保存情報第43回
データ発掘(お気に入りの歴史的環境調査) 納屋橋 場々大刀雄/場々建築設計事務所

現在の納屋橋は1981年(昭和56)、老朽化と自動車交通の増加による拡幅のため架け替えられた。
橋の中央部が張り出した納屋橋。夜はライトアップされるル

福島正則の紋所「中貫十文字紋」

所 在 地 名古屋市中区名駅南1
構   造 S造
■ 発掘者コメント
 橋は一般的に橋の上や遠景から見ることが多いが、これを川面から橋を見上げると、意外と構造力学そのものが芸術的に見えてくる。
 名古屋の堀川に架かる納屋橋は、1610年(慶長15)に名古屋城の築城に伴って架設され、1913年(大正2)に鋼製アーチ橋に改築されたが、現在の橋と意匠がまったく同じであったとのこと。欄干についてみると、橋の真ん中部分(歩道部分)が丸いバルコニーのように、外へ張り出している。また、欄干に嵌め込まれたマークは「中貫十文字紋」であり、堀川を開いた福島正則の紋所である。その両脇には信長「木瓜」、秀吉「桐」、家康「葵」の紋所が並べられている。納屋橋は城下町、名古屋の隆盛の要因となったが、堀川開削の功をたたえて福島正則の紋が真ん中にきているとのことである。
 納屋橋は大正2年、鋼製の飾り枝のある橋に架けかえられた。同じく堀川に架かる隣の岩井橋より10年早くつくられた納屋橋は和風な意匠といえるが、全体的に装飾が抑えられており、西洋風とも言える。アーチブリッジの上に小さな飾りアーチを連続させ、飾りアーチのリブは主桁に合わせている。また、つば(フランジ)がせりだしている高欄の上に、二本の青銅製の飾燈がつけられている。
登録有形文化財 長良川水力発電所 森口雅文/伊藤建築設計事務所


背景の緑に赤レンガがよく映える

今も現役で稼働する長良川水力発電所

所 在 地 岐阜県美濃市立花字木の末
交   通 長良川鉄道「湯の洞温泉」駅より0.5km
■紹介者コメント
 長良川水力発電所は岐阜県美濃市の北北東約4kmの長良川本流沿いにあり、緑の山々に映える赤レンガは国道156号線の道標になっています。レンガ造の発電所本館、正門、外塀の3件は2000(平成12)年に、発電所構外の導水路に係わる一連の施設で上流から数えて取水口呑口上部、第一沈砂池防水壁、第二沈砂池排水路暗渠、下須原谷水路橋、湯之洞谷水路橋、日谷水路橋、余水路横断橋の7件が2001(平成13)年に登録有形文化財として登録されています。
 発電所は名古屋電灯鰍ノより建設されました。1907(明治40)年12月27日に起工、1910(明治43)年2月15日に竣工、総工事費は2,467,778円でした。当時では日本有数の大出力4200kwで、遠く名古屋方面に送電しました。この発電所の特徴は取水口にダムを設けず美並村の取水口から美濃市立花まで延長約4kmの山際を走りトンネルを開削して途中2個所の沈砂池を設け、水路橋を築いて導水し、自然の流れの落差を利用して発電していることです。運開後71年、1981(昭和56)年に水車や発電機の老朽化のため改修工事が実施されたときに発電機棟が建て替えられましたが、それ以外は当初の施設をほとんどそのまま稼動させて現在もなお出力4800kwの中部電力(株)の発電所として運転されています。
 本館には2002(平成14)年に耐震補強工事が実施されました。補強はレンガの耐力を利用して、躯体を別に造らずにレンガ壁体内に鉄筋を挿入する工法が採用されました。今後当地で100年間に起こりうる地震に耐えるように設計されているとのことです。