NPOとまちづくりB
夢のある街をつくりたい
西城 利夫             榊原 孝彦
              (NPO法人 伊勢河崎まちづくり衆理事)   (NPO法人 ソシオ成岩スポーツクラブ マネージングディレクター)
NPO法人 伊勢河崎まちづくり衆   勢田川を中核に町と町を結びつけ


河崎の町並み見学会
伝統的建物の破壊によって河崎の町並みを再確認
 NPO法人伊勢河崎まちづくり衆は、1999年(平成11)から河崎のまちづくりを目的として活動を続けている。定款には、「歴史ある伊勢河崎の町を愛する人々と共に、伊勢河崎に関する事業を行い、歴史と文化を活かしたまちづくりに寄与することを目的とする」とある。
 河崎は中世からの歴史がある問屋街として知られ、とくに江戸時代では伊勢参宮に訪れた人々の衣・食・住をまかなったところから「伊勢の台所」と呼ばれ親しまれてきた。
 河崎の大きな変化は、1974年(昭和49)7月7日に伊勢市を襲った七夕豪雨と呼ばれる災害を契機としている。
 伊勢を水害から守る目的から、勢田川の改修工事計画が発表されたのは1976年(昭和51)であり、1984年(昭和59)には工事が着工されるに至った。河崎の町並みが歴史的文化的に価値を見出されるのは、皮肉にも伝統的な建物の破壊からであった。
 河崎に住む人を中心に1979年(昭和54)から活動を始めた「伊勢河崎の歴史と文化を育てる会」は、工事の反対運動から保存運動へと移行していった。
 1999年(平成11)の伊勢河崎まちづくり衆の結成によって、今まで河崎で活動してきた河崎のまちづくり団体の力が集約されるように成り、2002年(平成14)8月25日にはまちづくりの拠点施設として伊勢河崎商人館の開館、そして翌年7月には河崎川の駅が完成した。


魅力的なまちづくりをするために、会議は真剣そのもの
公共施設の管理から文化事業まで幅広く事業を展開
 ここで現在の伊勢河崎まちづくり衆の事業について述べる。まず伊勢河崎商人館の管理運営事業があり、伊勢市からの管理運営委託を受けて、行政との協働事業の一貫として行われている。公共の施設を、税金を使用しないで民間が責任を持って運営する全国でもあまりない方式である。人件費等の支出を考えると、将来的にはもう少し協働を進める必要がある。
 事業の中核となる「伊勢河崎のまちづくり事業」では、『河崎商人市』や『蔵くら寄席』を行っている。新しい事業としては、『空家・空蔵活用事業』があり、今は使われていない町家や蔵を、店やギャラリーに使っていただく仲人事業や町家の体験宿泊事業も行なっていく。情報発信事業では、毎月1回発行している『河崎かわら版』やホームページを開設している。また現在まで河崎を記録してきた映像や写真の『映像記録アーカイブ化』事業を行っている。勢田川活用においては、勢田川クルージングや『勢田川夕涼み』が行われ、研修事業としては、まちづくりフォーラム『新蔵くら談義V』が8月22日に行われる。
 まちづくりに関する受託事業では、『木造船建造・技術伝承事業』が進められている。
 河崎のまちづくりを支援する活動に対する協力では、『天王祭奉祝イベント』・『伊勢春慶の会』・『NPO伊勢「海の駅・川の駅」運営会議』等がある。
NPO法人伊勢河崎まちづくり衆
●代表者 富田延男理事長
●活動開始時期 1999年11月
●会員数 151名
●活動地域 伊勢市河崎
●活動の趣旨 河崎のまちづくり
● 連絡先 〒516-0009 
 三重県伊勢市河崎2-25-32 
 TEL・FAX 0596-22-4810 
 E-mail:machisyu@e-net.or.jp 
URL http://www.e-net.or.jp/user/machishu
河崎全住民の総意を反映したまちづくりへ
 河崎のまちづくりは今、新たな出発点に立っている。今までは一つの民間団体が行って来たまちづくりであったが、これからは伝統家屋の保存や活用、広くは道や空間を含めた町全体についてのハード整備を前提とした絵を描く時にきているのである。河崎に住む全住民の方々の理解と熱意がなければ、これからのまちづくりは不可能であり、住む人と訪れる人がお互いに満足いくまちづくりを目標とする限りは、避けては通れない。かつて河崎の中心的な機能を担ってきた勢田川を、生かしたまちづくりの動きも見え始め、川を中核にした町と町を繋ぐまちづくりも少しずつ実現化されてきている。
NPO法人 ソシオ成岩スポーツクラブ スポーツを通した街づくり


