第5回JIA25年賞の審査を振り返って    JIA25年賞東海支部審査委員会委員長 上村 貞一郎
第5回JIA25年賞の審査にあたって、静岡1点、愛知4点、三重2点の応募があり、まず支部審査委員会において書類審査を行いました。しかし、書類、写真、図面では理解できない部分もあり、すべて現地審査を実施して判断することとなり、各作品の推薦者から案内いただき審査員全員有意義に拝見することができました。
 今回から賞の対象が25年以上となり、中には対象から外れた応募作品も見られました。審査の結果、支部審査員の総意によりJIA25年大賞候補として、一般部門に「愛知県緑化センター本館」、住宅部門に「コルゲートパイプの家(川合邸)」を、JIA25年奨励賞として「上野市役所と5つの公共建築群」「東駿河湾工業用水富士川浄水場」を選びました。
 審査会の中で、25年賞の意味、意義について議論を重ね、とくに「コルゲートパイプの家」と「上野市役所と5つの公共建築群」は、その建築への愛情、将来に向けた継続性、安全性が話題の中心となり、中でも「コルゲートパイプの家」については、一般的概念の建築物なのかどうか、25年賞の大賞に適合するかが議論の中心となりました。議論の末、その存在感、生活者の愛着性が審査員の気持ちを揺さぶり、大賞審査に委ねて建築の意をもう一度問いかけてみる意義があるのではないかと25年賞の大賞候補として推挙しました。一方、公共建築物についても同様で、一般的に市民の愛着性とともに管理者の愛情が必要になるのではないでしょうか。
 さて、本部での審査会では、やはり期待に違わず「コルゲートパイプの家」が話題の中心となり、時間の大半が費やされました。審査会での一つの問いかけとして、建築家(JIA)は社会に対し富裕な建築、高度な技術をもった建築を提供することを目標とするのか。コルゲートパイプの家のような建築を評価するのか、また評価していくことは建築家の自虐的な意味があるのではないか。建築家協会として建築家として社会に応える必要があるのではないか、といった厳しい発言もありました。例えば段ボールハウスを、建築と判断するのか等が議論となり、賞の意味と意義について考えさせられ、私自身有意義な時間をいただきました。
 JIA25年賞も今回で5回目を迎えますが、前回から審査方式が変わり、まず支部で25年賞大賞候補を選び、その後本部の大賞審査員3名によって各支部推薦の候補作品を書類等の審査の上、現地審査を経て大賞を選ぶこと、大賞以外の候補作品については原則25年賞とすることになっているものの、審査委員会(各支部審査委員長)の承認が求められているのかが問題となり、今後は運営委員会を設置し、検討する必要があることになりました。
 奨励賞も支部名で表彰されるものの、25年賞の一環として本部で設置されていることであり、審査に関わりながらその制度の内容について熟知しておらず申し訳ありません。ともあれ、今回の審査の中間報告として、「愛知森林センター本館」が現地審査対象となり、9月初旬に審査が行われたことを報告いたします。
上野市役所庁舎 上野市中央公民館 白鳳公園レストハウス
上野市役所をはじめとする5つの公共建築で成る建築群
上野市役所北庁舎(旧上野総合庁舎) 上野市立西小学校体育館
東駿河湾工業用水富士川浄水場 コルゲートパイプの家(川合邸)