理 事 会 レ ポ ー ト  JIAは変わったか                                理事 森口 雅文
第136回理事会は去る5月26日に2004年度の通常総会の直前にJIA館で開催された。
2003年度最後の理事会で、大宇根弘司会長からの「JIAを変えよう」の呼びかけに始まった2カ年間の活動への協力に対する感謝の言葉で始まった。
今回は審議事項7件、報告事項4件で、次年度役員候補の方々もオブザーバーで同席された。
審議事項
2004年度通常総会議案の件
高野孝次郎常務理事から総会資料により説明があった。ほとんど前回の理事会で審議が終了していたのでその後修正された部分のみの説明があった。第1号議案「2003年度事業報告及び収支決算に関する件」では、公益法人として国土交通省に報告する本部と支部の連結決算が説明された。合算すると収支は440百万、毎年のことではあるが総括資料の作成に手間取るので、今後本部と支部の費目の調整をすすめる旨の説明があった。前回の理事会で細部にまで結論の出なかった第4号議案 「建築家資格制度試行に伴う正会員のCPD見直しに関する件」は、最終的に義務規定は残すことになったので、会員規則、CPD規則は変更しないで、CPD細則第10条3項の、「正会員が特段の理由なく、3年以上にわたり必要履修単位数の取得を怠った場合は、参加者としての登録を抹消される」を削除することだけを総会に諮ることになった。本来理事会決議事項ではあるが総会に諮り会員にその主旨の徹底をはかりたいとの説明があった。以上の説明の後採決、第1号議案から第8号議案までの総会上程を賛成多数で承認した。総会白紙委任状の受託者決定の件は、高野常務理事より委任状提出者1,245名(捺印のない無効38名を除く)の内訳の説明があった。受託者を大宇根会長とするもの254名、議長とするもの188名、各支部長とするもの103名、小倉善明次期会長とするもの30名、その他とするもの75名で、白紙委任は595名であった。これまでは受任者は会長としてきたとの説明の後採決、賛成多数で白紙委任状の受任者を大宇根会長で承認した。
会員規則・会費規定改正の件
高野常務理事から主要な部分は前回理事会で承認されているので、今回はそれに関わる条文の字句の修正を諮りたいとの説明があった。なおこれまで入退会の審査その他会員に関する事項の処理は会員委員会の所管であったが今後は総務委員会とする旨の変更の説明があった。この段階でも一部の理事からは未登録建築家や、非登録建築家が分かり難いとの指摘もあったが採決の結果、賛成多数で承認された。
会員情報システムプログラム開発発注の件
柳澤璋忠専務理事から2004年度通常総会で正会員の会員種別及び会費種別改定が可決された場合に、新たな会員情報システムの開発が必要になり、開発の委託先として、開発に時間の余裕がないことと、コスト面も考慮して潟Gヌ・ティ・ティ建築総合研究所を、またアドバイザーを熊澤寿人さんに委託したいとの説明の後、採決、賛成多数で承認した。
JIA大会名称変更(「建築家大会2004東京」)の件
松原忠策関東甲信越支部長から次のような説明があった。これまでの大会はどちらかと言えば会員を対象としてきたが、今回の最大のテーマは広く社会に向けた大会を目指していることにあり、したがって会員外の一般の人にも理解しやすい名称にすることが必要である。これまでの「JIA大会2004東京」を今回は「建築家大会2004東京」とするJIA大会2004東京実行委員会案が諮られた。正式名称とは別にサブタイトルとして建築家大会を謳ってはどうか。JIAもしくは建築家協会はやはり表示すべきではないか。変更案に主催建築家協会を併記しては。JIAの略称は世間に認知されている。いや認知されていない。今回の東京大会だけの名称なのか、今後はどうするのか。などの意見が出、結局今回に限ってとの条件付で @JIA大会2004東京(現行)、 AJIA 日本建築家協会 建築家大会2004東京、BJIA 建築家大会2004東京の3案が諮られ、挙手による採決の結果@0名、A10名、B8名でAの「JIA 日本建築家協会 建築家大会2004東京」に決定した。
新規入会者、退会者および休会者承認の件
