プロフェッションとCPD@
連載をはじめるにあたって
JlAでは建築家資格制度に先行して2002年からCPD(継続職能研修)を進めてまいりました。CPD単位取得は会員の義務として位置付けられ、年々取得率は向上していますが、全会員の理解と取得を得るにはまだまだ時間を要するようです。そこで継続研修制度を導入されている他のプロフェッション(弁護士、弁理士、医師、公認会計士、税理士、司法書士等)にご登場願い、制度を導入した経緯や意義、また課題や展望について意見を拝聴し、CPDについて今一度検証したいと思います。
倫理研修は義務単位制なくとも受講状況は良好
名古屋弁護士会
水谷博之
(田嶋・水谷法律事務所) 
日弁連と各地の弁護士会加入は必須 日弁連の倫理研修は義務
 当会は、1893年(明治26)に設立され、愛知県内に事務所を置く弁護士から構成される団体です。当会には西三河支部・豊橋支部(本年9月1日から「東三河支部」に名称変更します)、一宮支部・半田支部が属し、本会・支部合わせた会員数は、本年7月31日現在で937名です。当会の上部組織は、全国52の弁護士会と弁護士・外国法事務弁護士などで構成される日本弁護士連合会(日弁連)があり、弁護士は、各地の弁護士会に入会す名と同時に日弁連にも登録しなければなりません。
 当会における弁護士に対する研修には、大別すると、参加が義務づけられている弁護士倫理研修(弁倫研修)とそれ以外の法律実務研修があります。
@弁護士倫理研修
 弁護士は、基本的人権の擁護と社会的正義の実現を使命としており、その使命にふさわしい倫理を自覚し、自らの行動を規律する社会的責任を負っています。このため、日弁連では、1990年(平成2)3月の総会で会則として「弁護士倫理」を制定していますが、弁護士活動分野の拡大・多様化・国際化、企業・行政庁等の組織による弁護士の雇用の増加等の状況に鑑み、弁護士倫理規定の国際的動向をも踏まえ、弁護士の職務の質をさらに向上させ国民の弁護士に対する信頼を強固にするため、2001(平成13)年度から「弁護士倫理」の見直し作業を進めており、本年11月には新たな弁護士倫理規定である「弁護士職務基本規定」が制定される予定です。
 それはともかく、日弁連は、会員の綱紀を維持し、倫理の保持を目的とし、1997年(平成9)5月に「倫理研修規程」「倫理研修規則」を制定し、1998年(平成10)4月から、日弁連会員が新規登録した年度と登録後5年、10年、20年、30年ごとの年度において、日弁連が実施または弁護士会または弁護士会連合会に委託して実施する倫理研修に参加することを義務化し、研修を終了した会員に対し、倫理研修ごとに研修終了書を交付することにしています。
独自の倫理研修を実施  5年に1度の参加義務
 他方、当会においては、これに先立ち、1994年(平成6)3月に「名古屋弁護士会弁護士倫理研修運営規則」を制定し、独自に倫理研修を実施してきました。当会で実施している倫理研修は、会員が原則として5年に1度参加することになっており、これは日弁連規則の定める参加基準を上回る内容となっているので、当会では、引き続きこの内容で倫理研修を実施することとしています。また、日弁連が倫理研修を義務化したことに伴い、当会においても総会決議により義務化し、当会が実施している倫理研修に参加すれば、日弁連の要求する倫理研修参加義務を履行したとみなされています。
 現在、当会が実施している倫理研修は次のとおりです。
@新入会員弁護士倫理研修
 入会1年目の会員を対象に毎年10月に実施するもの。なお、新入会員に対しては、倫理研修のほかに、会務説明や中堅若手会員との座談会等も併せて行っています。当会への新入会員数は年々増加しており、昨年の研修参加者は45名でした。
A5年目弁護士倫理研修
 入会後5年を経過した会員を対象に、毎年3月に実施するもの。本年3月に実施した研修参加者は27名でした。
B一般弁護士倫理研修
 入会後10年を経過した会員を対象に、5年に1度ずつ参加するもので、毎年秋に実施するもの。現在は、対象会員を研修所の修習期で5分しており、本年は150名弱の会員が参加対象となっています。
 以上のように倫理研修への参加は会員の義務どされていますので、対象となった会員がやむを得ない事由により参加できなかったときは、翌年度に参加しなければなりません。
