保存情報第42回 | ||
登録有形文化財 | 三重大学レーモンドホール | 林廣伸/蒲ム廣伸建築事務所 |
木造平屋建てのレーモンドホール |
軒の出の深い緩勾配 |
丸太を構造材として使用 |
■紹介者コメント レーモンドホールは三重大学南門脇にひっそりと建っている。現在は物置代わりに使用しているようで、活用方法も検討されているようだが、まだ具体案は固まっていないとのことである。 この建物は、当初、三重県立大学付属図書館として、津市大谷町(現在、三重県美術館所在地)に建設されたが、1969年(昭和44)大学の江戸橋移転に伴い現在地に解体移築された。その後、県立大学は三重大学に移管されたが、引き続き同大学水産学部の食堂として利用されていた。しかし、水産学部の改組や、新校舎建設によりその役割を終えた。創建時の施工は大成建設、移築時は淺沼組である。 建物は木造平屋建てで、棟を東西とする、軒の出の深い緩勾配の鉄板葺切妻造りの屋根を架けている。平面は桁行に12尺間を7スパン、梁間は15尺間を2スパンとする矩形である。外壁芯を柱列から外へ持ち出し、北面の出入口と硝子窓以外はすべて硝子戸を建てる。室内は、登梁・母屋・方杖・火打などの架構材を化粧で見せ、開放的な空間にリズムを与えている。 移築に際し、RCの厨房の増設、一部部材の取替や隔壁の撤去などの改造が加えられているが、レーモンドの丸太を構造材とした一連の建築のなかでも、自邸に続く初期の作品であり、2002年(平成14)に登録文化財となった。末永い保存活用が期待される。 所在地 三重県津市江戸橋 設 計 アントニン・レーモンド 建築年代 創建(昭和26)、移築(昭和44) 登録番号 24-0047 |
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登録有形文化財 | 近鉄宇治山田駅 | 後藤晃範/圓 空間設計工房 |
伊勢神宮の鉄道の玄関口 |
壁面にはテラコッタが多用 |
瀟洒な八角形の窓 |
■紹介者コメント 名古屋から近鉄特急で1時間20分、高架の宇治山田駅に到着、少し古典的なスチールフレームの上屋が迎えてくれます。1931年(昭和6)に旧参宮急行電鉄宇治山田駅(現・近鉄宇治山田駅)として開業しました。1階はコンコース、駅事務所、店舗、2階は改札口、団体待合室、3階はプラットホームという構成になっています。2層吹抜きになっている1階のコンコースはゆったりとした空間を形成し、また、駅前広場に向かって八角形の窓が5窓並び、柔らかい光がコンコースに差し込み、窓廻り、柱には細かなデザインが施されています。 外部は八角形の窓をキャノピーが邪魔をして見えにくいところですが、足下の柱、梁は内部のように細やかにデザインが施され外壁のクリーム色のテラコッタ、壁面頂部にスペイン瓦を起用し、一部塔屋をもった大変モダンな美しさを保つ、機能性も備えた駅舎で、「お伊勢さん」の玄関口として観光客、市民の皆さんに利用されています。 1920〜1930年代は1922年(大正11)にF・L・ライトが東京で帝国ホテルを完成させ、また、そのころは同潤会によりはじめての鉄筋コンクリートアパートが造られた時代背景を考えていくと、1923(大正12)の関東大震災、そして明治維新50年後という一つの節目を迎え、新しい風が国外から吹き込まれた時代でもあります。 なお、本建物は2001年(平成13)11月に登録有形文化財に指定されています。設計は旧蒲郡ホテル(1934年)を設計した久野節です。 参考文献:『1920年代日本展』朝日新聞発行 所 在 地 伊勢市岩淵町 構造・規模 RC造・地上3階 施工 大林組 登録番号 24-0040 |