10名の新規入会者を承認した。総会で会員規則・会費規定が可決されればこれらの方々は適用第1号となる。
報告事項
謝金に関するガイドライン報告(総務委員会)
高野常務理事から総務委員会に代わって説明があった。この基準は、本部、支部、地域会で企画実施される各種の講演会、セミナー等の行事の講師やパネリストの謝金の基準をJIAとして決めることによって、公平性と、収支要件を明確にしようとするものであるとの説明があった。
建設コンサルタンツ協会との協働宣言パンフレット記者発表報告
大宇根会長から次のような報告と要請があった。もともと同協会とは設計者選定に関しての協働にはじまり、今回「美しい国づくり政策大綱」の成果ある展開に向けて“「美しい国づくり」をみんなの力で 私たちはこのように行動します”と宣言して、土木と建築の専門家集団が協働して活動を展開することを発表した。同協会も全国単一の組織であり支部同志でも交流をはかり積極的な運動を展開されたい。
国土交通大臣宛て「第三者監理方式について(同方式に反対する意見書)」提出の件
大宇根会長から次のような説明があった。同省のすすめる第三者監理方式は地方の自治体にも広がり、一方当初同省の考えていた設計者の意図伝達の方法が必ずしもきちんと守られていない状況をみるにつけ、基本的に第三者監理はよい建築つくりにはなじまない方法であることをJIA単独で表明する。ついては6月25日に国土交通省の担当者、有識者を呼んでシンポジウムを開催するので支部からの参加と、同種のシンポジウムの支部での開催の要請があった。
以上で第136回理事会は予定通り2時間で終了し、引き続いて臨時理事会が開催された。
臨時理事会は、本来2004年度通常総会終了後に開催されるものであるが、総会当日の時間の都合で前もって開催し、総会終了後先決事項を確認するまで執行を停止することとして第136回理事会に引き続き2004年度役員候補者により開催された。2003年度役員はオブザーバーとして同席した。
審議事項
副会長選任の件
仙田満、横河健の2氏の副会長を選任した。
支部長選任の件
北海道支部/圓山彬雄、東北支部/若松信行、関東甲信越支部/松原忠策、東海支部/本田伸太郎、近畿支部/出江寛、中国支部/僊石友秋、四国支部/賀村智、九州支部/田島正陽、以上8支部の支部長を選任した。
専務理事選任の件
中田亨前専務理事の残任期間の任期を満了された柳澤璋忠氏の再任を承認した。
2004年度委員会・部会構成の件
2004年度本部委員会及び部会の再構成を承認した。なお本部の建築相談委員会は、すでに全支部に同委員会が設置されたので閉鎖したとの説明があった。
2004年度企画運営会議メンバー構成の件
会長の諮問機関である企画運営会議のメンバーとして、四副会長、関東甲信越支部長、東海支部長、広報委員長を選び、その役割について確認し、承認した。
退任役員への感謝状の件
退任役員への感謝状の贈呈を承認した。総会で贈呈される感謝状は、伝統的に退任される役員それぞれの任期中の活躍ぶりを評価した心のこもった感謝状が準備されていると伺っている。役員の労をねぎらう意味からもその内容は今後ぜひ公表されたいものである。
以上で臨時理事会は予定より早く終了した。(なお総会終了後臨時理事会が開催され、総会承認を踏まえて臨時理事会先決事項の一時執行停止が解除された。)
2004年度通常総会は5月26日13時30分JIA館で高野常務理事の司会で開会された。最初に本日の総会出席者98名と、委任状によるもの1,245名、合計1,343名の出席を確認、会員数4,426名の5分の1の885名以上で総会が成立したことが報告された。
最初に大宇根会長から今年度の総会は、例年の通常総会の議題の他に第2〜4号議案で、「正会員の会員種別と会費種別」「倫理規定」「正会員のCPDに関して」の三つのJIAの将来にとって大事な議題の審議を控えている。JIAの会員減少と、会員の高齢化を眼前に「JIAを変えよう」の呼びかけで出発したこの2カ年はなんだったのか。先ほどの三つの議題と密接に関わっている。一方ようやく2003年度は会員の入会者数が退会者数を上回った。今JIAは選ばれた建築家のための団体から市民とともにある団体へと脱皮しつつある。2カ年の協力と支援に感謝するとともに総会の審議をよろしくとの挨拶があった。その後議長に橋本修英副会長を、副議長に若松信行東北支部長と水野一郎北陸支部長を、議事録署名人に森岡茂夫、有田桂吉の両氏を選任し議事に入った。
