に申し訳ないと思った。
 研修内容の大部分は、眼科学の最先端がほとんどであるが、ときには一般救急医療とか、漢方とか、医療経済とか、医政とか、内科、脳外科など関連科の講演もある。生涯研修とは少しニュアンスが違うが、医療保険制度改定時の会員への説明会など、随時眼科領域に関連する事柄に関して伝達説明講習会もある。
 愛知県眼科医会は大変アクティビティーの高い組織で、日々活発な活動を展開しているが、生涯研修を担当する学術部は活動の中枢であり、学術担当理事は現職の大学眼科教授でもある(正確に言えば、学術担当理事が途中で教授に就任した)。今後もさして問題なく続けられるものと考えている。