理 事 会 レ ポ ー ト
CPDの会員資格要件とJIAの危惧                理事 森口 雅文

 第134回理事会は去る2月25日にJIA館で開催された。年度末を目前にこれまで2年あるいは4年間検討されてきた問題の結論の目途をつけるべく慎重かつ活発な議論が展開された。今回も審議事項11、協議事項2、報告事項4と盛りたくさんで、会議は延々4時間30分余にも及んだ。なお今回から次年度就任予定の一部の役員がオブザーバーとして同席された。

 今回も、議題が多いため報告事項はあとまわしにして審議事項からはじめられた。本稿も誌面に限りがあるので主要と思われるものだけを要約して報告します。

 まず審議事項から。
 グループ保険配当金一部積み立て(リスク対応)
の件は、総務委員会にかわり柳澤璋忠専務理事から提案理由の説明があった。昨年、JIA会員の所属する事務所からJIAが訴えられて4千万円の保険金の支払いを請求された。結果は和解が成立してJIAは和解金と弁護士費用約7百万円を昨年の同保険の配当金の一部を充当し支払った(ただし、残念ながら当日は訴訟に至った理由の説明はなかった)。今後このような事態に対応するため弁護士とも相談した結果、理事会判断で積み立てのできる配当金の2〜3%を積み立てたいとの提案となった。この保険はJIA団体定期保険(グループ保険)と称し、引受会社を三井生命保険相互会社、業務委託会社を褐囃z家会館としてJIAが事業として実施しているもので、JIAは契約当事者である。加入者はJIA会員および会員の所属する事務所の職員で加入員数は約2,500人を数える。事業収益ともいえる保険手数料は、JIAが当会館の入居に関して便宜をはかってもらっているとの理由で事務処理費としてすべて同会館に支払い、JIAの事業収入は0であるとの説明があった。積立金はJIAとして積み立てることになるのでその支出は理事会でチェックできるとの説明があり、大宇根弘司会長からあらためて今年から配当金の3%を積み立ててリスクに対応したいとの提案に、挙手により採決、賛成多数(賛成15)で承認された。筆者からは、加入者は必ずしもJIAの会員ではないので、本日の結果を加入員全員に書面にて報告することを要請した。今回の訴訟は、今後JIAが会費収入だけに頼らず収益を図るためにいろいろな事業を展開するときに必要な心構えと姿勢を教えてくれる貴重な出来事に思えた。
 JIA大会2005開催地の件(UIAトルコ大会の開催期間2005/07/01〜11を避けて)は、当日理事会に先立って開催された支部長会議で開催地として東北と東海の2支部が立候補し東海を選定した旨の報告を受けて、開催地を東海とする件が諮られ、挙手による採決の結果全員賛成で承認された。大会が開催される時期は、おりしも愛知万博の会期中である。東海支部会員のホスピタリティーに期待したい。
 委員会構成承認の件(2004年度委員会構成見直しの件)は設計者選定法推進会議の委員1名追加、と2011年UIA大会誘致活動委員会の委員5名の決定を挙手により採決全員賛成で承認した。なお、建築家資格制度推進委員会、会員及び会費種別等検討特別委員会、基本政策課題統括委員会、倫理規定・職能原則委員会の4委員会の取り扱う問題は、それぞれ今年度中にほぼ結論が出るのでその後は一つの委員会にまとめて活動を継続するとの説明があった。
 2004年度名誉会員推挙の件は、名誉会員選考委員会の2004年度名誉会員候補者選考結果を受けて次の方々の推挙を挙手により採決、賛成多数(賛成13)で承認した。支部推薦(以下敬省略)は、深瀬啓智、藤田順吉朗、釣谷利夫、石井修、以上4名。会長推薦の国内は、太田和夫、清家清、高橋一、横山公男、以上4名。海外はAIA、ASA、KIA、KIRAのそれぞれの前会長とUIA会長の5名、以上13名の方々でした。なお選考経過の中で出された選考付帯意見として、@称号を贈る場、A選考の考え方(年齢と作品)、B名誉会員の処遇(会費の納入)は今後検討することとした。
 新規入会者、退会者承認の件は、新規入会者46名、退会希望者41名を挙手により採決、全員賛成で承認した。この時期の退会者の数はほぼ例年どうりであるが、入会者の数は異例の状況で、登録建築家資格制度試行の影響のようにも思われるが、今後の推移を見守りたい。
 会員資格要件としてのCPDについては、昨年の12月に開催された第133回の理事会に実務委員会から協議事項として「2004年度の通常総会でCPDを会員資格要件から外す」との提案を受けた。以降、当日の理事会、その後のCPD評議会、実務委員会での議論の結果、本日の理事会に新たに服部範二CPD評議会委員長名の「CPDの位置付け及び単位算定基準に関する理事会提案書」が高野孝次郎常務理事から説明があった。
 提案書の主旨は、CPDは会員資格要件としてそのまま残すことにして、弾力的な運用を図ろうとするもので、具体的にはCPD制度による単位取得期限を2004年度発足の登録建築家資格制度の登録更新の期限にそろえて2006年度とするが、2006年度末に取得単位数が規定に満たないものは会員資格を喪失するとしている。
 この提案に対して
兼松紘一郎理事からは「CPDは会員義務として残すべきである」。
一方若松信行東北支部長からは「登録建築家の要件に限ったほうが明解である」との発言があった。
鮎川透九州支部長からは「再度支部に持ち帰って協議したい」との申し出があった。