社会と時代に応じた研鑽 年聞を通して実務研修を実施
 弁護士が社会及び時代の要請に的確に対応した法的サービスを提供するためには、研鑽を積むことが不可欠です。またそれと同時に、組織として弁護士の研鑽のための機会を設け、会員の利便を図ることも大切なことです。
 このため、当会では、年間を通じて実務研修を実施しています。実務研修には、現在のところ、当会の研修委員会が企画実施する運続講座、スポット講座等の実務研修と、他の委員会と共催で実施する実務研修などがあります。実施する実務研修の広報については全会員に案内のチラシを配布するほか当会の会員向けホームページにアップする方法によっています。
 本年度予定している主な実務研修は次のとおりです。
・9/28 交通事故・後遺障害について (研修委員会)
・10/5 改正行政事件訴訟法(司法制 度調査委員会)
・10/12不動産競売手続(業務対策委員会)
・10/19個人情報保護法(情報問題対 策特別委員会)
・11/2特許権
 @出願・登録(11/2)
 A不服・審決取消(11/9)
 B侵害論(11/17・24)
 C損害論・その他(11/30)(研修委 員会・司法制度調査委員会)
・12/7改正商法(司法制度調査委員会)
・12/14改正破産法(倒産法改正問題委員会)
・1/24特定商取引(消費者問題対策特別委員会)
・2/8成年後見(アイズ)
・2/22相続(研修委員会)
・3/4・5 破産・民事再生(初級者対象)/倒産法改正問題特別委員会
 以上のほかに、日弁連・中部弁護士連合会(中弁連)の共催による研修として次のものがあります。
@夏期研修
 中弁連管内の6県持ち回りで開催場所を決め、毎年8月に開催されます。本年は8月10日、21日に名古屋で「新しい担保・執行法」「インターネット時代における個人、企業の防衛」「家庭内紛争を巡る諸問題」「民事保全の実務」をテーマに研修を行います。管内から約300名の会員が参加予定です。
A巡回研修
 日弁連が主催し開催場所を中弁連の東海地区3県持ち回りで概ね毎年2〜3月ころ開催されます。
B法務研究財団
 平成10年度から日弁連の外郭団体として新たに設立された財団法人日弁連法務研究財団の主催する法律実務の研修が実施されることとなりました。同研究財団は、弁護士のみならずそれ以外の一般法律実務家をも対象とする開かれた総合研修・研究機関を目指して設立され、その活動の中心的役割を果たすものとして、弁護士を中心に広く会員を募集しています。
 以上の研修の広報もチラシやホームページヘのアップによっています。
単位制はないが、受講状況は良好 今後は研修運営の集約化を検討
 以上のとおり、当会では各種の研修が行われており、他会が開催している研修と比較しても充実した研修を行っていると自負しております。
 しかし、当会においては、以上ご紹介したように各種委員会が研修を実施し、組織的・統一的に研修が実施されておらず、研修に関する情報も集約化されていない状況にあります。
 このため、研修の更なる充実を図るため、研修センターを設置し、組織的・統一的に研修を運営集約化することを検討しています。
 また、東京第2弁護士会などでは2002年(平成14)から履修単位制にして会員が継続的に研修に参加することを義務付けていますが、当会では今のところ会員の受講状況も良好のため、単位制を取り入れることまでは考えていません。しかし、司法改革の中で弁護士の数が増大し、当会の会員も近々1,000名を超えようとしており、会員数が増えれば研修に参加しない会員が増えることも大いに予想されるので、その場合には単位制の導入も考慮しなければならないと思っています。
 また、日弁運では、全国の会員が日弁連主催の研修に参加できるよう、昨年あたりからインターネットや衛星通信による研修を始めています。当会でもこれに対応できる設備等の導入を準備しているところです。
 当会としては、このように今後とも時代に即応した会員への研修体制、研修内容の充実化を図り、会員の研鑽に努めてまいります。なお、当会は、愛知県の弁護士会であることから、来年4月1日より「名古屋弁護士会」から「愛知県弁護士会」に名称変更をし、愛知県全域への司法サービスに努めていきますので、合わせてご理解下さいますようお願いたします。