保存情報第40回
データ発掘(お気に入りの歴史的環境調査) 江南市の古民家 谷村 茂/R&S設計工房

130年の歴史を持つ住まい

トタン屋根の小屋組
■発掘者コメント
 この古民家は江南市にあり、「藤」で有名な曼陀羅寺の北側に位置しています。ひょんなことから、「最近まで住んでいた古民家をリフォームして、作業所兼住居として使いたい」と電話があり、とりあえず現地を見ましょうと、しばらくしてから現場へ行きました。古民家は1891年に起きた濃尾地震にも耐え、約130年は経っているとのことでした。
 ざっと見た後、おおよそ全体はわかったものの時間が足りず、次回は事務所員総出で(と言っても5人)現地調査をすることにしました。5月1日に再調査をして、概略図面を起こしましたが、私を含め、所員全員が古民家の専門ではないため、結構大変な作業となりました。しかし、一方では面白い作業でもありました。結果、床面積は約43.5坪程度。木造平屋建て直屋の入母屋造(しころ葺き)で、下屋根の瓦はともかく、トタン張りの大屋根はかつては藁葺きだったようです。
 現在は藁葺きの屋根こそ残っていませんが、この地方では今でもあちらこちらで見られるようです。小屋梁の上部は丸太と竹で組まれた垂木構造で、葦が敷かれたかなり広い小屋裏空間は、かつてはここで蚕を飼っていたものと思われます。
 さて今後どのような形でリフォームするかは、現実には、予算の問題に大きく左右されますが、100年以上耐えてきた歴史の重みはいくつか残されている日常用品にも感じられます。構造体はさほど問題はなく、床根太、大引等の付属部品を取り替えれば済み、ある程度居住性の強化にまわせそうです。リフォームする前に、まずは依頼人本人に希望する家の在り方を徹底して整理してもらう予定でいます。
登録有形文化財 西尾市おもちゃ館(旧岩瀬文庫児童館) 北野哲明/北野建築計画工房

木立に囲まれた西尾市おもちゃ館

室内は昔の玩具が展示されている
所 在 地 愛知県西尾市亀沢町480
建 設 年 1926年(大正15年)
構造・規模 木造平屋建
交通機関 名鉄西尾線「西尾」駅下車
      北西へ徒歩20分
TEL 0563-56-2459
http://www.city.nishio.aichi.jp/kaforuda/40iwase/
■紹介者コメント
 道中の旧井桁屋百貨店は、飛散防止ネットに覆われ解体を免れていたが、中町通りは、拡幅工事の真っ最中で、重厚な商家が曳屋準備のためか、脇棟の取り壊しが行われていた。西尾の町も「近代都市」に変貌しつつあるようだ。
 市立図書館の前身岩瀬文庫は、1908年、肥料商岩瀬弥助によって開館し、1955年市立図書館岩瀬文庫として、また2003年本館、収蔵庫棟を新築リニューアルオープンした。
 同文庫は、公会堂兼用の本館、収蔵庫、児童館、猿舎、外国製の遊技場が相次いで建設されたが、収蔵庫と児童館が旧書庫、おもちゃ館として登録文化財指定を受け現存する。
 擬洋風木造の西尾市おもちゃ館は、1926年岩瀬文庫の児童館として建築され、1986年改築を行い現在の姿になっている。下見板張り、ハーフティンバー風な妻飾りは原型のままであるが、屋根瓦の形状、下見板の色彩は、大正時代の写真と異なる。外装色は再塗装で幾分落ち着きを取り戻したが、鮮やかな青色瓦に違和感を覚える。おもちゃと子どもに迎合して原色を使うことが好ましいのか疑問に思う。下見板は当初、ステイン塗だったと思う。
 二部屋の小建築だが、内部腰壁には岩瀬弥助コレクションの古瓦が埋込まれ、建築主の思い入れを感じる。