理事就任にあたって                

「建築家」の黎明

                        理事 相 坂 幸 彦
 本年4月26日、全国で1,069名の登録建築家が認定された。我が国において昔から「建築家」の呼称は確たる定義も無いままに使用されてはいたものの、いまだに純粋? な「建築家」は存在していない。
 なにやら頭に○○○と冠のついた建築家であり、どうもまだ私生児の域を脱却していない。
 建築士会では、各県単位で審査にパスした全国1,704名を連合会にて、3月22日「専攻建築士」として認証している。
 我々および一般市民の視点からも早々に法的認知の「建築家」と「技師」とに区分されるべきであろう。
 このたび2004〜2005年の2年間、本部理事を務めることとなり、5月14日、26日に開かれた東海支部及び本部の総会に出席した。
 支部役員会での議論の中心となるものは何といっても会員資格、CPD、会費と支部運営問題である。会員は何故に年会費が36,000円という数字に固まったのか、その経緯の詳細を十分には把握していないが、少なくとも会員減少阻止と新入会員の勧誘には効果があるであろう。会の活動は、会費収入に見合った運営を行なえばよいのであるが、わが国の現状の中でのJIAとしては、まだまだ成さねばならぬ事項が山積しており、必然的にそのための財源は求められてくる。
 向後2年間に全国で2,000名の会員増強を目論むこととなり、この実現なくしては支部はもとより地域会ともども、本部交付金以外の収入を手当てしない限り機能不全に陥ってしまう。
 行政補完団体的な建築士会、建築士事務所協会でさえ、会員減少傾向が進行している地方都市においては、任意団体的なJIAの会勢拡大には相応の限界点が見えている。とは言え、支部、地域会の今後の運営のためには、情熱のある新会員の増強は必須条件として避けては通れない問題点である。
 本部総会では、さすがに全国の精鋭会員が集まってくるだけに、会員資格、建築家憲章、倫理規定等JIAの本質に関わる点に熱い意見が交換された。
 全国10支部の中で東海支部は、会員数においては、3番目に多い位置付(関東甲信越50%、近畿17%、東海10%)にあり、必然的に理事数も2名枠(関東甲信越8名、近畿4名、東海・九州2名、他各1名)となっている。
 本年度の理事会は5回を予定されており、主に基本政策委員会、企画運営会議等にて検討された議案が付議されることになる。今年はJIA、とくに東海支部およびその地域会にとっては、会員増強、事務局維持、登録建築家の推進、本部対応及び支部単独事業の位置付け、JIA大会及び支部大会の詳細企画等今後のさらなる発展の足がかかりをつかむ重要な年度となる。
 こうした諸問題を抱えた中で、大都市と地方都市の事務所、大型組織とアトリエ的組織の事務所が混在する設計業界により良い仕事環境が提供できるよう、理事として努力してゆくべきと考えている。
 その一端として「建築家」資格の法的確立を一つの目的に社会活動が活発に行なえるよう、まず全会員が登録建築家となること。その上で各地域において会員が、評論家あるいは会議出席のみの机上論者でいるのではなく、自ら手弁当にてJIA活動に汗をかく勇気と積極性が求められる。
 そもそも「建築家」が集まって(社)日本建築家協会が構成されるべきものであろうから、一日も早く“登録”の冠を外した公認の建築家の団体となることに力を注ぎたい。
 JIAは国内の業界団体として、一般社会の認識の上でまず名実ともに筆頭の地位を得るような活動を展開してゆくべきであり、UIA大会の東京誘致もその一つである。そのような本部情報を速やかに支部に伝達するとともに、支部会員のJIAにかける情熱と願望を本部事業に反映させてゆくことも、理事の役目の内と心得、本田伸太郎支部長・理事とともに務めてゆきたい。