理 事 会 レ ポ ー ト
2011年UIA大会・総会は東京へ誘致/「登録建築家」実績認定基準を軸に議論     理事 森口雅文

 2003年度臨時理事会・理事懇談会は、JIA大会2003滋賀の会期中の10月10日に大会会場の琵琶湖ホテルで開催された。臨時理事会では前回(第132回)理事会の継続審議事項が審議され、理事懇談会ではいよいよ発足する登録建築家資格制度の審査、認定、登録、更新に関して集中協議された。

 はじめに、JIA大会2003滋賀 林昭男実行委員長と、水原修滋賀地域会会長の歓迎のあいさつがあった。なかでも林実行委員長からは、今朝本大会開催にあたり建築家資格制度に関して記者発表したが、同制度に反応がなかったことや、建築家やJIAに関してもその認識の低さに情けない思いをした。これは私たちへの叱咤と受けとめるべきであるとの挨拶に、理事一同あらためてJIAが置かれている厳しい現実を思い知らされた。
 次いで大宇根弘司会長からは、今年からJIA大会の開催方式を変更して、本部大会は隔年に開催し、その間の年はどこかの支部で開催される支部大会に本部大会の行事をあわせて支部で開催することとした。今回はその方式のはじめての大会で近畿支部の滋賀大会に急遽併催をお願いして大変お世話をかけた旨の挨拶のあと、議長代行に橋本修英副会長を、議事録署名人に松原忠策理事、岩村和夫理事を指名して議事に入った。

 臨時理事会の審議事項の2011年UIA東京誘致は岩村国際委員会委員長から「2011年UIA大会の東京誘致について」と「2011年UIA総会・大会東京誘致実行委員会設置に関する覚書(案)」の説明があった。第131回(前々回)理事会では、イスタンブールで開催されたUIA理事会において2011年UIA総会・大会を日本に誘致することを条件付で意志表示をしたことは報告済みであるが、今回は誘致都市を東京として提案したい。開催候補地を東京にした理由として、「これまでの大会誘致の経緯や参加者の要望・規模からみて、誘致都市の認知度、建築的・文化的魅力、交通の便、会議場施設(4カ国同時通訳設備を備え5,000人収容可能)、宿泊施設の充実が極めて重要である。またJIAのみならず国や自治体をはじめ学協会や大学など関連他団体の協力が不可欠である。したがって日本における誘致都市としては東京がもっともふさわしく、また同時に情報・交通ネットワークを駆使して、主要地方都市と連携した大会運営をめざしたい」以上の説明を受けて、各理事の意見が求められた。出江寛近畿支部長からは「前回の理事会において京都開催を提案した。東京の方が開催しやすいという意見も理解できるが、京都開催を主張する会員もいる。東京の方がPR効果はあるが、外国から来る人のことを考えると京都が良いと思う。東京で開催して京都に来てもらうという方法もある。UIA大会の目的が何なのかによるのではないか」。松原関東甲信越支部長は、「岩村委員長はUIA中心の考え方であるが、日本の建築界、日本の市民のかかわる5,000人の大会を、日本の国としてどう取り組むのか、考えねばならない。京都へも行けばよいがやはり日本を代表する都市として東京を推薦する」。岩村委員長からは再度、「加盟100カ国から5,000〜10,000人が集まるこの総会・大会は大変なエネルギーとお金がかかる。この負担を誰が負うのか。魅力のある開催地を選び、来てもらう工夫もさることながら、会議がスムーズに運営されることも大事である」と強調された。上村貞一郎東海支部長は、「2011年UIA大会は東海支部は立候補しない。これまでに東海支部でも大会を誘致しようとしたこともあるのでどこでも開催できると考える。できれば京都がよいのではないかと思うが、総合的に考えると東京開催が妥当である」。下村憲一北海道支部長は、「東京でよい。東京を拠点として全国展開する岩村案でよい」。鮎川透九州支部長も東京拠点で分散ネットワーク型の開催。国場幸房沖縄支部長は東京開催。兼松紘一郎理事は京都。筆者からは「日本は小さい国、開催地を日本と捉え全国で展開するのがよいが、会議の主会場は東京でよい。これまでの誘致の経験からいえば会議を成功させることが大事でそのために今後どのようにして全国のJIA会員の支援を引き出せるかが問題である」。竹内壽一理事は「東京一極集中は避けるべきと思うが、他団体の協力や都市の集積など現実のことを考えるとやはり東京か」。国広ジョージ理事は「日本は小さい国、日本大会という認識にたって日本全体で開催し、会議は東京と考えてはどうか」。松原関東甲信越支部長からは再度、「JIAとして日本でやることの認識が大事である」。僊石友秋中国支部長からは「東京でよいが、京都など文化面の紹介を怠らないように」。若松信行東北支部長は「日本のホスピタリティーは京都だと思う」。河野進副会長からは「前回は東京、名古屋、沖縄、長野の4候補地で検討したが、UIA大会は日本で開催することを認識し、全国に散らばっているJIA会員が自分たちの問題としてとりあげることが肝要である」。井上守理事は、「東京開催のメリットを生かしながら京都でも開催する」。大宇根会長からは「今後どのように具体化していくかが問題である」。小倉善明副会長からは「ネット開催がうまくやれるのか望ましい。やはり東京が中心になって立ち上がらないとやれないのではないか」。水野一郎北陸支部長は、「今のJIAの現状を考えると東京かと思う」。瓜生雅勝理事は「交通のことを考えるとやはり東京か」。再び出江近畿支部長から、「8年先はどうなっているかわからないが、移動に少し時間とお金がかかっても地方開催がよい。東京一極ではJIAの活動が分かってもらえない」と分散開催の提案があった。岩村委員長からは「大会と総会はそれぞれ3日間と2日間の総計5日間で、過去にも大会と総会を分けた分散開催も経験しているが、運営上不便であった」との説明があった。以上で意見聴取を終え、開催地を東京とする案が諮られ、挙手による採決の結果、賛成22名、反対1名で可決された。

