登録建築家の現状報告
社会制度確立に向け、会員の理解と行動を求む
東海支部長・理事 上村貞一郎


東海支部での登録建築家の申請者84名
 2月3日、初めての東海支部の登録建築家評議会が開催され、登録建築家の認定作業が始まりました。これまでに84名の申請者があり、その内の81名については支部認定を受け、残り2名について本部評議会に審査を委ね、1名については申請内容確認のため次回評議会に回されることになったようです。
 この評議会では、議長はJIA会員としていますが、第三者性のある評議会として、報道関係者、弁護士、関係他団体の建築専門家を迎え、全5名で構成されています。評議会では社会に必要とされる建築家の基準とは何か、業務の内容範囲、登録建築家の目指す方向性などの基本的課題が提示され、この事項は本部評議会へ報告され明確化を諮る必要があろうかと思います。また倫理の問題においては、その担保として懲戒規定の確立が重要とされています。社会的活動、職能活動はその区分が曖昧であり、建築家の資質とどのような関係にあるかもう少し明確にすべきです。評議会から提言をいただき、本部評議会、関係委員会に伝えることとしました。2月中には本部評議会が開催され、認定された登録建築家には3月に認知証が交付されると同時に、インターネットを通じ社会に表示されます。

建築士法は基礎的素養にすぎない
 日本の建築設計監理資格は業務独占された形で国家資格として建築士制度があります。この建築士の資格要件は国際的にみても教育、実務訓練、試験内容、業務形態、業務内容とその責務、倫理について残念ながら不十分であり、市民に対する設計監理のサービスを行なうには問題を積載していることは現行の建築士も建築家も認めるところではないでしょうか。国土交通省でも「建築士は建築の基礎的な素養である」という見解です。また社会の建築設計監理者に向ける目も建築家の考える事項と大きな隔たりがあり、建築家としての強い意志を持ち続ける必要があります。
 資格制度が始動している今日、他の建築団体とくに日本建築士会連合会が行なっている専攻建築士の一級建築士とJIAの登録建築家は共通の部分があると認識し、毎月本部において建築士会と会合を重ねています。まだお互いの資格制度を説明しあう状況から、CPDの問題を含め資格制度の一本化には時間がかかりそうです。2002年11月、JIAと建築士会が調印した「新たな建築士資格制度創設に向けての2団体基本合意書」を理解した上で、前進することが望まれます。

ゆるやかに建築家の存在が浸透
 登録建築家制度は最終的には国家資格を目指すものではありますが、現状は社会法人団体の認定資格制度であります。しかし、最近ではこのような方式の認定資格は、社会に必要な認知された資格や職業として存在し、社会活動が認知されています。教育から実務訓練、認定考査がしっかり確立し、必要な継続教育が更新時には課せられ、若い学生にも人気の職業となっています。
 今テレビでは建築家が“匠”と称し、住宅の改装、新築などを娯楽番組として放映しています。違和感を感じる部分もありますが、一般的には多くの視聴者を魅了しているようです。その映像すべてを信じているわけでもないでしょうが、現在の住生活の不満、生活空間の物づくりのおもしろさに、人々は建築家に何かを求め期待を寄せているのでしょうか。
 建築家の日常業務は地味で目立たない事柄が多く、その内容はいかに経済性、機能性、合理性、施工性などに加え精神的豊かさを考慮し、矛盾を抱えながらも、日々追求し、日夜悶々としています。メディアの影響からか、一般の人々には建築家は華やかな仕事に見えるようですが、実際は地道な職業です。

108単位のCPD取得と実務訓練が必携
 さて、登録建築家には更新するまでの3年間に108単位のCPD取得が要件として伴います。社会へ向け信頼、認知、責任を果たすひとつの表明であり、その他の社会的活動とあわせた登録建築家の役割と考えています。
 もうひとつ今後の課題として実務訓練が挙げられます。すでに東京、大阪で実施され、東海支部においても建築家に対する実務訓練のシステムが今後必要となります。この点については、登録建築家に登録された会員の皆さまにご理解とご協力をお願いしています。また、どこの地域においても実務訓練がスムーズに受けられることを念頭に置いて、今後のシステムの在り方を考えていきます。

登録建築家を社会制度システムに
 ともあれこの制度の発足した今、登録建築家としての社会的活動と認定への道を探ることになり、まさしくこれから社会での真価が問われてきます。まずJIA会員の皆さまにこの制度へのご理解とともに、登録建築家としてこの1年余りの期間に活動への参加と、共に行動を起こしませんか。まだまだこの制度に異論、違和感をもっておられる会員の方もあろうかと思います。でも、これからの将来の社会制度システムとして、都市、街、生活空間づくりに重要な担い手である建築に必要なシステムの一端であろうかと考えます。ご賛同とご参加をお願いいたします。

キャプション
今後CPD取得は絶対条件となり得るのか?(『建設通信新聞』2004年2月13日より抜粋)