最終回 NPOとまちづくりE
人々の思い、交流を 地道につなぐことが まちづくりとなる
加藤 純子                  松本 里美
           (NPO法人 すけっとファミリー)        (NPO法人 犬山市民活動支援センターの会
NPO法人 すけっとファミリー 地域に根ざした活動を 目指して
「すけっと茶論」誕生
 NPO法人「すけっとファミリー」は、お互い様の精神のもと、地域に根ざしたサービスを提供し、すべての人々が健やかで安心して暮せる地域社会づくりを目指しています。この理念を掲げ、1993年4月から在宅支援活動を始め、以来12年が経過しました。
 この間、在宅支援の利用者は年々増え続け、地域の活動の場は広がりました。しかし、地域に根ざすことはなかなか難しく、年に数回の交流事業だけでは効果はあまり出ておりません。このような状況で、試行錯誤しながら活動を続ける中、地域の人々が憩えるオアシスの必要性を強く感じるようになりました。
 瑞穂区の雁道商店街の空き店舗を利用して、2004年7月にスタートした「すけっと茶論」は、長年の「すけっとファミリー」の夢を実現する第一歩になりました。ここが、行き場がなく引きこもりがちな高齢者・身障者の方々にとっての社会との接点になることや、子育てのストレスが溜まっている若い母親たちの交流の場になることを期待します。
 すべての人々が安心して生活できるまちづくりのため、このようなたまり場が地域に点在する必要があると、「すけっとファミリー」は考えます。

@「すけっと茶論」での絵手紙教室の様子。2005年度のデイサービスは、介護保険の見直しに備え、介護予防の観点から、心身機能活性運動を取り入れ、レクレーションの中で楽しく、障害の改善につながる取り組みをしたいという。
デイサービスに 絵手紙教室・パソコン教室
 現在この「すけっと茶論」では、週1回デイサービスを開いています。この「すけっと茶論」に来られるのは、脳血管障害で半身不随になられた方がほとんどです。既存のデイサービスでは満足されず、ずっと自宅でテレビの番人であった方ばかりです。お仕着せではなく、自分流にゆったりと時間を過ごせる「すけっと茶論」をとても気に入っておられるようです。
 また、「すけっと茶論」のデイサービスは、利用者ご本人だけではなく、介護者も一緒に参加しているユニークなものです。ある時は、共通の悩みを持つ介護者同士の愚痴のはけ口。またある時は、介護に関する相談窓口となり、癒しの場にもなっているようです。
 デイサービス以外にも「すけっと茶論」では、教室を開く方に無料で部屋を提供しています。地域の方々に楽しみと生き甲斐につながる手がかりを提供したいと考えたからです。現在、絵手紙教室、パソコン教室が定期的に開催されています。まもなく、「さをり織り」の教室も開かれる予定です。デジタルカメラによる写真教室も計画しています。

Aあるバザーの催し。介護保険事業が導入され、その大きな流れの中で、「すけっとファミリー」の事業も増え、在宅支援事業のほか、移送事業・講演会事業・ヘルパー研修事業などを展開するようになった。
第2、第3の「すけっと茶論」を
 この「すけっと茶論」には立派な厨房があるので、これを利用して若いお母さんたちの料理教室もできないか、といろいろ計画は広がっていきます。しかしながら、第2、第3の「すけっと茶論」の場所確保は至難の技なのです。もちろん、お金があれば悩むこともないのですが、ご存知の通り、NPOは資金力がありません。いかに地域の社会資源を利用するかにかかっています。
 HPや会報に掲載したり、会う人ごとに情報提供を呼びかけてはいるのですが、それでも、なかなか場所が見つからないのが実情であります。
 まちづくりは、さまざまな人々の交流が基本です。そして、社会資源をうまく利用し、いろんな機関とのネットワークを広げ、まち全体で取り組まなければならないと考えます。元気な高齢者のいるまち。障害者に偏見のない優しいまち。子供たち、親たちが輝いているまち。これからも「すけっとファミリー」は、そんなまちづくりを目指し活動を続けます。