 つづいて2011年UIA総会、大会東京誘致実行委員会設置に関する覚書(案)が審議された。実行委員会の設置とその期間の自2003年11月1日、至2005年7月末日(イスタンブール大会終了まで)には理事会として異存はなかったが、実行委員会の構成にはJIA各支部の支援態勢がとれる人選をすべきこと。またその業務内容も再度検討するように注文がついた。最後に岩村委員長から、今後大会のコンセプトをきちんとまとめる旨の説明があったが、若松東北支部長からUIA大会を誘致するJIAとしてのはっきりとした理由と目標が必要で、JIA会員の納得できる開催にしたいと念が押された。その後実行委員会の発足が諮られ、挙手により採決の結果、全員一致で承認された。

 次に静岡地域会登録建築家の移行措置に関しては、柳澤璋忠専務理事から前回理事会では近畿支部の登録建築家の移行措置に関してはポートフォリオがコンピューター入力を含めてすでに作成済みであることを考慮して、審査料の免除が承認されているが、静岡地域会の登録建築家に関して上村東海支部長から申し出があった審査料免除または減額措置について確認をしたい。ただ静岡の場合は、ポートフォリオは作成されているが電子情報化されていないので、その費用は負担させてはどうかとの提案があった。松原関東甲信越支部長からは、まず作成済みのポートフォリオがどんなものであるのかその内容を確認する必要があることと、これから試行する制度のポートフォリオでは、UIA基準の700単位の実務訓練に相当する実績を評価できるように近畿も含めて対応してほしいとの要望が出された。橋本副会長からは、ポートフォリオは近畿、静岡とも内容は同じであり、両方とも実務訓練に相当する実績を記載するようになっていないので追加しなければならない。今回の措置は移行措置というより一部の作業がはぶけるという認識である。河野副会長からは認定基準がまだきちんとしていない状態であり、原則として新たに認定することとしたい。大宇根会長は、近畿の登録建築家資格制度の特別残余金は本部の登録建築家資格制度の会計へ移すから審査料を免除するとのことであったが、静岡の場合はどうなのかが質された(筆者註:静岡は同制度の残余金はない)。柳澤専務理事から、本部実務委員会からは、近畿、静岡のポートフォリオは新しいものと同等であるとの説明を受けているが、実績に関してはなかったのでその部分は新たに審査しなければならないが、その審査料はどうなるのか。大宇根会長の「実績の確認の方法はまだ決まっていない」との発言に、高野常務理事から、次に予定している建築家資格制度に関しての協議を済ませた後に再議してはとの提案が了解され、理事懇談会に移った。