指導員の話に熱心に耳を傾ける子どもたち
会の原点 地域ぐるみで子どもを育成
 「近所の子どもたちの名前を何人言えますか」
 と問われたら、あなたは何人答えられるだろう。子どもたちの名前を5人と言える大人は、まずいまい。
 地域の教育力の必要性を声高に叫びながら、われわれ一人ひとりの大人がそれを自分たちの問題として受け止めているかというと、はなはだ心もとないのが実情ではないろうか。
 1994年(平成6)、スポーツを通して子どもたちを地域ぐるみで育てようと立ち上げたのが、ソシオ成岩(ならわ)スポーツクラブの原点である。
 それ以来、その趣旨に賛同する方々の協力のもとに運営がなされ、2002年(平成14)12月の法人化を経て、現在ソシオと呼ぶ協賛会員約2,000人が支える経営体になったのである。


夜間の屋内テニスは最高!
クラブハウス「成岩ウィング」 地域のランドスケープ
 2003年(平成15)12月、待望のクラブハウスが完成した。愛称を「成岩ウィング」と言う。半田市が学校・地域共同利用施設として成岩中学校地内に建設したものだ。
 成岩ウィングは、屋上に天蓋付きの人工芝テニスコート3面、バスケットコート2面の室内アリーナ等を併設した約5,000uの施設である。その他に、シャワー、ジャクジー、サロンやカフェ等の機能をもっている。
 この施設建設は、1996年(平成8)当時に、もともと計画されていた学校体育館の改築を、地域のクラブハウスとして活用できる機能をもったものにすべきだという地元からの強い要望によって実現したものである。そうした経緯もあって、当該施設の管理運営を当法人が受託し、クラブハウスとして経営にあたることになったのである。いわゆる利用料金制による公設民営のスキームである。こうした運営の手法は、先の自治法の改正によって認められた指定管理者制度として今後広がっていくものと考えられる。
 天蓋が人工芝の緑に美しく染まるこの特徴あるクラブハウスは、これから地域のランドスケープとなり、地域の求心力を高めていくのに貴重な役割を果たすことだろうと思う。
NPO法人ソシオ成岩スポーツクラブ
●代表者 林義久理事長
●活動開始時期 1996年3月
●会員数 18人
●活動拠点 半田市及びその周辺
●活動の趣旨 スポーツをはじめとした生涯学習を推奨し、地域の教育向上を図る。
●連絡先 〒475-0922
  愛知県半田市昭和町3-8
  TEL・FAX 0569-26-7771
  E-mail:narawa@themis.ocn.ne.jp
  URL www.narawa-sportsclub.gr.jp
「する」+「観る」「支える」 事業の多角化と対象年齢層を拡大
 クラブハウス「成岩ウィング」の完成を機に、事業の多角化を図った。まず、小中学生を対象としたこれまでの活動を成岩スポーツクラブ運営事業として一事業部門とし、新たにウィングプロジェクト事業を立ち上げた。
 ここでは、中高齢者を対象とした健康づくりなどのプログラムの提供や、自然体験ツアーなどの季節のイベント、競技性を重視したトレーニング環境の提供などを行っている。そして、それらの拠点となるクラブハウスの経営ももちろん主要事業の一つである。
 クラブハウスができたことによって、人々が出会う場面が広がる。スポーツを「する」側面だけからではなく、「観る」側面や、「支える」側面からの出会いが、ここで可能となるのである。
「成岩ウィング」を拠点に  夢のある街に
 ソシオの広がりが、われわれの目指す街づくりの指標である。クラブハウスを有効に活用し、ハードとしてのランドスケープというだけでなく、そこで展開する事業が、地域の人々を結ぶソフトとしてのランドスケープになるようにしていきたい。そのために、子育て支援としての子どもたちの居場所づくり、また地域通貨の導入などを現在検討しているところである。
 夢ははるかだが、「夢のある街にしか、夢のある子どもたちは育たない」。
 われわれは、そう信じている。