第1号議案 2003年度事業報告及び収支決算に関する件
高野常務理事から議案の説明の後、拍手により採決賛成多数で承認された。この件では、昨年12月に「登録建築家」の申請受付を開始し、2003年度認定者は当初の目標1,000名を超え1,069名を数えたことと、1,750千円の赤字繰越でのスタートを3,299千円の黒字繰越での決算報告が特筆すべきことでしょう。
第2号議案 正会員の会員種別及び会費種別の改定の件
河野進副会長の議案説明の後質疑が執り行なわれた。提案そのものには基本的には了解するが、未登録建築家や非登録建築家の内容が理解しにくい。定款改正には該当しないのか。現在4,700人の会員に2,000人の会員増強を考えているが本気できちんと考えているのか。増員できないときどうするのか。急激な増員は足元が崩れることを経験している。事務所が別に負担する二階建ての方式もあるのではないか。2,000人は余りにも多すぎる、などの疑義が出された。大宇根会長と河野副会長からは、定款改定には該当しないこと、二階建ては考えていないことの回答の後、挙手により採決の結果賛成93名、反対2名で可決された。
第3号議案 倫理規定・行動規範改定の件
横河健倫理規定・職能原則委員による議案説明の後、質疑が執り行われた。何か筋があって改定するならともかく一般の会員の意識がそこまで達していないのではないか。どこが時代に合わなくなったのか説明不足であり提案の姿勢が不親切である。建築家憲章でいう建築家の定義がない。建築家憲章は建築家、倫理規定や行動規範は会員に呼びかけているが、建築家と会員との関係はどうなっているのか。行動規範の改廃も総会に諮るべきである。建築家憲章も倫理規定も言葉が不明瞭であり文章としても未熟である。建築家職能原則五項目に謳われていた第三者性が欠けている。原理原則はそう簡単に変更するものではない。改定の動機が説明されるべきである。市民のためと言っているが話が違っている。世間のこととは関わりなく自分たちの内輪の議論に安心している。建築家職能五原則にはなかった芸術性は大いに評価する。これらの疑義に対して大宇根会長からは総じて次の様な回答があった。これまでの規約も立派なものであったが実際には守られてこなかった。登録建築家を発足させるにはぜひわれわれの行動の基本を簡単で分かりやすいものにしたかった。不親切や未熟な点はお詫びする。その上で議案に「ガイドラインの補完・改変に関しては理事会における審議承認を得て」とあるのを一旦削除し(定款どおり総会決議として)一年間検討する。以上の応答の後、挙手により採決の結果、賛成89名、反対6名で可決承認された。
第4号議案 建築家資格制度試行に伴う正会員のCPD見直しに関する件
小倉副会長の議案説明の後、拍手により採決、賛成多数で承認された。
第5号議案 2004年度事業計画及び収支予算に関する件
小倉次期会長候補者の議案説明の後、組織や予算に関する若干の質疑応答の後、拍手により採決、賛成多数で承認された。
第6号議案 終身正会員の件、 第7号議案 名誉会員の件、第8号議案 役員選任の件
一括審議が了承され、高野常務理事の議案説明の後、拍手により採決、賛成多数で承認された。
以上で総会の議事は終了した。準備された報告事項の、公益法人を巡る動きについてと、2011年UIA大会誘致活動報告は時間の都合で資料配布のみとし説明は省略された。その後終身正会員証の贈呈が執り行われ、2004年度通常総会は16時50分に終了した。
 最後に、2000年度より2期4年間、公益法人の指導監督基準に準拠するための定款改正にはじまりその執行の留保、CPDの試行から実施、登録建築家資格制度の試行、正会員の会員種別と会費種別の改定等、JIAにとって大切な時期に支部長、理事の大役を仰せつかり、誠心誠意その任を全うできましたのも、会員をはじめ役員、事務局の方々の温かいご支援とご協力の賜物と存じます。本稿を借りて厚く御礼申し上げて理事会レポートを終えます。
(2004/06/01)