ここで小倉善明実務委員長から「本日のCPD評議会からの提案は、実務委員会の見解と少し違っている。実務委員会としては会員資格要件としての存続は認めても単位不足を即会員資格喪失とせずにむしろ努力義務と考えたい。したがって再度両委員会で調整のうえ改めて提案書を支部に送付するのでそれに対する回答がほしい。そのうえで次回理事会に諮りたい」として本件は継続審議となった。
 会員および会費種別の改定については、河野進会員および会費種別等検討特別委員長から同委員会と企画運営会議との合同会議で会員アンケートの結果を踏まえてまとめられた最終答申案が上程された。定款は改定しないことを前提として、(1)会員種別は正会員は、@登録建築家会員 A未登録建築家会員 B専門会員 C引退建築家会員の4つのカテゴリーに分ける。(2)会費は一律36,000円、ただし引退建築家は18,000円/年、入会金は12,000円とする。(3)実施時期は2005年度会費からとするが、2004年度通常総会後の入会者は改定された会費および入会金を適応する。(4)会費収入の減少への対策は、会員増強を図る一方会費収入だけに頼らないで事業収入を考える。以上の提案を受けて、まず会員種別に関して多数の理事から「未登録建築家会員」と、「引退建築家」に関して疑義が出された。河野委員長からは「本来JIA会員は登録建築家と考えるべきであるが、定款を改定せず今の正会員を正会員として残すことを考えたため、経験年数が登録建築家の要件に満たない会員や、理由はわからないが登録建築家の申請をしない会員も正会員と考えたため曖昧な答申になっている。未登録建築家は若い会員を入会させるためにもぜひ設けておきたい。現役を退いた建築家(以下引退建築家)は現行規定では65歳以上で自主申告すれば認められているが、今後組織事務所を定年で退職した会員でなおJIA会員として活動する意志のある人を対象に考えた」との説明があった。以上の議論のうえ、会員種別を一部修正して、@登録建築家会員 A未登録建築家会員 B専門会員の3つのカテゴリーに分類する。引退建築家は名誉会員、終身会員の処遇と合わせて会費規定で対処すべく次回再提案するとの提案に、挙手による採決の結果、賛成多数(賛成15、反対3、保留2)で承認された。
 次に会費を一律36,000円に改定することが諮られた。
上村貞一郎東海支部長からは「36,000円案は今支部で検討していて直ちに決断できない」との発言に小倉副会長からは「若い会員の入会を促し、なんとしても2,000人増強する。危険な船出ではあるが積極策をとらないとJIAの将来はないと思っている。万一のシュミレーションもしてはいるがそれを前提に議論はできない」。
 大宇根会長からも「万一のことだけを考えていては執行できない。不足すれば支部、地域会で徴収してもらえばよい」との強い発言があった。
一方若松東北支部長からは「支部ではまだ何も検討していない」。
上村東海支部長からは再度、「支部会員に覚悟を要求している最中で、会員増強だけではとても無理で、まだまだ納得できる状態ではない」。
上田堯世四国支部長からは「そっとしておいてほしい、とても40人(現会員数)は増やせない。活動の仕方を考え直さねばならない」との悲痛な発言があった。
以上の議論のあと会費を原則一律36,000円、入会金を12,000円に改定することが挙手により採決の結果、賛成多数(賛成17、保留3)で承認された。次に改定時期について諮られ、提案どうりとするものが賛成多数(賛成17、保留3)で承認された。
 倫理規定改定案については、前回理事会で報告された改定案に対する理事会の意見を反映してさらに修正を加えたものが太田隆信倫理規定・職能原則委員長から説明があった。最初に岩村和夫理事から建築5団体で作成した「地球環境・建築憲章」はどのように反映されているのかとの質問に太田委員長からは、改訂案を作成する過程で「地球環境・建築憲章」を参考にすることはなかったが、これまで意見がなかったのが遺憾である。ぜひ具体的な提案をしてほしいとの回答があった。さらに委員会では、「建築家憲章」と「倫理規定」を2004年度の通常総会で承認を得るように活動しており、「ガイドライン」についてはそのあと継続して具体的に議論したいとの説明があった。主な議論は入札、ダンピング・談合、専兼問題、誇大宣伝等に集中したが、芦原太郎同委員からは「専兼問題」「法律違反」「ダンピング・談合」に関して倫理規定では玉虫色(曖昧)にしてあり、現状のある部分を容認できるようにしている。この3点に関してはガイドラインで明らかにする必要があるけれど、その前にJIAとしての方針をきちんとすることが必要である。との解説があった。また大宇根会長からは、職能原則の見直しは、分かりにくいものを分かりやすくすることにあった。資格問題が急展開して社会に対して「倫理問題」が大切になってきたので、支部、地域会で大いに議論して忌憚のない意見を出してほしい。最後に太田委員長から改訂案に関する意見を寄せてほしい旨の要請があり、その上で修正案を作成して次回の理事会に上程するとの説明があった。
 2003年度決算見通しおよび2004年度収支予算案策定方針の件は柳澤専務理事から次のような説明があった。まず2003年度決算は、2002年度の繰越赤字約170万円を補填して今のところ約20万円余の黒字決算の見通しがついた。また2004年度の収支予算案策定では、会費、入会金の改定を前提として一般会計では新規入会会員を1,000名見込んで策定する。大宇根会長からは万一会員増強がままならないときは特別寄付を募ることもいずれ考えなくてはならないとの発言があった。2004年度予算案策定方針に関して採決の結果、賛成多数で承認された。

