理 事 会 レ ポ ー ト

今秋審査開始に向け 建築家資格制度試行の施策急進展      理事 森口 雅文

第131回理事会は去る7月23日にJIA館で開催された。2003年度通常総会後初の理事会で、今秋審査開始予定の建築家資格制度試行に向けての具体策が審議された。今年度は議長代行に橋本修英副会長が選任され、議事が進められることになった。

 今回は多くの審議事項があり、報告事項は資料の配布と審議終了後の若干の補足説明のみとし、審議事項を優先して討議した。
1 新規入会者、休会者、資格喪失者承認および退会者報告の件は、高野孝次郎常務理事より新規入会者20人、休会希望者3人、退会希望者32人、資格喪失候補者218名の説明があり、新規入会者、休会者の承認と、資格喪失候補者への喪失の手続着手の承認が要請され、挙手により採決承認された。資格喪失候補者は、2003年7月22日現在、3カ年以上の会費滞納者を該当者し、喪失手続の着手とはまずそのことを本人に通知することを始めるとのことで、会費納入督促について本部と支部との連携体制が求められた。東海支部の該当者は15人(静岡3人、愛知10人、岐阜2人)であった。仮に候補者全員が資格喪失した場合、JIAの会員数は4,650〜4,670人が見込まれるとのことであった。国広ジョージ理事からは、現在の新人賞応募の要件では、JIA入会を義務づけているが、過去の新人賞受賞者でまだJIAに入会していない人には強く入会を勧めるよう要請があった。井上守理事(総務委員会委員長)からは、各支部や地域会の顔の見えるところで会費納入の督促を勧めてほしい。またその折には念のためこれから進めるJIA建築家資格制度(登録建築家)とグループ保険、建築家賠償責任保険(けんばい)すべてがJIA会員が要件であることを説明するようにとの注意があった。

2 JIA外部アドバイザー制度規程およびアドバイザーの件は、前回理事会からの継続審議事項で、大倉善明副会長から修正された外部アドバイザー規程(案)と2003年度の外部アドバイザー候補者5名の説明があり挙手により採決、承認された。規程(案)に関しては外部アドバイザーの選任分野は「建築以外の分野」から選任することとし、分野を限定しないように修正された。任期に関しては1期2年とし、重任は考えていない。またアドバイスは特定の事柄について意見をうかがうことを原則としているとの説明があった。
承認されたアドバイザー(以下敬称略 ( )内所属・役職―選任分野)は、
        横山禎徳(独立行政法人経済産業研究所 上席研究員―学識経験者)
        井尻千男(拓殖大学 日本文化研究所 所長―学識経験者)
        馬場璋造(褐囃z情報システム研究所―マスコミ関係)
        加藤貞雄(茨城県近代美術館 館長―芸術)
        高木佳子(森・濱田・松本法律事務所―法曹界)
以上5名で、2003年9月に着任を予定している。

3 建築家資格制度試行に関しては、
@本部・支部実務委員会構成は、高野常務理事より説明があり、関東甲信越支部の実務委員1名および沖縄支部の実務委員長および委員が未定で、承認は9月の理事会になるが、すでに委員会構成が決定している本部と9支部の実務委員会の委員長と委員が諮られ全員一致で承認された。東海支部は谷村茂委員長、関戸敏訓委員(静岡)、植野收委員(愛知)、車戸慎夫委員(岐阜)、高橋徹委員(三重)の5名である。

