JIA建築家資格制度試行開始

その先のJIAの決断は
理事       
   森 口 雅 文

 年頭にあたり会員のみなさまのご多幸とご繁栄を心からご祈念申しあげますとともに、日頃のJIAの活動への多大なご協力とご支援に厚く御礼申しあげます。
 2003年5月の通常総会で承認されたJIA建築家資格制度の試行は約半年の準備期間を終えて、同年12月に「登録建築家」認定審査の受付をはじめました。2004年2月には待望のわが国初めての「登録建築家」が誕生します。申すまでもなく建築家職能の確立には先人先達の苦闘と苦難の長い歴史があり、その始動を1914年の全国建築士会の結成に遡るとすれば、90年を経てようやく日本にも「建築家」が誕生するという今年は歴史的な年と申せましょう。JIA17年の歴史でも画期的な時期を迎えることになります。
 JIA建築家資格制度は、今後「試行」、「社会的制度」、「法的制度」の3段階を目標どうりに実施する予定です。今回の試行はその第一段階で、それには次の前提があります。まず定款は改正しない、その対象はJIA正会員とJIA実務訓練生に限る、第三者を加えた認定機関をJIA内に設置するとして、一応2カ年を目途としています。仮にこの制度について日本建築士会連合会をはじめとする他団体との調整が整ったとしても試行はあくまでもJIA内のことです。第二段階に踏み出すにあたっては、自らのすすめる資格制度と職能団体としてのJIAの在り方を会員一人ひとりが考え自ら決断しなければなりません。
 資格制度は、その目的は国民や社会の利益を守るためにあり、結果として資格者が守られることになってもそのことが目的ではありません。またその認定は第三者によるものとし、資格は個人に付与されるものであり個人の職域(業態)とは関わりはありません。以上のことはこれまでのJIA建築家資格制度の議論の中で認知された事柄ですが、ここでJIAの正会員の資格についての結論を出さねばなりません。登録建築家であれば専兼の区別なく正会員として認めるのか、周辺領域の専門家をこれまでどうり正会員として認めるのか、この二点です。2000年の通常総会で決議して2001年の臨時総会でその執行を留保しているJIAの法人形態は、未だ国の法人制度改革の結論待ちのままですが、これと併せて定款改正に及ぶ大問題を抱えました。
 未来は何時も現在の延長線上にあるといわれています。はたしてどのような決断をするのか十分な議論が必要です。JIAはまさに正念場を迎えました。