NPOとまちづくりD
活動の拠点がまちづくりの起点となる
神谷 典江             竹内 俊就
      (NPO法人 穂の国まちづくりネットワーク副代表)      (NPO法人 ゆいの会)         
NPO法人 穂の国まちづくりネットワーク 住民主役のまちづくりを目指して
「とよかわNPOセンターほっと!」発足
 ボランティア・NPO・市民活動への住民の関心は、個人の自己実現意欲の高まり、住民の多様なニーズに対する自発的な行動意欲の高まり、社会参加の希望を持つ人々の増加などにより、今後ますます活発になっていくことと考えられます。
 わが地域(愛知県豊川市)のあらゆる活動を検証してみますと、個々の活動はその団体のみの活動になりがちとなり、ネットワークが広がりを持ち充分に反映されているとは必ずしもいえない状況がありました。
 この地域には素晴らしい活動をしている意識の高い方々がいるのに、それが反映されない状況。その問題の一つとして、活動拠点がないことに私たちは気付きました。そのため1999年(平成11)、「穂の国まちづくりネットワーク」の設立当初より、行政にNPOの窓口がほしいという提案、活動の拠点となるセンターがいるのではないかという提案をずっとしてきました。また、会員が参加する種々の行政委員会でも同様の発言をしてきました。
 その結果、2001年(同13)には、豊川市役所に生活活性課というNPOを担当する課ができ、2002年(同14)8月には、われわれが現在活動の拠点としている「とよかわNPOセンター ほっと!」が立ち上がりました。
センターを拠点に利用者が自主的に活動を展開
 NPOセンターを開設した当初は、市民活動団体の方々に対してわかりやすい広報活動ができず、利用者は伸び悩みました。行政から委託金をいただき民設民営で運営していく責任も感じ、自分たちのNPOとしてのあり方を考える場面で何度も話し合いをしました。「自分たちのカラーで運営しながら、皆さんに利用しやすい拠点をつくること」「利用者、参加者の意見が入った拠点」「情報の宝箱」といったことが一番理想的なセンターであることに気付きました。利用者の気持ちや運営に対する要望、また交流を丁寧にしていくことが、市民活動の推進を目指す私たち中間支援団体の活動だと考えました。
 3年目を迎える今では、利用者の声を聴く会を月一回開催するほか、チラシを月二回発行して情報提供も行なっています。また、センター独自の活動提供、相談業務を充実するなど、活動も多岐に広がりました。その結果、今ではセンターの利用者同志で何か新たな活動ができないかと話し合いができるようになり、センターに訪れる市民も元気を享受するといった状況に少しずつ変わってきています。このように皆が連携して一つになり、センターでの活動を皆で支え合う仕組みが形成されることを、運営者として願っています。
住民主役のまちづくりを支える屋台骨として
 私たち「穂の国まちづくりネットワーク」は、もっと市民活動やボランティア活動が発展し、行政とのパートナーシップの実現によって住民主役のまちづくりがより進められていくことを目標にNPOを設立しました。今後もボランティア活動や市民活動の更なる活性化を支援し、行政とのパートナーシップを実現するコーディネーター的役目を担い、まちづくりに関わる多くの人々の出会いと楽しみを作り出していけるような活動をしていきたいと思っています。
 私たちの会のテーマである「一人一人の気持ちを集めて、みんなのまちづくりの原動力に…」を心に今後も自分が楽しめる活動を仲間と一緒に見出して生きていきたいです。
NPO法人 
穂の国まちづくりネットワーク
●代表者 笠原盛泰
●活動開始時期 1999年6月
●会員数 90名(2004年12月現在)
●活動地域 愛知県豊川市および宝飯郡(一宮町・音羽町・小坂井町・御津町)
●活動の趣旨 市民活動・ボランティア活動の更なる発展。行政とのパートナーシップの実現。以上により、住民主役のまちづくりが発展することを目標とする。
●連絡先 〒442-0068 愛知県豊川市諏訪1-30 松井ビル
TEL 0533-89-9070
FAX 0533-89-9055 
E-mail hot@athena.ocn.ne.jp
URL  http://www.toyokawa-hot.com/