 理事懇談会の協議事項ではまず建築家資格制度に関して協議された。資料として本部実務委員会で作成中の「社団法人日本建築家協会建築家資格制度による登録建築家認定受付のお知らせ」(案)と「建築家資格制度による登録建築家総合案内書」(案)(認定、審査登録案内資料一覧)が橋本副会長から説明された。「お知らせ」の方は@建築家資格制度とは(趣旨) A登録建築家認定に向けての手続。一方「総合案内書」は@建築家資格制度の試行開始にあたって、A登録申請の流れ/フローチャート及び総合ガイダンス B建築家資格制度規則 C建築家資格制度に関する細則 D本部・支部認定評議会 E登録建築家制度に関するQ&A F各申請書の記入例/登録建築家認定申請書、ポートフォリオ、実務経験報告書、誓約書、「登録建築家」登録申請書。以上の内容であった。その後理事会に意見が求められた。主たる意見は、まずUIA基準との教育年限の差と、700時間の実務訓練の内容を担保する実績(経験)をどのように検証するのか、提示されたポートフォリオ作成要領と実務経験報告書(認定申請用)の案では不十分ではないかとの指摘があったのと、誓約書の内容で“UIA基準に定める倫理綱領に従い”とあるが、この綱領の内容がJIAとしては精査されていないので、むしろ、試行の段階ではJIAの倫理規定による誓約にしてはどうかとの提案があった。柳澤専務からは誓約するUIAの倫理綱領にはそのガイドラインを含むとの本部実務委員会の見解が述べられたが、このままではJIAの一般会員にとっては誓約のしようがないように思われた。以上協議の結果、細部は本部実務委員会に一任することが諮られ賛成多数で承認された。また審議事項で一時審議を中断した静岡地域会登録建築家の移行措置も本部実務委員会に一任して結果を理事会に報告することが諮られ賛成多数で承認された。

 会員・会費種別の見直しについては時間切れとなり高野常務理事の提案で引き続いて開催される理事・地域会会長合同の第12回全国地域会会長会議で協議することとなり、臨時理事会・理事懇談会は終了した。
 なお参考までに第12回全国地域会会長会議での会員・会費種の見直しに関する河野副会長の説明を報告します。
 会員種別・会費種別等検討特別委員会では、これまでの検討で会員種別も会費種別も一本化して、年会費60,000円と36,000円の2案をまとめた。前者は予算規模270百万円で会員数5,000人と想定した案で、会員数の減が懸念され、後者は主宰者、協同者が一人づつ会員を誘致することを前提にした案で、会費収入の激減が懸念されるので、最悪の場合つまり会員が増えなかった場合にJIAの活動がどうなるのかを検討中である。次にこれまでは会員・会費種の見直しに関しては、定款を改正しないことを前提としてきたが、定款を改正してJIAの正会員を登録建築家に限定するか、これまで通り登録建築家以外の周辺領域の人(構造・設備・インテリア・ランドスケープなどの専門家)を含めた団体にするかの検討をはじめた。いずれにしてもこの問題は、試行間近の建築家資格制度とは切り離すことはできないことを確認した。
 以上の説明に全国地域会会長会議からは、会員増強を呼びかけている手前、会員、会費種別の結論と、登録建築家の認定方法の説明を早急に発表することが強く要請された。(2003.10.19)