 協議事項では、
 次回UIAPPC会議方針については和智信二郎UIAPPC委員から、「2005年にアコード全体がまとまるのでアコードの全面見直しをする。ついてはJIAとして積極的に参加して支援することが必要であり、また当然やるべきである」との説明に、理事会として支援の方針を承認した。
 2011年UIA大会誘致活動概要については、芦原太郎UIA大会誘致活動委員長から検討中の組織づくりの経過説明があった。まずオールJIA、さらにオールJAPANの態勢づくりの構想が披露された。二度(正確には三度)にわたる誘致失敗の経験を生かして、国別の折衝とは別に、「お願い」だけでなく文化交流を軸にした「文化営業」を実施する。

 報告事項では
 実務委員会報告(認定評議会結果、認定基準に関して)は、小倉実務委員長から次のような報告があった。2月19日に第1回本部認定評議会が開催され、支部認定評議会に申請のあった656名の内、支部審査の合格者606名を認定した。各支部認定評議会から本部認定評議会に申し送られた5項目のうち、実績評価があっても一級建築士の資格のない人を認定することは現行法規を無視することになるので本部評議会としては認定できないとの結論に達し、第8条2項認定に関しては実務委員会へ差し戻された。本部議会からは、支部が実質の審査を実施しているのであれば認定権限も支部に委譲して、保留の場合のみ本部評議会に付託することとし、そのための規約の検討を行うことを確認した。以上の報告に、いよいよJIAの登録建築家資格制度試行本格化の動きを強く感じた。 (2004/03/07)