オカリナの演奏で市民活動をしている仲間たち
NPO法人 ゆいの会 ともに生きる地域社会を
1.ゆいの会の原点
 ゆいの会は、1991年(平成3年)5月に「地域たすけあい ゆいの会」として設立されました。地域の課題を自分たちで考え行動しようと、最初は十数人の主婦でスタートしましたが、現在は会員数400人を超える団体に成長しました。「ゆい」とはもともと「地域で力を出し合って助け合う仕組み《結い》」という意味ですが、昔から使われていたこの言葉にちなんで団体の名としました。おかげさまで多くの方に支えられて、現代における《結い》が少しずつ広がり定着して来ていると実感しています。
2.ゆいの会の象徴「ノコギリ屋根」
 ゆいの会の活動のベースは、地域で暮らす方々の日常生活を支援する「たすけあい活動」です。ただ多くの方の印象に残るゆいの会の大きな特徴は、拠点として使用している建物とそこでの「ふれあい活動」です。ゆいの会は古い織布工場の跡を拠点として利用しています。
 知多地区はその昔、知多木綿の一大産地として全国に知られていました。しかし近年は、産業構造の変化により綿布工場も操業を続けるところは数少なくなりました。かつては「地域の風景」として馴染んでいた「ノコギリ屋根」の建物は、郷愁を誘う「思い出」に変わろうとしています。
 そんな中でゆいの会は1996年(同8)に現在の建物に出会い、拠点として使い始めました。敷地約250坪に戦後すぐに建てられた建物は、工場部分と母屋に分かれています。ゆいの会が引っ越してきた当時、大家さんの事情で1993年(同5)に操業を停止した工場跡は、とにかく古い建物でした。私たちは当初、入口から二部屋ほどだけを借りて活動の拠点としました。以後、ゆいの会の活動が広がるにつれて、使用するスペースも広がっていきました。アイデアとやりたい活動が増え、関わる仲間が増え、会が成長するとともに建物もいきいきと活気づいていきました。油とホコリだらけで手がつけられなかった空間は、ボランティアの力によってきれいに掃除され、どんどん磨かれていったのです。


これが「ゆい工房」
3.懐かしい空間での地域交流
 私たちは建物を「ゆい工房」と名付けて、いろいろな「ものづくり」をしています。地域交流の場、生きがいづくりの場として位置づけている「ふれあい活動」です。さをり織り、陶芸、絵てがみ、紙すき、パッチワーク、石鹸づくり、パソコン教室などです。そこには高齢の方も障害がある方も子どもも、それが好きな方は誰でも自由に参加しています。理解し合える仲間と心温まる時間を過ごし、ものづくりを通して個性を認め合うことで、いきいきと交流が深まり生きがいも育まれます。「ゆい工房」では、年齢の差も障害の有無も意識することなく、本当に自然に人と人とがふれ合っています。
 また「ゆい工房」はどこか懐かしい空間です。広々とした土間がある一方、母屋の床板はギシギシ鳴るし穴は開いているので、見学にきた子どもたちが興味津々で「ネズミが住んでいるの?」と尋ねます。多くの人がホッと息を抜ける場になっているのです。建物もきっと喜んでいるでしょう。









いろいろな「ものづくり」が行なわれる
4.これからの広がり
 信頼し合える仲間を広げ「地域のたすけあい」をもっと深めていきたいと思います。そして私たちの活動が地域資源の継承と地域文化の伝承にもつながることを願います。
NPO法人 ゆいの会
●代表者 竹内俊就
●活動開始時期 1991年5月
●会員数 422名(2004年10月31日現在)
●活動地域 愛知県知多市および近隣
●活動の趣旨 この会は、誰もがその個性と人格を尊重される共生社会を実現するために、また、住み慣れた地域で心豊かに暮らし、困ったときにも安心して過ごせるまちづくりを進めるために、たすけあい・育ち合いの理念で福祉サービスなどを提供することによって生活文化の向上を図ることを目的としている。
●連絡先 〒478-0017 愛知県知多市新知字西屋敷21
TEL 0562-32-5906 FAX 0562-32-5984
E-mail yuinokai@ma.medids.ne.jp
URL http://www.yui.npo-jp.net


誰もがふれ合える場である