A建築家資格制度に関する細則(案)は、2003年度通常総会で承認された建築家資格制度規則に基づき建築家資格制度の運営に必要な事項を定めたもので、大澤秀雄建築家資格制度委員WG−2主査から説明があった。
細則(案)は11カ条からなり、その内容は登録建築家認定基準、登録の更新に必要な継続教育、諸費用(資格審査、登録ならびに更新等に関わる手数料)、資格の管理である。
審議の中心は「登録の更新ならびに再登録に必要な継続教育必須履修分野」と「特例による認定」であった。まず、登録の更新ならびに再登録に必要な継続教育の必須分野については、UIA規準に沿って設けたとの説明に異論を唱える人はいなかったが、その分野を唐突に「健康と安全および公共の福祉」と限定した提案に対しては、CPDそのものが未整理の状態であり、ここで決めてしまうのはいかがなものかとする松原忠策関東甲信越支部長の意見に代表される反応が大勢であった。
次に登録建築家認定基準は「実務訓練による認定基準」も「実績評価による認定基準」いずれも一級建築士の資格を取得したものと規定しているが、「特例による認定」では認定評議会が登録建築家にふさわしい資質、能力、倫理性を有すると判断した者に対して、一級建築士の資格がなくても登録建築家の認定ができるとするもので、JIAの正会員の取り扱いと同じである。現在JIA正会員4,700人の中で一級建築士の資格のない人は約230人(4.8%)を数えている。まずこの点つまり特例を認めるかどうかを当日理事会出席者全員に意見が求められた。
主な発言は次の通りであった。
 出江寛近畿支部長「救済措置として期間を限定し、将来は一級建築士の資格を取得したものに限定すればよい」
 筆者「特例は認める。ただし、認定する際の評議会意見を公表することを条件とする」。
 上村貞一郎東海支部長「特例を設けることに反対ではないが、社会性が得られるかどうか、あとあと困るのではないか。このことを考えると特例はない方がよい」。
 兼松紘一郎理事「教育者に一級建築士はむずかしいのではないか。公表する方式で特例を認めてはどうか」
 松原忠策関東甲信越支部長「特例は必要、もっと詳しく規定するか公表方式がよいのではないか」
 古谷誠章副会長「がんじがらめでない方がよい。特例があってよいが、特例による認定の仕方や手法を規定しておけばよい」
 河野進副会長「建築士制度には業務独占の縛りがある上に士法制度に不備がある以上、特例は残すべきである」
 大宇根弘司会長「「資格」とは一定のレベルを表したもので、建築家資格もきちんとしたものが必要で、一級建築士の資格は取得したほうがよい」
 橋本副会長は、「一般の人にわかりにくいことになるので、一級建築士に限定したほうがよい」
 坪井善道監事からは、「JIAの会員は建築家ではなかったのか」
どの意見が出され、橋本議長代行からは2/3と発表されたが、筆者のカウントによれは3/4(24人中18人)が条件付で特例を認め、1/4(6人)が特例を認めないとする意見であった。
途中認定基準を受験資格と審査基準にわけたほうがよいのではないか。また移行措置からのスタートでなく、本来の建築家資格制度を打ち出すべきではないかという意見が出て、一時審議が中断したが、橋本議長代行から細則(案)に関する支部の意見を8月6日までにいただき、本日の議論を踏まえて細則を作り直して9月の理事会までに書面表決をしてでも議決したいとの発言で本件は継続審議となった。なお大澤建築家資格制度委員WG−2主査からは、仮に特例を認めるにしても、規則には特例による認定の規定はないので、第3条実績評価による認定の2にすべきであるとの提言があった。

B本部評議会候補者(案)は現在検討中の本部評議会の候補者(案)が説明された。以下いずれも(敬称略)、委員長は鬼頭梓(JIA)で、委員は大宅映子(評論家)、長谷川義明(前新潟市長、元JIA会員)、進土五十八(東京農業大学学長、日本都市計画学会長)、大森文彦(大森法律事務所、弁護士)、五十嵐敬喜(弁護士)の中から4人と(社)日本建築学会と(社)日本建築士会連合会から1人づつの予定で現在打診中との報告があった。

Cシステム関連
(a)コンサルタント及び業者選定については、CPD、建築家資格制度の情報システム関連についてコンサルタントはエヌケーエクサ金融システム事業部の熊澤壽人氏に特命で依頼することが諮られ承認された。またシステムを開発する委託先については、7社に提案書の提出を要請、6社から提案を徴集、建築家資格制度とCPDの内訳付見積書を徴集したところ、総額は6,715千円〜42,182千円と多岐に広がり、コスト面から低コストであった3社にヒアリングを実施した。結果、資格制度システムは叶}羅(とら)、CPDシステムは劾TT総合研究所とし、今後仕様、費用について折衝したい旨の提案があったが、西部明郎理事から「資格制度とCPDのシステムは共通の方がよい。また劾TT総合研究所でもよいがもっと安くなる方法を折衝してみては」との意見により、西部理事にもシステム部会に参画してもらって劾TT総合研究所と叶}羅とで至急検討することが承認された。
(b)JIA−士会のCPDシステムについては、CPD評議会システム部会が作成した両会のCPD管理システムの比較(機関誌『建築家』8月号P26に掲載)の説明と両会のCPDシステムの詳しい考察の結果の説明があり、現時点では、JIAのCPD記録管理システムを建築士会のバーコード手帳システムに合致させることには問題が多いことを確認したので、過去のシステムには固執せず現状にあった新規のシステムを提案することを諮り承認された。結果としては両会のCPDが、士会は任意であり、一方JIAは会員要件であることの根本的な違いがこのような結果となった大きな原因のようである。
(C)CPDと資格のシステムの関連では、CPDおよび資格制度情報システムのハード/ソフトの共同化については、共同化レベルWで理事会は承認した。