B昨年の11月14日、享栄高校で開催された私学オータムフェスティバルで行なった「高齢者擬似体験」の様子。身体に重りや視野の狭くなる眼鏡をつけ、身体の不自由さを実感させている
NPO法人 すけっとファミリー
●代表者 加藤純子 ●活動開始時期 1993年4月 ●会員数 120名
●活動地域 名古屋市の瑞穂区・昭和区・天白区・千種区・熱田区
●活動の趣旨 在宅での援助が必要な障害者・高齢者、社会参加を目指す女性やその家族、その他、手助けを必要とする人々に対して、住民参加と助け合い精神のもと、地域に根ざしたサービスを提供し、すべての人たちが健やかで安心して暮せる地域社会づくりを目指します。
●連絡先 〒467-0011 名古屋市瑞穂区萩山町3-44-1 
TEL 052-858-5510 FAX 052-858-5520
E-mail suketto-family@mtf.biglobe.ne.jp URL http://www.sketto.npo-jp.net
NPO法人 犬山市民活動支援センターの会 まちづくりへの思いを形にする
通称「犬山しみんていの会」
 2001年9月、犬山城が見守る古いまちなみの一角に、「犬山市市民活動支援センター」がオープン。その管理運営を担っているのが、「犬山市民活動支援センターの会」(通称「犬山しみんていの会」)である。自主管理で24時間利用可能なまちづくりの拠点として、多彩な事業を展開しながら市民活動を応援し続けている。
15の市民団体が協働した 自然とのふれあいイベント
 2004年10月16日に、「フォレストアドベンチャー・森と遊ぼう」という企画を開催した。場所は、犬山市東部に広がる里山。東海自然歩道の一部でもある森の中に、子どもたちの声が響く。その数160余名。この企画に応募してきた小学3年生から6年生までの子どもたちだ。
 高さ10m以上もある木にはしごをかけて足場を作り、あとは自分の手と足でこわごわ上る。下りてきた子どもたちは、「初めてだよ! こんなの!」などと、生まれて初めての木登り体験に興奮を隠せない。「空中遊泳」と名付けたこのプログラムが一番の人気。木や枝で巨大昆虫を作る「ジュラシックパーク」や、この森の間伐材を利用しての楽器づくり「森の木音楽際」にも、子どもたちは盛り上がっていた。
 「故郷の豊かな自然にふれ、その大切さやありがたみを感じながら、グループ活動の楽しさや仲間づくりを体験してもらおう」との主旨のもと、「しみんていの会」を核に実行委員会を組織しての事業。総計15の市民活動団体が協働した。各団体ごとに、「空中遊泳」などの個別プログラムも考案し担当したのである。 当初の募集予定の100人をはるかに超える応募があり、環境や安全面への配慮・準備が大変だった。しかし、他団体と接することで別のノウハウを学び、一団体の企画では得られない経験もできた。「コラボレーションすることの意味と醍醐味を知った」との感想も。「しみんていの会」自身も、これをきっかけに、より多くのグループ、ボランティアとのつながりを深めることができた。

@「フォレストアドベンチャー」の様子。レクレーション指導者クラブ、子育て支援のNPO、環境系サークル、地元のボーイ・ガールスカウト団、不登校児の支援団体、国際理解、オカリナ、食のグループなど、15の団体が協働した。
まちづくりは グループ育て、人づくり
 運営委員会は、毎月第2月曜日に開かれ、企画・広報両部会のメンバーが顔をそろえる。1月10日の会の主な議題は、目前に迫った「市民活動交流フォーラム」の最終確認と来年度の事業について。登録会員で初めて出席する人の、「小さな子どもを持つ親とお年寄りの居場所づくりがしたいと思い会を作ったが、場所も予算もない」との意見から、来年度の「しみんてい広房」として定期的に行う方向で話し合いが進んだ。「広房」とは、「しみんていの会」が発足以来行っている自主事業で、「しみんてい」や市内の会場で、登録団体がその分野の講座やワークショップを持ち回りで開催しているもの。
 運営委員会には、興味がある人なら誰でも参加でき企画提案が可能。活動を模索中や、単独で事業を組めない、資金がないなどのグループ・個人は、「しみんてい」の行事に参加・担当してもらうことで経験を積むこともできる。
 個人やグループの思いを形にすることが大切な支援のひとつ。「まちづくりはグループ育て、人づくりから」と、人材養成講座も手がけている。まだ関わる団体の分野が少ないなど、課題はたくさんある。しかし、「まちを自分たちの手で住みやすいものに」と主体的に活動する人々、グループの思いを、行政を絡めながらコーディネートし、さらに形にしていく「犬山しみんていの会」の試みは、確実に成果をあげている。

A野外での食づくりやインディアン、忍者になっての遊びのプログラムもあり、どの子どもたちも初めて出会った子とチームを組み、精一杯からだを使い、工夫を巡らせ、作業やゲームに夢中になった。
NPO法人 犬山市民活動支援センターの会
●代表者 武長脩行 ●活動開始時期 2001年9月1日
●会員数 正会員70名 賛助会員70名
●活動地域 尾張北部および岐阜県一部
●活動の趣旨 市民活動、ボランティア活動している団体・グループの支援と立上支援。およびボランティアとグループのマッチング支援。社会課題に対する事業実施。
●連絡先 〒484-0082 愛知県犬山市北古券甲98-1
  TEL 0568-61-7710 FAX 0568-61-8108
 E-mail center@inuyama-shimintei.com
 URL http://www.inuyama-shimintei.com

B拠点施設である犬山市市民活動支援センター。通称「しみんてい」。古民家を再生したものである。ここから、市民活動のネットワークは確実に広がりつつある