D近畿支部登録建築家および静岡建築家資格制度の移行措置については、まず出江近畿支部長から近畿支部登録建築家については、すでにポートフォリオは完成しているので、審査手数料は免除し、登録料、再登録料、更新手数料は、細則(案)通りではどうか。また静岡建築家資格制度に関しては柳澤璋忠専務理事からまったく新しい形で参加するとの大石郁子静岡地域会会長の意向が伝えられた。特段の異議はなかったが、次回理事会で最終承認を得ることとなった。

4 委員会、部会構成については、総務委員会、業務委員会、建築相談委員会、名誉会員選考委員会の一部の委員が交替することが審議され、挙手により採決承認された。また同時に選挙管理委員会の委員長と委員の報告を受けた。

5 5会共同提言について
@「良い建築と環境をつくる7つの提言」については、(社)日本建築学会からの賛同依頼に対して特別異議はなく承認された。A「公共建築の設計者選定方法の改善についての提言」は5会会長会議で(社)日本建築学会が中心にまとめられたもので、大宇根会長から、公共建築の設計者選定に関して設計入札を阻止する理由は、提言にある建築の創造性を損ねるだけの理由ではないので、若干意見を付け加えたい旨の説明があり、意見のある人は8月5日までに申し出るよう要請があった。あとは会長に一任することが承認された。

6 Celebration of Citiesについては、古谷副会長からUIA主催による「都市礼讃」アイデアコンペ概要(案)が説明された。このコンペは前回の理事会で岩村和夫理事(国際委員会委員長)からすでに報告があったもので、テーマは都市礼讃(Celebration of Cities)とした国際アイデアコンペで、各UIA加盟各国の建築家と建築学生の2部門で募集し、国内では地方、全国と2段階で審査し、その上で国際審査を実施する。このコンペの特長は国内審査入賞作品(国際審査出品作品)の内、最低一つは建築工事の実施が条件となっている。学生コンペに関してはすでに(社)日本建築学会とJIAの共催が打診済みであるとのこと。建築家部門のコンペの実施にあたり、そのルールづくりおよびタスクフォースの承認が求められ、挙手により採決承認された。タスクフォースは主査古谷誠章(JIA副会長)、芦原太郎(芦原太郎建築事務)、赤堀忍(芝浦工業大学)、杉山隆之(三菱地所設計)の4名である。なお優れたプロジェクトを発掘するよう、支部、地域会の協力が要請された。
7 ユネスコUIAリージョンW会議誘致の件は、UIAリージョンW教育協議会UIA RegionWvalidation Councilは来る10月17〜19日に、開催され、そのホスト役をJIAが務める。古谷副会長から「建築教育の国際認定」に関する講演会とカウンシルの開催及びJIA国際交流基金助成金支出による総額1,000 千円の予算が説明され審議の結果承認された。

 報告事項は、UIAイスタンブール理事会報告では岩村理事(国際委員会委員長)からJIAは2011年UIA大会に東京が再度立候補する方向で検討を開始した旨を表明した。ただしその前提としてベルリン大会のときに、JIAが提唱した開催地決定プロセスの改善を求めるとともにリージョンWで合意形成することを挙げたとの報告があった。その他JIA大会2003滋賀について兼松理事から豊郷小学校保存のコンペ開催はどうなったかとの質問に、出江近畿支部長から実施について検討したが諸般の事情から滋賀大会をまず実行することを先決とし、林昭男大会実行委員長、水野滋賀地域会会長との協議の結果、コンペを実施しない方針で決定されたとの報告があった。
以上理事会の所要時間は3.5時間であった。 (2003.7.27)